第248話 名地下はダンジョンだった件

       名地下めいちかはダンジョンだった件

 -MkⅣ-

 ドラグライダーの構造を本体から取り寄せて、私専用の機体を考えて、少し大きめの三輪バイクが変形して、私のアーマードスーツと連動するパワードスーツに変形する構想を元に、少しぐらい川幅の広い川でもひとっ飛びで渡れるよねーって事で、パワードスーツ形態の時はジェットバックパックも付属と言う致せり尽くせりなユニットを考案した。

 でもドラゴンをデザインだと丸パクリみたいだから、此処はあえて、バイク型の時だけでもと、狼を模したスタイリッシュな形にして見た。

 武装はねぇ、バイク型の時のお口のとこから撃ち出すハウリングキャノンと、パワードスーツ時には、クロウと、腰にぶら下がってるミニガンと、私の愛剣、MkⅢ作のスーパークラフトソードね。

 これで走って名古屋まで行けるっしょ。

 グリフォンとかで飛んで行くのは簡単だけどさ、それじゃ面白味に掛けるのよ、あっと言う間過ぎるし。

 名付けてフェンリルギア。

 私専用機になるから、カラーリングは赤色ベース。

 ガーネット・フェンリル、ここに爆誕!♪

 んじゃ早速、出発。

「行ってきま~す。」

 ちなみにフェンリルギアの動力は魔素エンジンだ。

 ドラグライダーの物を更に小型化した物で、実に15,000PSを発揮出来る。

 実際にこのパワーをフルに使って最高速トライなんかしようものならとんでもない事に成るので、走行用のリミッターは付けたけどね。

 ガンガン走って行くと、何だか悲鳴が聞こえた気がした、ので、そっちの方向へと進路を変えて見ると、何だか旅支度の装いの女性が小汚い風貌のオッサンに襲われて居て既に胸がはだけてしまって居た。

 ので、ストーンバレットの魔法を極力威力を絞って撃つ。

 変態親父の後頭部にぶつけてやって、意識を刈り取った。

「大丈夫?」

「あの、お有難う御座います。」

「見た所、旅をしているように見えるけど、女一人旅は正直言って無理だと思うわよ?」

「はい、実は、私も迷ったのですけど、母と二人暮らしをしていたのですが、その母が亡くなってしまったので、母と離縁して浜松に住んで居る父の元へと単身向かおうと思ったのですが・・・」

「成程ぉ、でも、無理はいけないわよ、お仕事とかは無いの?」

「はい、母も、私を育てる為に遊郭で殿方のお相手をして生計を立てて居たんです。」

「で、貴女はそれと同じ事はしたく無かったのね?」

「はい、母の仕事を悪く言いたくは有りませんが、私には、不特定多数の殿方と肌を合わせるのは抵抗が有ります。」

「そうなのね、それじゃあまさに助けて良かったわね。

 ってか、浜松っつった?」

「はい、父は浜松で酒場を経営して居ると伺ってます。」

 ん? 何かそう言えばどっかで聞いた覚えの有る話だわな?

 まぁいっか、ンじゃこの子乗っけてったろうかな。

 何だったら途中通過する江戸の街で就職見つけてやっても良いしな。

「ねぇ、貴女、乗って行かない?

 私は今、名古屋を目指して走ってるの、浜松ならば私も知った街だし、通る道だから寄ってあげても良いわよ?」

「本当ですか? でも・・・あなたも女性ですし、危険は一緒なのでは?」

「あのね、こんなに速く走れる魔道具で走って行くのにあんな暴漢や山賊に襲われるとでも?

 ましてや貴女を助けたのは私よ?

 私の強さを信用出来ない?」

「そうか、そうですよね、では、申し訳無いのですがご同行させて頂いても宜しいですか?」

「どうぞ、さ、このヘルメットかぶって、乗って乗って。」

 それにしても、こんな市原くんだりから浜松まで行くのに、なんて軽装なのよ、この子、世間知らずも甚だしいと言うか。

 あ、待てよ、そうか、識字率すらも10%程しかないこの世界では、地図の見方も知らないのが普通って事かな。

 本当に拾って良かったのかも知れないな。

「ところで貴女、浜松ってここからどの位先か知ってる?」

「いえ、海沿いを西へ向かって行けば辿り着けると言うだけしか。」

 アカンは、こりゃマジだわ・・・

「いい?はっきり言って貴方のこの軽装では無理。

 ここから見える海辺に出て西に行けば、なんて考えてたんでしょうけど、此処から海へ出るのに、歩いたら半日ほど掛かるの。」

「はい、でも西に行けば良いのですよね?」

 やっぱ理解してねぇわ・・・

 仕方無く地図を出して広げる。

「良い?今私達が居るのがここ、で、貴女の目指して居る海、ここから見えてる海岸は、此処。

 そこまで半日。

 で、貴女が目指して居る浜松は、此処なの。

 たったこれだけの距離に半日かかるの、浜松迄はこの何倍あるかしら?」

 呆然と、かつ、絶望的な表情で地図を眺める少女。

「あの・・・何日掛かりますか?」

「そうね、貴女の足で歩いて行って、最短で2週間、但し何のトラブルも無く休みなく歩けて、と言う感じかしらね。

 休憩を取りながら、何のトラブルも無くで、3週間ちょっと位かな?

 まぁ、休みなく寝ずに歩くのは不可能だから、3週間は最低見てね、って所かしら?」

「貴方と一緒に行って、何日ですか?」

「私と一緒に行くなら、今日着くわよ?」

「え?」

「今あなたの歩く速度が時速1.2㎞位、私のフェンリルギアで行けば、最大時速300km、ものの数時間って所かな?しかも休まないでも走り続ける事が出来る。」

「なっ!? 貴女は何者なのです?天女様??」

 なんでそうなるんだ、又しても天女かよ!w

 ここは私が凄いんじゃ無くてこのバイクが凄いと言う事にして置くしかねぇな。

「私が凄いんじゃ無いわよ、この魔道具、バイクって言う乗り物なんだけども、これが凄いだけよ?」

「そうか、そうですよね、でも、こんなすごい物、どうやって手に入れたのです?」

「これは私の知り合いがくれたようなもん、かな?

 そんな事はどうでも良いから、さっさと乗って。」

「はい、有難う御座います。」

 旅は道連れって言うし、休憩時間にも話し相手が居るのは楽しいから良いとしましょう。

 この子を乗っけて、走り出し、途中2回ほど、峠のお茶屋さんで軽食を頂いたり、御団子頂いて、5時間程で浜松に到着した。

「着いたわよ、浜松。

 で、お父さんのやってる酒場ってのは、何て名前なの?」

「濱松屋って言います。」

 ん? チョ待てよ! おやっさんの娘かよ!こいつ!

 世間せめぇな、オイ・・・

「なぁ~んだ~、おやっさんの娘だったんだ、私の飲み友達だよ、おやっさん。」

「え? どう言う事です?」

「そう言う事も何も、私が良く飲みに行ってる酒場よ、私のレシピも再現してくれた腕の良い職人さんだからね、気に入ってるのよ。」

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「こっちこっち、此処よ。」

「ここが、父の・・・」

「おーう、未だ開店前だぞ~、って何だ、エリーちゃんか、久しぶりだなぁ。」

「お父さん・・・」

「よっ、おやっさん、オヒサ、ってか、この子あんたの娘だろ?」

「お、おお・・・お静、なのか?」

「はい・・・会いたかった、お父さん。」

「お前の母さんはどうした? お鈴はどうしたんだ?」

「お母さんは、先日、病気を拗らせて・・・」

 うわ、遊郭で働いてたって事は、病気ってまさかと思うけど、あれか・・・

「そうか、それでお前一人になっちまったのか。」

「あー、おやっさん、ちょっと良いかな?」

「おう、エリーちゃん、娘をどっかで拾って連れて来てくれたんだろ、ありがとうよ。」

「それなんだけどね、この子、拾ったのって市原の山道だったんだけどさ・・・」

「そんな、まだ家を出てすぐ位の所じゃねぇか。

 どれだけ掛かったんだい?」

「まぁ、私に掛かればせいぜい5時間だけどさ、アンタなんでこんな遠くまで来てた訳?」

「ああ、実はここは俺の故郷でよ、俺の母親の介護をする為に戻ろうとしたんだが、その時に、未だちっこかったこの子を旅に連れ出すのは忍びなかったもんで、あっちに残して来たんだ。

 いつ戻れるかも判らなかったから、離縁する形でな。」

 私は思わず、親父さんの顔をひっぱたいてた。

 おやっさんは、私にひっぱたかれた理由を察しているらしかった。

 何も言わず、娘に向かって土下座をしたのだ。

「済まなかった、これからは俺と暮らそうな、お静。」

 もう、これなら私は邪魔者でしか無いだろう、そっとフェイドアウトして、この場を去る事にした。

 さぁ、後1時間も走ったら名古屋だ。

 名古屋城から少し西に行ったところに、一寸したダンジョンが有ると聞いた私は、このモヤモヤした気持ちを払拭する為に、そのダンジョンに潜る事にした。

 少し暴れてすっきりしよう!

 まさに、それな?

 辿り着いたそこは、名古屋城との位置関係上、前世の記憶にある、名古屋駅、名駅めいえき位の座標だった。

 ダンジョンって・・・名地下なのか?

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