第267話 番外編20・幸福な王女

      番外編20・幸福な王女

 -セレナ-

 ついに、この人と結ばれるのですわ、とうとう念願が叶いましたの。

 学園で、同級生として知り合った時から、私はこの人に惹かれて居ました。

 何故なら、この人は、不思議な強運の持ち主。

 それは不思議な出会いでした。

 入学式の事でした。

 ---回想---

「お前がこの国の第四王女か、中々に見目麗しいでは無いか、決めたぞ、お前我の妻と成れ。」

 何を言って居るのでしょう、この方は・・・

 正直に言って、何を言って居るのかまるで脈略も無く唐突でしたので、理解が及びませんでした。

 あっけに取られて居ると、その方は、私の腕を掴み、事もあろうか引っ張ったのです。

「おい、女、聞いておるのか!

 我の妻と成れるのだ、喜べと言って居るのだぞ!」

 腕は急に引っ張られて痛いし、訳が分からなくて悲しくなり、思わず涙が出ました。

 何故私がこのような仕打ちを受けねば成らないのでしょうか。

 そんな時でした。

「これはこれは、北の大国、アルファード帝国が第二王子、ブライト様では御座いませんでしょうか、お初にお目に掛かります、私はグローリー王国のレパード・シーマ辺境伯が嫡男で、セドリックと申します。」

「貴様そこを退け、男なんぞに興味は無い、我は忙しいのだ。」

「いえ、そうは参りません、恐れながら其方の方は我が国の第四王女殿下であらせられるセレナ様。

 王国の剣とも謳われた事のある父の名に傷を漬けぬ為にもわたくしめにはそのお方をお守りせねば成らない大義が御座います。

 セレナ様の痛がるお声を耳にしてしまった以上、この場を退く訳には行かなくなってしまったのですよ。」

「ほう、我をブライト・ノア・アルファードと知っての狼藉と言う訳だな?

 ではそこに直るが良い、今ここで手討ちに致してやろう。」

「それは手厳しいですな、しかしここ、学園内では平民でも我々貴族と同等に扱われる事になって居りますれば、どうぞご容赦願いたく存仕上げる次第なのですが?」

 彼はそう言い放つと、とても鋭い眼光でアルファードの第二王子を睨み返したのです。

 これはこの人が危ないとわたくしは思いました、しかしその時。

「ブライト、辞めぬか、一代で北の大地を開拓し皇国を築いた豪傑王と謳われる父の名を汚す気なのか?

 ああ、君達、どうかこの愚弟を許してくれまいか、このラインハルト・ハリアー・アルファードに免じて、どうか。」

 この方は・・・生徒会長でらっしゃる、北の広大な山と大地を切り開いてたった一代で国と成したと名高い豪傑王、ヴェルファイア・グランエース・アルファード王の嫡男、第一王子アルフレッド様では有りませんか。

 確か、御入学の為にこの学園へと移動中の折、キマイラに襲われる一団を見つけ、そのキマイラを単独討伐されたと噂の英雄王子様です。

「兄上! 余計な手出しは不要です!」

「何を言うのか、お前は。

 私には剣を揮うしか能が無いが、国政を任せられる知恵を持つお前こそが次代の皇帝にふさわしいと思って居るのに、こんな所でその経歴に傷を付けるような事を自分でするでは無いよ。

 良いかい、私はこの学園を出たら冒険者になって旅に出るつもりなのだ。だからこそお前には期待して居るんだからな、よろしく頼むよ。」

 事実、この方は翌年、学園を卒業すると同時に冒険者と成り、この方の父君すら使い熟せなかったと言う聖剣エスクワイヤを使い熟して単独でワイバーンを討伐して名をあげる事に成るのですが。

「フン・・・兄上がそう言うのでしたら、仕方ありません。

 おい貴様ら、命拾いしたな、兄上に感謝するが良いぞ。」

 ブライト様は捨て台詞を吐いて去って行きました。

「ラインハルト様、有難う御座いました。」

 この時の、セドリック様の笑顔にきゅんと来てしまいました。

 私を護る為にブライト様を睨みつけるお姿にも大変好感と感銘を受けました。

 どうしましょう、私、この方を好きになってしまったかもしれませんわ・・・

「何を何を、君、中々の剣豪だね、うちの愚弟では逆立ちしても君には敵うまいよ。

 どうだい?今度手合わせしては貰えないか?」

「私程度で宜しければ、今すぐにでもお手合せ頂きたい程ですよ、英雄王子殿。」

 この御二方の間に、友情が芽生えた瞬間の様です、と言うか、セドリック様総受けでちょっと危ない関係を想像してしまいました・・・ポっ。

 隣国の王子様御兄弟と三角関係の総受けセドリック様・・・ドキドキ

 萌えますわっ!

 はっ・・・いけません、変な事を想像してしまいました。

 ですがわたくし、輿入れ出来るのであれば、こんな方の所に嫁ぎたいと、はじめて思ってしまったの。

 とても勇敢で、とてもお優しく、そして笑顔がとても可愛らしかった・・・ああ、セドリック様・・・

 その後、学園生活の三年間はとても幸せでしたわ、だって、セドリック様は私と三年間ずっと同じ教室だったのですもの。

 ----

 ついに、こんな日が来たのですね、とても嬉しいわ。

 私は、幸せです、お父様、私の我儘を押し通して下さり、大変感謝して居ります。

 こんなに大好きな方と結婚出来るなんて、夢にも思ってませんでしたわ。

 それにしても、セドリック様の運の良さには驚かされるばかりですわ。

 聖女が現れてローポーションなる不思議な薬を手に入れたり、大賢者様に出会ってあのような不思議な乗り物を賜って戦争を人的損耗ゼロで終わらせてしまったりとか・・・

 途轍もない功績も上げてしまったのですから、それは父の目にも入ると言うものでしょう。

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