第241話 エリーの一番長い日2

       エリーの一番長い日2

 そんな事を考えつつ、おむつ交換をしていると、ツヴァイが私を呼びに来た。

「エリー様、竜馬様とリーゼロッテ様が御越しになりました。 と、告げます。」

「判ったよー、おむつ交換したら出て行くから代わりにマリイを寝かしつけて貰えるかな?」

「畏まりました。 お任せ下さいと宣言します。」

 何だか、そんな喋り方を強要した覚えとかねぇんだけどな、妙な成長したよねぇ。

 ま、いっか。

 おむつ交換を終えたマリイをツヴァイに託して、リビングへ行くと、丁度アインが、やっとうちの畑で収穫が可能になった茶葉を使った緑茶を出して居た。

 まぁ、トリーシアに無理やり育てさせた奴だから本来収穫時期じゃないこんな秋に採って居るだけで、来年からは5月が収穫時期だろうと思う。

「竜馬さんロッテちゃん、いらっしゃい。

 今マリイのお世話してたから出遅れてごめんね~。」

「エリー殿、この度は本当に世話になった。」

「エリーさん、私に新しい生き方を教えてくれてありがとう。」

「まぁそんな畏まらんで頂戴な、私はアンタ達ぴったりだと思ったからくっ付けてみようと思って悪戯程度にやって見ただけなんだからさ。」

「しかし、あのようなっトンデモナイ性能の乗り物を頂いてしまって良かったのか?」

「ああ、アレは只の乗り物なんかじゃ無いけどな。

 本物のドラゴン以外だったら大概は負ける事は無いぞ?」

「それはそれでやり過ぎな気がしないでも無いけど、でもまぁ魔物に襲われる事も少なくは無いから助かっては居る。」

「私も、戦わなくて済んでしまうような事に成ると思って無かったので感謝してます。」

 性格ガッツリ変わったよね、ロッテちゃんって・・・

 元はこんな可愛い性格だったんだろうね、初めて会った時にはいきなり手合わせしろって来たほどだったけどな。

 なんかすっかり乙女だ。

「お食事の用意が出来ました、どうぞこちらのダイニングテーブルへ。」

 流石はアイン、手際が良いよね、予定通りの時間って感じだ。

「え?俺達もなのか?」

「良く用意出来ますよね。」

「なぁに、お前達が来るのは解ってたから大した事じゃ無いよ。」

 二人は少し驚いた表情になりつつ、何だか勝手に納得したらしい。

「まぁ、エリー殿だからそんなもんか。」

 本日のメニューは、トビ子と真鯛のカルパッチョ、鰈のムニエルと、コカトリスのテリーヌフランスパン添え、デザートは葡萄のコンポート。

 私のレシピを再現したアイン渾身の品々です。

「これは又豪勢な、本当に頂いて良いのかい?」

「どうぞ―、アンタ等来るからと思ってアインが考えたお料理だからね、私が作ったのと遜色無いと思うから安心して食べてね。」

 食べてる間に、エリーちゃんの今日のお料理コーナー!

 ‐トビ子と真鯛のカルパッチョ-

 取り合えず、レタスやスライス玉葱と言ったお野菜を切っておきましょう。

 切った野菜は、1%位の塩水に浸けて置きましょう。

 トビ子は10分程、濃い目の塩水に浸けて置きます。アクセントになるのでしょっぱいかな、と思う位が丁度良いでしょう。

 真鯛は、丁寧に三枚におろした後、銀はがしと言う技で皮を引いて剥がし、通常のお刺身にする時よりも薄く刺身に引いておきます。

 バルサミコ酢にお砂糖、塩等で味を調えた物を用意しておきましょう。

 お野菜を引いた上にお刺身を丁寧に並べて行き、上にトビ子をしっかり水切りして乗せて行きます。

 最後にバルサミコ酢のソースをかけて完成です、ソースには、ポアロージュンヌなどの葱があったら刻んで足しておくのもアクセントになって良いです。

 -鰈のムニエル-

 鰈は事前に5枚におろして置きましょう。

 皮を引いた後、軽く塩を振って寝かしておきます。

 これをするかしないかで美味しいか不味いかが決定すると言っても良いでしょう、何故ならこのお塩で絞める事で臭みを取る事が出来るからです。

 5分ほど塩で絞めたらドリップをしっかり捨て、振った表面の塩をさっと洗い流して下さい。

 ここまでしたらキッチンペーパーで水分をしっかり取っておきます。

 丁寧に水分を拭った鰈の切り身を、適当な大きさに切り、小麦粉を表面にしっかり衣にしましょう。

 フライパンにバターを溶かして万遍無く引いて、バターが焦げない内に衣をつけた鰈の切り身を乗せて焼いて行きます。刻みパセリ、塩、コショウで味付けをし、白ワインでフランベします。

 裏返して両面がきつね色になる様にしましょう。

 人参やいんげんをバターで焼いて付け合わせにすると良いかも知れません。

 付け合わせ野菜、ムニエル本体を盛りつけた後、ソース作りですね。

 白身で淡白な味の鰈のソースなので余り濃い味にならないものが良いでしょう、今回は焦しバターソースです。

 ムニエルを焼いた時のバターの残りを使い、ソースを作ります。

 少しバターを追加して今度は弱火でじっくりとバターを焦して行きます、丁寧に混ぜながらバターが焦げて色着いて来たら火を止めて、塩コショウで味を調えて完成です。

 ムニエルの仕上げとして万遍無く掛けて完成です。

 -コカトリスのテリーヌフランスパン添え-

 コカトリスが無い場合、鶏や雉でも良いと思います。w

 エシャロットをみじん切りにしましょう、それと、大蒜も適度な大きさに切っておきます。特に大蒜は潰しておくと調理の時に良い味も出るし良いと思いますよ。

 深めのフライパン、所謂ウォックパンにEXヴァージンオリーブオイルを注いで弱火で温め、香りが出て来たら、先程のエシャロットと、適量のタイムを軽く炒め、その後に鶏肉を投入し弱火でそのまま炒めましょう。

 お肉が白っぽくなった所で、ベーコンと大蒜、それと白ワインを加えて少し煮る、ワインが減って来たら、水と塩、胡椒を加えて、香り付けのローリエの葉を入れ、更に煮ます。

 水分が半分くらいになった所で、火を止めてローリエを取り出し、ゼラチンを入れ、ミンサーでミンチにします。

 丁寧にすり身に出来たら、型に流し込んで粗熱を取った後、冷蔵庫で冷やしましょう。

 後は適度な厚みに切って完成ですよ。

 ちなみにフランスパンは頑張って焼いて下さい。

 アインはこのテリーヌは前日中に作って居た訳です。

 興味がある人は作って見ましょう、毎度の事で、分量は各御家庭の食事事情も有ると思うのでお好み次第で調節して下さい。

 美味しい物が出来る事をお祈りいたします。

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 さて、お昼を美味しく頂いた後、暫く歓談をしたりしてたんだけど、今度はロッテちゃんの御実家の方へご挨拶に行く(ロッテちゃんのお母様は未だご健在)と言う事で、ドラグライダーで旅立つのを見送った後、研究に戻ろうとした瞬間、何だか知らんが又エリア内に見知らぬ者が侵入した事を告げるアラートが・・・

 今度は誰よ、もう、メンドクセーな~・・・

 監視用ナノマシンにその姿を捕らえさせて、電脳に送らせる。

 どうやら、この間の江戸の感染症騒動の時、アインやツヴァイの前に現れた本多忠勝とか言う武将のようだ。

 今度は何の用よ、あの人、ウッザ~・・・

 まぁ来ちゃうもんは仕方がねぇ、対処しようじゃ無いの。

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「御免仕る! こちらはアイン殿、ツヴァイ殿の主殿の御邸宅で御座ろうか?!」

「何しに来やがりましたかこのクソ野郎。」

 こらアイン、いくら本当の事でも言って良い場合とそうで無い場合が有るでしょうに。

「本当に何しに来たのでしょうか、このうんちお漏らし叔父様は。 と、追い打ちを掛けます。」

 こらツヴァイ、丁寧に言い直せば良いって物じゃないぞ、何だかもっとバッチく感じる程にひでぇ事言ってるぞ、面白いけど・・・

「はっはっはっは、これは手痛い、余程わしは歓迎されて居らんようであるな、だがしかし、殿よりの書状と褒美を預かって来た以上、何と言われてもおぬしらの主には目通りを願いたいのだが。」

『等とこのような事を申しておりますが如何致しますか、エリー様。』

 家の中からナノマシンで監視して居た私にアインが電脳通信を飛ばして来たので、仕方無く屋敷内に通して貰う事にした。

『しゃぁないからお通しして、丁重にね。』

『畏まりました。』

「主、エリー様よりお通しして構わないとの申しつけが有りましたので、此方へどうぞ、クソ野郎。」

 こらこら、そのクソ野郎は本多殿の呼称としてアインの中で既に確立しちゃってんのか?

 家に入って着た本多殿は、マリイを抱っこしている私を見るや、凄まじい勢いで頭を下げて来た。

「お初にお目に掛かる、拙者は徳川筆頭家老、本多忠勝と申す者、お目通りを感謝いたす。

 恵里衣殿とお見受けいたす、近隣の村で聴き込んだところ、其方こそが天女であると伺い申した、この度の一件、大変助かり申した!

 付きましては一度、我が殿にお目通り願いたく、こうして頭を下げに参った次第で御座る!

 何卒前向きにご検討願う物で御座ります。」

 長台詞有難うさん、そんな勢い良く頭下げただけで飽き足らず途中から土下座迄せんでも良いのに。

「あのぉ、御顔を上げて下さいませ、私そんな大した者じゃ無いですから。」

「滅相も御座らん、あれだけの偉業を成せる御人に対し無礼を働くなど以ての外で御座りまする。」

「あんなの大した事じゃ無いわよ、歴史上最も長く使われた事のある薬を提供しただけなんだから、私からしたら本当に大した事はして居ないの、だから頭を上げて下さい。」

「いや、しかし江戸の民を、江戸を、城のも含め間に合った物全てを助けて頂いた事は決して簡単に出来る事では御座らぬ!」

「あんたもしつこいね、いい加減頭上げろっつってんのよ、こっちは、人と会話するときゃ目を見て話せって教わんなかったか、ママからよぉ?こら。」

「ね、マスター、クソ野郎でしょう?」

 そうかも知れん・・・

「さ、左様で御座るか、では失礼して。」

 ようやく頭を上げた本多殿。

「やっと自己紹介出来るじゃ無いの、初対面なのに目を合わせて貰えない人を信用出来ないでしょう?」

「それは言われれば御尤もに御座る、失礼仕った。」

「私は、この周辺では天女とか色んな事言われてるけど全然そんな事無くって、タダのハイエルフの、エリー・ナカムラと言います。

 この子達、アインとツヴァイは、私の作ったAIアンドロイド、つまり人では有りません、まぁ人どころか生き物ですら無いけどね。」

「なんと!? それはどの様な・・・」

「この子達はねぇ、そうね、貴方達に判りやすいように言うと、からくり人形ね。」

「何と申された??からくりですと?

 この御人らが?」

「そうよ、この子達は私が手塩に掛けて作り出したからくり人形、証拠をお見せしましょう。

 アイン、右腕装甲展開、メンテナンスモード。」

「了解しました。」

 アインの右腕が、カシャッと小気味の良い音を立てて展開する。

「ほら、こんな感じよ。」

「ななな、夢でも見て居るのだろうか?」

「夢な筈ないでしょう?これで納得して貰えないとしたらもうどう言えば良いのか判んないわよ。」

「いや、十分で御座る、未だに目を疑う物では御座る、しかしこの目でしかと確認申し上げたのも確か、信じまするぞ。」

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