第242話 エリーの一番長い日3

        エリーの一番長い日3


 あっそ、んじゃそろそろ本題を窺うとしようかね?

「んで? その本田宗一郎君は何しに来たんだっけ?」

「それは誰で御座る?拙者は本多忠勝で御座る。」

「ああごめんごめん、私ってば研究とか実験とか開発に使う頭脳は惜しまないんだけどそれ以外にはあまり使いたく無いのよ、従って名前憶えるのが非常に苦手でさぁ。

 で?何しに来たんだっけ?」

「此度のアイン殿ツヴァイ殿への礼状と褒美の品をお持ち申し上げて御座る、先ずはお納め下され。」

「そう、そう言う事なら受け取りましょう、貴方の持って来て頂いた物資金品は孤児の為に有意義に使わせて貰います。」

「もう一つ、お願いの儀が有って伺った次第なのですが。」

「なぁに?」

「是非、城へお越し願いたいと、殿より直々に招待するようにと命を受けて御座います。」

「だが断る!」

「今何と?」

「断るっつったの、何で私が行かにゃならんのよ、私だけじゃなくてアインとツヴァイも行かなきゃダメなんでしょう、こう言う場合、そうなったらこの子、マリイのお世話をするのが居なくなっちゃうでしょ、無理です、私に会いたきゃ来いっつーの、そゆこって、これで用件は終わりよね?

 さ、もう帰って、こう見えて私は忙しいのよ。」

「う・・・さ、左様で御座るか・・・お子の世話で御座るな・・・こちらに殿方は居らぬので御座るか?」

「ん?マリイの父親って事?居る訳無いでしょう?この子は私が一人で生み出したんだから。」

「??? 意味が解らぬので御座るが??」

「この子にお父さんは居ないっつー事!

 私は誰とも結婚して無いし誰とも一夜を共にしたりして無いの、判ったら帰った帰った!」

「え?あの、ちょ!?」

 アインとツヴァイが本多殿を押し出すように家から放り出す。

 その直後、途中で帰って着ていたフィアーが私の意図をくみ取って塩を持って来て撒き出した。

 流石の戦国武将であっても流石に玄関先に塩を撒かれて迄食い下がる訳には行かないだろうね、後ろ髪を引かれる想いだったろう、ちらちら此方を窺いながら帰って行った。

 さて、いよいよ研究の再開を、って又なんか連れて来てねぇか?トライ・・・

「ふえぇぇぇ~~~! たしゅけてくらしゃい~!」

 今度は巨大なウニかよ!

 ってかこれってバフンウニじゃね?

 美味いらしいな、それじゃ一狩行っとくか!

 フィアー、マリイをお願いね、アイン、ツヴァイ!行くよ!あいつの卵巣は出鱈目に旨いのよっ!

「了解、ウニなのに鱈とはこれ如何に、と、ツッコんじゃいけなさそうな所にツッコミを入れて見たと告げます。」

「ツヴァイ、そこは本気で突っ込んじゃいけない所です、むしろボケにしか聞こえませんのでツッコみたい所ですがツッコみようも有りません。」

 お前ら新手の漫才コンビか何かか!

「さぁて、やるわよ!」

「はい、戦闘モードに移行します。

 アインフラッシュ。」

「ツヴァイフラッシュと告げます。」

 お前らその恥ずかしい変身の台詞を使うな・・・

 一回メンテナンスするかな、こいつ等。

 しかしまぁ、バフンウニならば棘も短いのでほぼ邪魔になはらないし、楽勝だろう。

 それにしてもでけぇウニだな、直径100m超えてそうだぞ?

 さて、斬るのはどうにかなると思うんだけど、真っ二つとまでは行かないよな、このサイズだと。

 バフンウニの排泄口から刃を入れて前後に同時に切り分けるかな・・・

 そうなると私が出るよりもアインとツヴァイの連携で戦う所も見てみたいよな、この二人息ぴったりだし。

 よし、やらせてみよう。

 電脳通信で、アインとツヴァイだけで倒すようにと告げた後、作戦を提示して、私は空中で見学する事にした。

 トライがその馬鹿力で浜へとウニを打ち上げると、すぐさまアインとツヴァイが華麗にジャンプをしてバフンウニの頭頂部へと着地し、事前に渡したオリハルコンナイフをウニの排泄口に突き立て、同時に後ろへと割いて行く。

 そして、外殻を割きつつウニの上部から下へと降り、ちな氏が着いた瞬間に二人同時に、ウニの割き切れない外郭部分を蹴り上げて開く。

 丁度、ミカンや肉まん等を両手で割った時の様な状態と思ってくれたら判り易いであろう。

 これでバフンウニは倒せた・・・のだが・・・

 私はショックを隠し切れなかった。

 何故ならバフンウニは、雌雄別個体なのだ、そう、このウニは、雄だった、卵が・・・無い・・・orz

 思わずプルプルと震える私の両腕。

「トライぃ~!」

「ふえぇぇぇ~、許してぇ~。」

 私が怒って居るのには敏感に反応するトライ。

「あんたねぇ~!」

 怒りが爆発寸前でわなわなと両手を震わせながらトライの居る方向へ向き直る。

「な・・・何だか知らないけどごめんなさ~い!!!」

 ダッシュで手漕ぎボートを漕いで沖へ逃げようとするトライ。

「せめて雌を連れて来んかぁ~い!!!」

「ひえぇぇぇぇ~~~!」

 10分程トライとの鬼ごっこが展開される事に成ったのだった。

『エリー様、お待ち下さい、バフンウニの雌雄の区別は、付けることが不可能と言われて居ます。』

『トライは基本的に体質的に変なものに好かれて追いかけられるので、女性型であるトライは雄に好かれる傾向が強いのでは無いかと考察します。』

 成程、尤もだ・・・

 中身が内蔵以外何も無かった事でショックだったもんだからついトライに当たってしまった。

 確かにアインとツヴァイの言う通りかもしれない。

 冷静になった私は、トライに一日お休みをあげる事にして、鬼ごっごを終わりにした。

 いやぁ、すっかり暗くなったよねぇ、日が短くなったもんだわ、もうすぐ冬なんだね~。

 ウニが食べられなかったショックを抱えつつ家に帰ると、泣くマリイにフィアーが困って必死であやして居た、あ、しまった授乳の時間だった。

「マリイごめんね~、オッパイの時間わしゅれるなんて悪いママでしゅねぇ~。」

 急いで授乳をさせつつ、何か忘れてる事に気が付いた・・・

 あ、そうだ、今晩から離乳食食べさせて見るつもりだったんだっけ・・・

 今日は忙し過ぎたよぉ、何だってこんな色々重なるのさ、私も疲れたわ~・・・

 今日はこの後マリイに添い寝しつつ寝ちゃおう。

 駄目だわこりゃ。

 こうして私は、折角始めた研究を途中にして一日を終える事になってしまったのだった・・・

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