第249話 名地下ダンジョン散策

        名地下ダンジョン散策

-MkⅣ-

ダンジョンの入り口に立った私だったが、このダンジョン、これまで見た物とは圧倒的にかけ離れて間口が広い。

ガーネットフェンリルに乗ったままでも侵入出来てしまった。

入ると早々に、ゴブリンの大軍が押し寄せて来る。

ハウリングキャノン。

こいつの威力は半端な物じゃ無い。

物体の固有振動周波数に干渉して粉砕してしまうのだから、どんな大軍だろうが一撃だ。折角、私オリジナルのバトルスーツに連動する事が出来るように設計したので、変形も試す。

フェンリルの頭部の造形が、かぶっているフルフェイスメットに合体し、ちょっとカッコイイ感じになる。前輪が胸の装甲になって背後に、ガソリンエンジンバイクでいう所のタンクがバックパックとして、その内側へ魔素エンジンを収納しつつ移動。

シート部は二つに割れて脚部装甲に。

後輪2本は左右の腰に下がる形で脚部シールドとして展開。

サイドカウルはウイングに。

リアカウルが両腕の装甲、ガントレットになる。

シャシーの間に入って居たミニガンが右腰に、私のストレージから取り出した剣を左腰に装着。

両手のガントレットからはクロウが飛び出す。

こうしてガーネットフェンリルはバトルスタイルへと完全変形を遂げる。

膝立ちの状態になると、左右に配した後輪で走る事も出来る。

ハウリングキャノンは使用不可となるけど、あれはマナ使用量が多いのでどの道そう何発も撃てないからね。

基本白兵戦の方が省エネで使い勝手が良い。

この機体のパワーならばサイクロプスすら圧倒出来る筈である。

このダンジョンは人型の魔物縛りらしいから、居るだろうね、サイクロプス。

ゴブリン、ホブゴブリンと順調に踏破して行き、オーガコマンダーのフロアボスを倒した後の事だった、次の階層は、驚くべきものだった。

種族はトレントになる、だが、ファイティングトレントと言うユニーク種の様なのだが、人型をしていた、と言うか、名古屋ならではとしか思えない物だった。

そう、その容姿、見てくれは完全に、ナナちゃんそのものだった・・・

うーん、ナナちゃんと戦うの凄く忍びないなァ・・・

まぁ、倒すけどな、襲って来る以上は。

絶対このダンジョンデザインしたのって転生者であり私の前の錬金術師でありハイエルフで魔王の、タカシ・タナカその人としか思えない、もしかするとこの奥に今も住んで居るかもしれない。

いや?まてよ?

ここが名地下がデザイン元としたら、メルサとかの建物がくっついて居て然るべき。

地上に高い岩山とかがあったりした訳では無いので、そのビルを亜空間内に再現した最上階とかに住んでる可能性が高いな。

すると・・・目指すは名鉄百貨店!そこだろ、多分。

だってさ、このダンジョン、普通じゃ無さ過ぎる。

普通ダンジョンって真っ暗な通路が伸びてってその奥に平原エリアみたいのとかは明るかったりとかってのが普通なんだけど、入って直ぐにいきなり坑道風になってるわ、天井に明りがあって割と明るいんだわ。

良し、そうすると、此処は攻略せずにちょっと置いとくとしよう。

最下層まで行っても、案の定、そこにダンジョンコアは無かった。

そして、このフェンリルギアがあれば、サイクロプスも片手間に殴り倒せる事が判ったのだった。

色々収穫があったわ、これは本体と攻略に来るのが良いだろうな。

それと、入った時は気が付かなかった(モヤモヤしてて暴れたいだけだったからだと思う)けど、名地下ソックリに作られたそのダンジョンの、キオスクや名鉄ショップなどの売店では、色々売ってたのよ、駄菓子とかさ・・・魔人がね。

違和感だらけな訳なのよ、此処。

仕方無いからさ、ダンジョンから出て、名古屋飯食って帰る事にします。

ダンジョンから出た私は、何が良いかなーなんてうろついてたら、有ったよ、〇来坊さん。

手羽先食って帰ろっと。

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おまけ。

-魔王?・タカシ・タナカ-

僕は転生者、田中隆司。

すっごく在り来たりな名前でごめん。

誰に謝ってんのか自分で良く判んないけど。

僕は、2020年、コロナ過真っただ中に、コロナで、ではなく、車に轢かれてその短い生涯を終えた。

当時16歳、高校生だった。

こっちの世界へ転生した僕は、ハイエルフに成って居て、錬金術が使えた。

この世界には、本当に何も無かったので、僕は食事は自分で錬金術で出した物を食べて生活をしていた。

だけど、住む所が無かった僕は、アルファード帝国帝都で生きて行く為に、魔道具を作っては売ると言う生活を始め、一件の空き家を買い取る事が出来た。

魔道具とは言うけど、僕には正直に言って、その動力の原理は思いつかなかった、けれど、魔力を使って作った物で、大気中にある魔力の素、魔素とでも言うのだろうか、そう言った物を吸収して動いてくれたら良いなぁなんて適当に考えて作った物が動いて居るので、きっと本当にそんな要素がある世界なんだろうと思った。

でも、魔法が存在する世界では無かったので、錬金術で色々と何とかしようと考えた僕は、ホムンクルスを生み出すまでに錬金術を強化して行った。

そして、各冒険者ギルドに、ホムンクルスを置く事で、共有思念を持つホムンクルス同士で情報共有が出来るようにして、後、冒険者の鑑定が出来るクリスタルも各所に置く事で、当面の生活費を確保した。

この世界には奴隷制度があって、借金で首が回らなくなった人や、犯罪者は奴隷に落とされるようなんだけど、その奴隷が主人を殺して逃げると言う事も多々あった、だから僕は、隷属の首輪と、指示を出す為の主のリードと言う対になる魔道具を作っただけだったのだけど・・・

何故かその魔道具を、悪意のある物と取られてしまい、魔王として、追放され、更には勇者を派遣して迄討伐の対象とされた。

僕は逃げた。着の身着のままで。

途中で、僕ソックリのホムンクルスを作り、更に逃げた。

海も渡った。

航海は、とても危険なものだった。

僕ソックリに作ったホムンクルスは、捕まって処刑されたそうだ、風の噂に聞いた。

途中、船が何者かに破壊され、僕は難破した。

必死で泳いで、船の破片と思われる板を見つけ、必死でしがみ付き、ようやく陸地が見えたので、気合いを入れて泳いだ。

引き籠り気味だった僕は、ハッキリ言って体力に自信は無かった、でも、きっとこの、こっちで手に入れたハイエルフの肉体は、元の体より強かったのだろう、そのお陰で何とか、陸地に迄は辿り着いた。

それが今から、凡そ250年程前の話。

その大陸は、凄く日本にソックリで、少し嬉しかった、日本語が通じるのだ。

ちなみに、浜でグッタリしていた僕を助けてくれたのは、エルフだった。

僕は、そのエルフ達を連れて、森の中へと、だってさ、エルフっつったら海じゃなくて森だろ?

だから、富士山を目指して森の中へ入ったんだ。

そこで、エルダートレントを見つけた。初めは攻撃されたけど、このエルダートレントに、エルフを護って貰おうと、魔道具を作って居る時の要領で、僕の魔力を分け与えると、エルダーは、エンシェントトレントへと進化した、魔力はやっぱり存在するんだと、初めてそこで自覚をした。

エンシェントトレントは、エルフを守ってくれる事を約束して、エルフ達の食べるに困らない量の果実も提供してくれると約束をしてくれた。

そして、この大陸を色々旅して周った僕は、この大陸に、多くのダンジョンを作る事にした。

以前にも、いくつかのダンジョンを作った事はあったが、此処ではダンジョンコアを量産して、ホムンクルスにダンジョンマスターと成る事を指示しては、たくさん作った。

だって、怖かったんだ、あの帝国の勇者が討伐に来るんじゃ無いかって。

だからダンジョンをたくさん作って、勇者の足止めにした。

そして、ここ、名古屋に辿り着いた僕は、城の他は農村しか無かったこの名古屋を発展させ、この場所にダンジョンを作り、名地下をモデルにして、変則的なダンジョンとした。

僕の居城は、隠し通路の先の、名鉄百貨店の位置の、上に伸びるダンジョン、その最上階だ。

ダンジョンは下方向へも伸ばし、下に行けば行くほど強い魔物が出るように設定し、でもコアは僕が持って行く。

誰かに攻略されてコアを壊されたらダンジョン無くなっちゃってはじき出されちゃうもんね、それじゃ僕が此処に居る事もバレてしまう。

だから僕は、こんな変なダンジョンを作った。

一人で寂しいので、魔人達を店員にして、名地下売店たちを作ったりもして見た。

ダンジョンは、だんだん本当に名地下にソックリになって行った。

僕はそれも楽しかった。

このダンジョンに、何だかとんでもないイレギュラーな来客があったようだ。

何だか変な、パワードスーツと言うか、フィギュアのガンダムガールの様な格好で、ツインテールを結んだ、萌えを判って居そうなコスプレ女が、スゲー強さでダンジョンを攻略して行く。

サイクロプス迄ワンパンだった、怖い、こいつ、まさか勇者なのか?

僕を討伐しに来たのか?

しかし、その女は、隠し通路に気が付かなかったようで、最下層まで行くと戻って来て、ダンジョンを出て行った。

ヤバいよな、絶対あの女も異世界人だ、僕の知らない内に、異世界人の召喚術式みたいなものが作られて、召喚された勇者なのかもしれない。

僕の偽物が処刑されて250年も経てば、その位出来ない事は無いのかも知れないしね。

どうしよう、此処から出て、別の場所に行こうか、でも、ここは愛着が有るからなぁ。

そうだ、もしかすると、死んでこっちに来たんだから、もう一度こっちで殺されたら、帰れるかも知れないしな、250年も生きるのは辛いよ、1人で生きるのはさ・・・もう、良いや。 ここに留まろう。

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