第251話 魔鹿スタンピード
魔鹿スタンピード
-MkⅢ-
私とオーブ、玉藻ちゃんは、ついに奈良へと入っていた。
「玉藻ちゃん、オーブ、そろそろ目的地だよ、支度してね。」
「もう準備出来とりやす、何やわっちの分身、戦ってはるようどすけど、相手は大して強く無さそうどすし、わっちだけで行けそうどすえ?」
「にゃにを大口叩いてるにゃ、このメギツネは。
アタイより弱いくせに。」
そうなのだ、玉藻ちゃんよりも弱かったオーブは、蛇ダンジョンでのパワーアップについで、スマホの魔法ジェネレーターを使い熟せるようになったおかげで、玉藻ちゃんを圧倒する程になって居た。
「ふん、機械頼りの猫なんか、此処の分身取り込んだら負けたりしまへんえ?
今の内に吠えとっておくんなはれや。」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬ。」」
やっぱお前ら本当はムッチャクチャ仲良しだろ、おい。
何で最後のぐぬぬハモってんのさ、全くw
実際に知って居るしな、事ある毎に模擬戦やって、どっちが勝っても最後は寸止めで、勝った方が手を差し伸べてるのを。
まぁ、負けた方は悔しくて大概その手を払って自力で起き上がるんだけどなw
見てると面白いよ、この二人。
むっちゃ仲悪いようで実は息の合った芸人のようだもん。
呼吸をするように喧嘩してるしな。
「間も無く目的地に到着します。」
スペイド・エースのアナウンスが入った。
・・・のは、良いんだけど・・・ここから見てハッキリと異様な光景が広がって居た。
「何、これ・・・鹿だけのスタンピード?」
無数の鹿が、玉藻ちゃんの分身と思しき狐火を操る一体の魔物に対して、突撃を仕掛けている、このままだと死ぬよね、あの分身・・・
「ねぇ玉藻ちゃん、分身って死ぬとどうなるの?」
「多分どすけど、本体の尻尾に・・・」
「それだと都合悪いのよね、本体強くなっちゃうし。」
「そうどすなぁ、助けに行きまひょ。」
のんびりと間延びした喋り口調だけど、真っ先にスパイダーから飛び出した玉藻ちゃんの尻尾は、既に5本になって居るので、1人で突っ込ませても大丈夫っちゃ大丈夫なんだろうけど、いかんせん無数に集まり続ける鹿の数が悍ましいレベルだ、オーブにも出撃を促す。
「オーブ、行きなさい。」
「ふーん、あんにゃメギツネのお手伝いにゃんかしたくにゃいもーん。」
「ふぅん、アンタってそんな冷たい子だったの、へぇ~そうなんだ~・・・ふぅ~ん。」
すると、私の事を最高の師匠だと思って居るオーブちゃん、良い反応を示してくれました。
「うう・・・し、師匠が行けって言うんにゃら、言ってやらにゃい事もにゃいけどねっ!」
うん、良いツンデレだ、流石猫だ、ツンデレがよく似合うw
「よし!んじゃ行ってきなさい、私も直ぐに行くから。」
「いってきますにゃ~!」
身体強化で脚力をあげたオーブが、豪快に大ジャンプして飛んで行き、上空から魔法撃ちまくってる・・・
よっぽど魔法が撃てるのが嬉しいんだろう、撃ちまくってるよね。
まぁ、何だ、気に入ってくれた様で、何より、作った甲斐があるってもんだわ。
しかし、オーブでもあれ程喜んで使うんだから、製品化して見ようかな・・・
もう少し廉価版で。
マッピングと、第二階位迄の攻撃系魔法全属性版と、第四階位迄の治療魔法(診察付き)版、第五階位迄の強化&弱体化魔法版、この3種類で売り出して見ようかな?
販売ルートは竜馬さん経由でどうだろう。
あれ程広域で商売している竜馬さんなら、良い具合に売りさばいてくれる気がする。
どのくらい売れるだろうねぇ、楽しみではあるよね。
おっと、ンな事考えてないで私もそろそろ行くか、押され始めてるよね、あの子ら。
プラグスーツ風のバトルスーツに身を包んで、邑雅を携えて、風魔法で一気に加速して群れに飛び込んで行くと、思考加速と身体加速で的確に鹿の首だけ刎ねて行く。
で、ね・・・私ってば、無意識に、「お肉♪お肉♪お・に・く~♪」って、どっかで聞いたようなテンポで口ずさんでた。
ヤバい、鹿の魔物はお肉にしか見えていない私に自分で気が付いちゃった。
でも、やっぱアレはお肉よね。
美味しいんだもの。
切り飛ばすなりストレージに仕舞ってたしね、これも無意識でねw
そんで、鬼火で防戦一方になってる玉藻ちゃんに、「玉藻ちゃん! 私が少しだけ抑えてあげるからとっとと合体しちゃいなさい、それだけで状況代わると思うんだけど。」
こう告げると、精霊を召喚する事にした。
えーっと、誰が良いかなぁっと。
近くに立派なお寺が有るしな、飛び火して萌えちゃったら洒落に成らないから火は禁止よね。
すると、此処はやっぱり、ポックルとシェリルで良いかなっと。
「土よ集わん、我の元へ、我が名はあなた達の友 エリー・ナカムラ、顕現し賜え、其方等の名はポックル、シェリル!」
土の上位、最上位の精霊を呼び出し、ストーンバレットとアースバレットで着実にヘッドショットを繰り返し、ワンショットキルで仕留めて行く。
その私や精霊達の背後で、玉藻ちゃんの魔力、もとい妖力が膨れ上がるのを確認した。
これは、相変わらずだけど、毎度の事のように予想を上回ったパワーアップを果たす玉藻。
これならかなりの戦力になる。
「お待たせ致しんした、後は任せとぉくれやす。」
そう言うと、玉藻ちゃんが私の前へと、私を飛び越えて行く。
そして玉藻ちゃんが着地すると同時に、目前に迫っていた鹿の一団が、瞬時に切り裂かれて肉と化した。
おおー、流石なかなかやるじゃ無いの。
電脳通信で毒手拳は封印させているオーブの方はどうかな?
「にゃはははははは!体が軽いにゃぁ~!」
ああ、はいはい、スマホにマナを吸い取られてたりしてたもんだからマナコントロールが格段に上手くなってるオーブだからこその身体強化が発動してるよね~、エネルギー効率も最適化されてるしな。
これなら、本当に強くなったと思う。
このまま強さを追求すれば、2年もしたらルイさんを超える事も可能だろう。
まぁ、逆に言えばあのオネエはそれ程強いと思った。
多分だが、先代を遥かに凌駕しているのでは無いだろうか。
ロッテちゃんも強いと思ったけど、あれ程の強さには感じなかったしな。
それにしても強いわ、玉藻ちゃん尻尾6本バージョン。
マナ切れの心配ももう暫く無さそうだしね。
妖術と魔法って、ほぼ同じなんだけど、発動のプロセスがすこぉ~しだけ違うように感じなんだよね、尻尾が8本揃ったらちょっと研究させて貰おう。
オーブと玉藻ちゃんが鹿の魔物をどんどん討伐して行くもんだから、私は片っ端からストレージに突っ込むだけになってる。
しかし、こんな数の鹿の魔物を倒しまくって大丈夫なのだろうか、乱獲としか・・・
倒した鹿の個体数が2万を超えた頃に、鹿の最後尾に大きな魔力反応を確認。なので、私は千里眼のスキルと共に、かなりの広範囲で撃てる事もあって重宝して居る雷系魔法で攻撃して見る事にした。
サンダーフォール、文字通り落雷と言う名前の魔法。
これの上位互換が、イン・ドラになる。
まぁ、イン・ドラを使ってしまうとこの周囲一帯が消し飛んでしまうからね、今回はサンダーフォールを撃ってみようと思う、一発では倒せないかも知れないけどね。
一応、相手は鹿系魔物の最上位みたいだから、かなりの強さだと思う。
鑑定してみると、エンシェントジャイアントディア―・クイーン。
なげぇ名前だけど、ジャイアントディアーの最上位種のしかもクイーンらしいな・・・
せめてサンダーフォールの副作用の麻痺でも起きててくれると楽なんだけどね。
二発当といたけど、ダメでした。
超加速で白兵戦へと持ち込もうと近付いて見たけど、なんつうデカさだよ、オイ・・・
あの遠くからも角が見えてた程だからデカいとは思っては居たけどな。
多分立ち上がったら100m近く有るんじゃないか?角も含めて。
まるでドラゴンを相手にしている様なプレッシャーがある。
気圧されていては倒せるものも倒せないと、魔王覇気と英雄覇気の二つを同時発動し、威嚇する。
すると逆にクイーンが委縮した事で、一気にたたみかける隙が生まれた。
これを見逃す手は無いね。
でも、デカすぎて一撃で斬れるとは思えない。
ならば・・・
二刀流と洒落込みましょう。
右手に邑雅、左には、最大出力に設定したライトセイバーでクロス攻撃でいけるかな?っと。
しかも邑雅に覇気を通す。
「はぁぁっ! いっけ~!」
イオンクラフトで飛び上がりながら双刀を揮う。
次の瞬間、私は、クイーンの首を切り落としつつ、その裏側へと抜けた。
首を切り落とされたクイーンは、その場に崩れるようにその巨体を地に伏した。
暫くすると、下位の鹿達は正気に戻ったようだ。
突如何かを思い出したように、各方向へと散って行ったのだった。
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