第262話 シーマからの招待状

        シーマからの招待状

 -本体-

「天女様! 客人で御座いやす!

 なんでも天女様にお会いする為に船に乗って旅をして来たとか。」

 何だそりゃ、面倒事の臭いしかしねぇんだけど?

 しかし、一応顔を出さない訳には行かないだろうな。

「はあ、面倒だけど、どうぞ~。

 入って頂戴。」

「失礼致します。

 私はユーノス公国の南の小国、フォード王国より、貴方様のお噂を聞き入れてその道のりを辿って此方へ参りました、プローブ・フォードと申します、フォード王国の第一王子です。」

「で、それがどうしたの?

 私は王だろうと魔王だろうと気に入らなきゃ滅ぼすって聞いて無いの?」

「ああ、いえ、そんな貴方様の機嫌を損なうような用で参った訳では無いのです。」

 そう言うプローブ君は、随分青白い顔をしている、と言うか、これは只血色が悪いなんて話じゃ無いな、間違い無く病んでいる。

 鑑定をしてみると、やはり状態異常がある、と言うか、こりゃ末期癌だな、良く此処まで来たもんだね。

「成程、あんたは私に病気を治して欲しくて来たって事で良いのかな?」

「何故それを? まだ何も言って無いのに。」

「その顔色の悪さは尋常じゃ無いですよ?」

「ああ、そうか、その通りです。」

「でも、ここまで来る必要なんか無かったのに。」

「と、言いますと?」

「私の弟子がローデストの教会で女性神官やってますけど?」

「はい??」

「え、知らなかったの?」

「ああ・・・はい・・・」

 はぁ、何だこの人のヌケ加減・・・

[病気を治せる人を探す]から、[私を探す。]に、いつの間にか挿げ代わってたんじゃ無いかなぁ?

「で、病気を治してどうしたいの?

 王位を奪いたいとかそう言う不穏な事考えてるんじゃ無いでしょうね?」

「ああ、いえ、王位には私が就かねば成らないのは確かなのですが、一応第一王子なので、私が健在であれば普通に私が継承権一位ですから。

 敢えて奪おうなんて考えていません。」

 まぁそりゃそうか。

「すると、第二位以下に継承される事を憂いて居ると言う事?」

「ええ、どうも第二王子、私の全血の弟なのですが、それの考えが少し、問題でして。」

「それはどう問題なの?」

「かなり暴力的、かつ欲深いのです。

 恐らく、私のこの病気も、彼によって何らかの毒のような物を少しづつ混ぜられていた可能性もあるのでは無いかと考えて居ります。」

 成程、可能性としては無くは無いのか・・・

「そうかぁ、まぁ不可能では無いわね、在り得るかな。

 それであんたは、これしきで倒れる訳にはいかないと、

 そう言う事ね。」

「はい、お察しの通りです、聖女様にお縋りするしか無いと思い、こうしてやって来たのです。」

「そう、判ったわよ、診察するからそこに横になりなさい、それと、貴方がこちらに来ている間に国を奪われる可能性もあるわね・・・」

「そ、そんな・・・」

「ちょっと待ちなさい。

 アイン!ツヴァイ!」

「「エリー様、お呼びでしょうか。」」

「貴女達に仕事を頼みます。

 アイン・オリジン、貴女はこれより一個師団を率いて、飛空艇マゼンダファルコンでフォード王国へ飛び、制圧しなさい。

 ツヴァイ・オリジン、貴女はやはり一個師団を率いて待機、私が治療を終えたらこのプローブ王子を護衛して。」

「「畏まりました。」」

「聖女殿、そこまでして頂けるのか、ありがたや。」

「私がこうした理由を教えるわ。

 貴方の弟、危険すぎる。

 恐らく、生まれながらにしてマナを体外へ放出する為の回路があるタイプだと思う、希だけど。

 そして多分、転生者。

 アスモデウスがおバカさんな神だったもんでね、手あたり次第に転生させた内の一人だと思うわ、じゃ無かったら貴方の国のような弱小国家の第二王子に生まれた程度でそこまでに野心家で強欲で横暴には成らないはず。

 自信もあり過ぎる。

 そこ迄の自信は一人でも滅ぼせるとか、そのレベルで考えられなければ在り得ない。

 今、ナノマシンに調べさせて居るけれど、恐らく私の読みは合ってるはず。

 倒すならば未だそこまで大きな力を持って居ない今が重要な筈です。」

「そんな、私の短い話からそこまで。」

 兎に角時間も無いっぽいね、帰って来たナノマシンが既にほぼ国が制圧されて居る事を掴んできた。

「国内だけでやって貰ってる内は良いんだけどね、ああ言う手合いは外の国に手を付け始めるからさぁ、潰すなら早めに潰す事に限るんだ。」

「私の為にしてくれてる訳では無いんですね・・・」

「当たり前じゃない、火種は早めに消すのよ、いつでも一番可哀相な思いをするのは子供達なんだから、戦争、ダメ、絶対。

 ましてや転生者が己の力を誇示する為に戦争起こして君臨するなんてあっては成らないの、異世界の知識が有れば原子爆弾や毒ガス、生物兵器なんてのを作りかねない、そんな奴は早めに殺すに限る。」

 思いっ切り自分の作って来た規格外の機械兵器を棚に上げて語るエリーだった。

 ある意味ナノマシンにしても生物兵器と大差は無かったりするし。

(あ? 何か言ったか?そこ。)

 いえ、何も・・・

「噂通りの方だ、子供達の為なら国をも滅ぼし兼ねないと聞いて居ました。」

「どんな魔王よそれ、全く私を何だと思ってるの?」

 そんな会話をしつつ手術をしているエリー。

 何をされて居るのか良く判らない上に会話の内容が内容で自分の反省点も多々有ったが為に会話に夢中で何をされて居るかに言及して居る暇の無いプローブと言う奇妙な縮図がそこにはあった。

 傷みは感じていないので尚更だ、エリーは早々にナノマシンで痛覚をマヒさせて居たのだから。

 先ず、胃の7割が摘出され、そこに再生魔法を掛けながら次に転移の激しい大腸、小腸の9割を摘出、そこにも再生魔法が掛けられる。

 更には転移して居たリンパ、肺等を摘出しては一瞬で治る様に再生させていた。

 話しが終わる頃には、大方完治して居た。

 但し、体力だけはそう簡単に戻るものでは無いので、建て替えたばかりで少し広く成って客用の寝室が出来上がって居た屋敷に泊まらせて食事を提供する事に成った。

「今日からアインが居ないから、ひろし君は一人で作らなきゃいけないけど一人分増えるのでよろしくね。

 あ、一応増えた一人分は病人だから食べやすくて栄養価の高い物でお願い。」

「あ、はい、エリーさん。

 所で、アインさんってどちらへ行ってるんですか?」

「ひろし君の知らない遠い所、そこで戦争してるわよ。」

「は???」

「知らない方が良い事も世の中にはいっぱいあるのよ、ね?」

「はぁ・・・」

 ひろしの中にまた一つ、エリーに対しての恐怖の感情が芽生えたのであった。

 手術が終わる頃には、アインは既に、量産型アイン達を空挺降下させるべく王城の上空に到達して居た。

「聖女殿、私はいつまで此処に居れば良いのだろうか?」

「体力戻るまでだよ、末期癌だったのを全快させてるんだからさ、体力も既にボロボロだったんだから少し此処で太って帰りなさい。」

 ---二日後---

 エリーを聖女殿と呼んで居たプローブも、エリーからそう呼ぶなと何度も言われて慣れて来ていた。

「エリー殿、大分体力も戻ったと思うのだが、まだ駄目ですか?」

「ダメに決まってんでしょう、未だ松葉杖無しで自力歩行出来ないくせに我儘言わないで頂戴。

 リハビリもしっかりしてよね。

 支えられないと立ってられないような人が新国王だなんて言っても説得力無いでしょう?」

 一方その頃、アインは既に制圧を完了し、戦犯は全員地下牢へ。

 住民のケアに時間を費やして居た。

 こっちはもう少しリハビリと体力を付ける為の高カロリー食治療が必要そうだ。

 そんなさ中、又来客がある。

 最近よく客が来るなぁ、マリイのお世話で忙しいってのに、何でスローライフ目指してる私がこんなに忙しく動き回ってるんだろう・・・

「あ、エリーさん、何だかお手紙届いてます。」

 ん?何だろう・・・

 差出人を見ると、セドリックさんだった。

 封を開けて中を見ると、それは結婚式への招待状。

 おお、とうとうセレナちゃんと結婚するのね、良かったじゃ無いのよ。

 で?何時かな?

 ・・・・・・明日じゃねぇかっ!

 行けないぞ、この状況・・・仕方ネェな、MkⅢに行って貰うとしようか、あいつ飛空艇作ってやがったしな、私も秘かに作ってたけどなw

 私の飛空艇は、今アインが一隻使って居るし、ツヴァイも出撃する予定でもう一隻建造済みだが、今は量産型ツヴァイを戦闘用OSに書き換えた事で義体の稼働率を上げるための訓練(?)してるそうだ、ツヴァイも何考えてんのか最近良く判らん。

 空挺降下とかアインがしちゃってるから必要ねぇってのにw

 ツヴァイ隊は護衛だっつーの、もう戦闘終ってるだろうしな。

 そんなこんなで今の私には移動手段も、取り敢えず無い体で考えている。(実は転移ポート作ってあるから一瞬で行けるのだけどそれは内緒♡)

 電脳でMkⅢに連絡を取って見たら、行く気満々なので丁度良いからジ・アースも連れて行けって言っておく。

 ジ・アースのメンツは、ついこの間、北の大陸にカーマインファンレイで上陸を果たしたばかりだからすぐに見つかるだろう。

 しかもあの子ちゃんと飛空艇にテーラーズルーム用意してるしな。

 教会でやるって事だから聖女としても所縁の有る所って事で参加しときたかったので丁度良いわ。

 -MkⅢ-

 本体から電脳通信でメール来た、あのロリババア、この間も散々迷惑かけて、今度は何だっつーの、全く。

 ・・・へぇ、セドリックさんとうとう結婚に漕ぎ着けたのね、それは行かないとだわ。

 ジ・アースも連れてってやれ?

 当たり前じゃ無いのよ、全く。

「オッケーイーグル、カイエン達のスパイダーのビーコンを探して。」

『畏まりました、検索します・・・・・・ヒットしました。』

 流石にはえぇな。

 移動中みたいだな、丁度良い。

「イーグル、カイエン達のスパイダー全機に優先指令送って、搭乗せよ。」

『了解しました、搭乗先は私で宜しいですか?』

「勿論。」

『了解しました、優先指令通信、完了しました。』

「その先の荒野に停泊出来そう?」

『大丈夫そうです、停泊、スパイダー受け入れします。』

 暫くすると、スパイダーが集まって来て、飛空艇に搭乗した。

 ブリッジへと上がって来たカイエンが、呆れた顔で聞いて来た。

「エリー、今度は何てもんを作ったんだよ・・・」

「あら、そう言うけど、もっとすごい物から出て飛んで来たんだけど?」

「何だそりゃ、もう驚きを通り越して呆れるしか無いのだが?」

「それ所じゃ無いのよ、冒険はちょっとお休みしなさい、全員出席だからね!」

「なんだなんだ?何の事だよ、エリー。」

「キースも良く聞け、セドリックが、結婚式するそうだ、しかも今や侯爵様らしいぞ。」

「えぇっ!?伯爵様が出征して第四王女と結婚するの?」

 クリス、そこまで言って無いのに何で判った?

「まあそう言う事に成るんだが、何で第四王女だと知ってる?」

「だって、聞いちゃったしね。」

 聞いたのかっ!

「念願叶ったのねぇ~、でも私達、出席出来る様なフォーマル持って無いわよぉ~?」

「こっちに来い、一斉に仕立ててやる、急げ、このまま移動して明日出席だぞ?」

「「「「「は???」」」」」

「明日だってば、結婚式。」

「もっと早く言ってくれないか?そう言う事は。」

「仕方無いでしょう、本体に手紙届いたのがさっきなんだから、これでも電脳通信ですぐに受け取ったのよ私は。」

「「「「「ああ~、そうだった、手紙じゃねぇ~。」」」」」

 お前ら、電脳通信に慣れ過ぎて完全に忘れてただろ・・・

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