第277話 グローリーの披露宴1
グローリーの披露宴1
ギルマスの部屋で、私がミレーヌさんにネクロノミコンを手渡している丁度その最中、ギルドの受付カウンターに一人の身綺麗な男装の麗人が、依頼をしていた。
グローリー王国第二近衛兵団副団長、シルフィー・ブルバー子爵令嬢だ。
一人娘である彼女は、剣豪として家を支えて来た父の名を受け継ぐべくして女だてらに剣技を究めたのだが、それは又別のお話。
彼女は、学園時代の同級生で親友である第三王女の差し金でこのギルドへとやって来ていた。
第三王女デイジーは、この度結婚した第四王女のセレナより、エリーの不思議な魔道具とその魔道具の作り出す料理の美味しさを、仲の良かった妹セレナより毎日のように届く手紙によって知って居たのだ。
そしてそのエリーが、披露宴に呼ばれた為にこの王都へとやって来ると踏んで、料理依頼を出す為に、旧知の近衛兵で同級生のシルフィーに頼んで居た訳である。
依頼を受諾したイプシロンは、早急に丁度ギルドマスターの所に居るエリーへと依頼を持ち込む。
「失礼します、たった今エリー様への指名依頼が入りました。」
「え~、すっごく嫌な予感がするんだけど?」
「それが、依頼主が問題でして・・・」
「誰よ、そんな問題になるような依頼主って。」
「第三皇女殿下でニスモ侯爵の奥方様のデイジー様です。」
「断って良い?」
「えぇっ!何でですか!?」
「めんどくさそうだから。」
「そんなぁ、内容だけでも聞いて下さいよ。」
「えー、却下。」
「実は妹君のセレナ様の披露宴で出す料理の全てを作って欲しいと言う依頼なんです。」
「却下っつったよね、私!」
「だから言いました、聞いて貰わない事には私の都合が悪いので。」
「はぁ、あんた言うようになったわね。
でも、その依頼は却下よ。」
「どうしてですかぁ~?」
「それはね、此処までこの国の国王を送って来る間に、国王自身から同じ依頼を受けて居るからです。」
「は???」
「なによ。」
「送って??ですか??」
「そうよ? セドリック領の方で教会式を済ませたのは知ってるでしょう?
それで出席してた王様とお友達になった訳、ンで、送って来たのだけど何か問題でも??」
「え、だってその仕切って昨日の夕刻だったって聞いてるんですけど?」
「そうよ、私も出席してたし、王様も居たもの。」
「何で今ここに居るんです?未だ昨日の夕方やったばかりの結婚式に出席してたエリーさんが翌朝の今ここに居るんです?」
「あんたね、今頃そこに行き着いたの? その式の後に立ち寄ったギルドでデルタを改造したのよ? それを同一思考で受け取って知ってた筈のあんたが今更なの??」
「あ、言われてみれば・・・」
やっぱサリ―シリーズって基本ポンコツ揃いなんじゃないの?
「ほらー、今更でしょう?」
「あ、でもどうやってこんな早くこっちに居るんですか?」
「そんなの決まってるでしょう? 飛んで来たのよ?」
「え? 飛んで?」
「そ、飛空艇で空から来たの。」
「え? ええ?? えええ~~???!!」
「そこまで驚かなくて良いんじゃない? ホムンクルスの貴女を貴女自身に気付かれずに改良出来る私を、いったい誰だと思ってるの?」
「ええ? でも、空ですよ?」
「驚くほど? 何ならあんた、もう好きに外に出られるんだから飛空艇乗せてあげても良いけど。」
「乗りたい気持ちも無くは無いですけど、外に出られるようになったばかりでいきなり高い所って言うのも想像が追い付かないので止めて置きます。」
「で、雑談は良いけど、依頼はキャンセル扱いで良いわよね、私は王様にお友達枠としてお願いされたお仕事をこなしに行くだけなので、勝手に他から依頼として利益を受ける訳にはいかないでしょう?」
「判りました、そう言う事でしたら、今外のカウンターに依頼に来た方が居るのでその旨お伝えして来ます。」
「ん、お願いね。」
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そんなやり取りが済んで、王城の厨房へとやって来ました。
私と対峙するのは宮廷料理人一同。
「お前のような小娘なんぞに料理の何が判ると?」
「あらぁ? 少なくとも私は貴方のような小僧の数十倍は生きてるわよ? なんならお姉さんがおやつ作ってあげるから食べながら見てれば良いわよ?」
「ふん、ならば勝負だ、どっちが美味い物を作れるかはっきりさせてやる。」
「フフフ、墓穴を掘ったわね、それじゃあ貴方が勝ったら私は大人しく引き下がるわよ。」
「ふん、ならお前が万一勝ったら俺は宮廷料理人を辞めてやる。」
「あ、それは無しね、だって宮廷料理人の料理長が辞めちゃったら王宮で料理を出す事が困難になっちゃうでしょうが、それは却下。
そんな事よりも私が勝ったら一つだけ、言う事を聞いて欲しいかな。」
「ふん、良いだろう、言って見ろ。」
「電脳化をする事を同意して欲しいだけよ、電脳には私のレシピをアップロードしてあげるわよ。」
「なんだそれは、何だか判らんが良いだろう。」
こうしてお料理対決が始まるのだった。
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