第239話 盗賊団の真実

        盗賊団の真実

 -MkⅢ-

 盗賊の頭目がクリスに打ち上げられ、8m程の高さにまで飛び上がって来た。

「クリス、やり過ぎだ!

 顎は完全に砕けてしまってるし、頚椎にも深刻な損傷が出てるじゃないか!

 これで落ちれば確実に死ぬぞ。」

 急ぎシルフィードを召喚し、風によって一時保護させると、頚椎を治療魔法で修復し、スパイダーのアームをホールディングシザーに取り換えると、挟むように掴んで保護した。

「ご、ごめん、ちょっと力加減を間違えた・・・」

「まぁ、お前達の気持ちは解らなくは無いけどな、あれ程の剣技とあれだけの能力を手に入れて迄盗賊やってるなんて、お前達から見たら腹に据えかねる所は少なく無いだろう。

 自力であの高みに至って居るんだから尚更だな。

 しかし、お前達の今は、その強さは確かに私に与えられた仮初の物の様な気になるかも知れないけどな、強くなりたいと言う思いがあって手に入れた事に違いは無いから気にするな。

 それよりも力をどう使うかの方が重要だと思うぞ、この頭目の様に悪い使い方をしてしまってはその力に難の勝ちも私は見いだせない、逆にお前らの様に信頼できる、悪い使い方をしないと思えたからこそお前達に与えた力なんだから誇れ、誇って良いぞ。

 私はこの頭目のような奴に力を与える事は無いからな。」

「エリー、お前に言われると少し気が楽になる、ほんっとうにコイツは、自力で身体強化のスキルまで手に入れてるんだな・・・そこには驚くよ、折角努力して身に付けたのだろうに、勿体ねぇよ。」

「これからもっと、こう言う人と出会うのかしら、自力で強く成れた人・・・」

「多分だけどな、例の、英雄とか言われてるどこぞの王子様な、あいつも自力で身体強化まで至っているみたいだぞ?だから、多くは無いけどまだ居るんだろうな。」

「そうか、今代の勇者も、そう言う事に成るのか?」

「ああ、そうだな、だからきっと、これからもそう言う奴に遭う可能性は有る、でもお前達が劣って居たり、そんな事は無い、ずるしたとか言う事も無いんだ、ちゃんと正しい使い方が出来ると思うからこそ、だからな。

 逆にお前達がその力で悪い事しようなんて考える様なら剥奪させて貰うさ、ま、そんな心配はして無いけどな。」

「すでに一部でだが英雄扱いされてる以上そんな事出来ねぇよ。」

「やったらそれはそれで面白いとは思うけどな?

 さ、そろそろ他の班も作戦終了して戻って来るだろう、撤収しようか。」

 アジトになって居た屋敷はもうすっかり更地になって居る、残ったのは抜け道の穴だけだ。

「おっとそうそう、この穴塞いどかないとな、コンクリートでも詰めとけ。」

 コンクリートを錬成して、砂と砂利、水を混ぜて穴に流し込んで、人が嵌らない様に上に潰れた屋敷の壁の木材を敷いておく事にした。

 探索者組合へと戻ると、全員戻って来ていた。

「やはりな、本命は正面突破を試みたか。」

「ああ、ちょっと強かったよ、正面突破をしようと考えても可笑しくない程にはな。」

「良いなぁ、キース、変わって貰えば良かったぜ。」

 あのな、カイエンさん、キースと盛り上がってんじゃ無いよ、ほんとバトルジャンキーか?お前ら。

 簡単に報告を済ませて、盗賊達の尋問は探索者組合に委任、私はあの貴族らしき小太りのおっさんを尋問する事にした。

 なんたって怪しさ満開だったからねぇ。

 --------

「さて、色々話して貰うわよ?」

「ふん、貴様の如き小娘に話す事等無いわ!」

「そんな事言って良いのかなぁ?

 アンタは既に拘束されて居て、私はアンタに容赦無くどうにでも出来る立場なんだけど?」

「殺すなり何なりするが良い、ワシは何もしゃべらんぞ。」

「へぇ、するとあんた自身は貴族と言う訳でも無く、足切にあって然るべき立場と言う事よね、もっと大きな組織って事か。」

「ぐ・・・ワシさえ喋らなければいいのだ! ワシさえ!」

「さて・・・と、何処迄無言を貫けるかしらね~。」

「殺せ!」

「やーだよっ、ここに二つの瓶がある、こっちは、正直に喋る事しか出来なくなるナノマシン溶剤、ンで、こっちは、SPが続く限りひたすらに傷を治して行くポーションだ。

 でもね、態度が気に入らなかった君には自白ナノマシン溶剤は使いたく無いのよね、って事で、いつまでも死ねずに苦痛を味わい続けて欲しいと思う訳、良いよね?」

「そんな脅しには屈しない!」

「脅しじゃ無いんだなぁ、これが。」

 超回復ナノマシン溶剤を無理やり飲ませる。

「さてと、準備完了。さぁどっからいたぶるか・・・なっと!」

 左わき腹にストーンバレットを撃ち込んで風穴を開ける、だがすぐに修復されて行く。

「がぁぁっ!?」

「どう?脅しなんかじゃ無いでしょう?

 私は、こわぁ~い♡ とか言っちゃうぶりっ子ちゃんと一緒にしてたら痛い目を見るわよ?

 今度はここかな?」

 左足を切り落とす。

「ぎゃぁぁっ! や、辞めろぉっ!」

「あら、どうしたのかな? もう喋る気になった?

 それとも、まだ私の事が理解出来て無いのかな?

 今度はこうしようかしら?」

 右胸を焼いて肺を破裂させる。

 当然、なじんだ超回復ナノマシンがすぐさま回復をさせる為、痛みは続いてもいつまでも死ぬ事は出来ない。

「や、辞めて下さい・・・お、お願いします。」

「素直になって来たみたい?

 詰まんないわ、もっと頑張ってよ~。」

 鼻を削いで鼻形骨をこそげ落してやる。

「がぁぁっ!

 ず・・・ずびばぜんでぢだ。 ぜんぶおばだぢじばしゅ・・・」

「エリー、代われ。」

 聞き役として連れて来ていたカイエンがここで出て来る。

「ちぇ、詰まんねーの、もっといたぶれると思ったのに。」

「ひぃっ! 頼みます!助けて下さい、全部話しますから!」

 フンッと鼻を鳴らして部屋を出る事にした私、ドヤ、良い演技だろ?

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 結果、あの貴族モドキは、大店の奴隷商人で、我々の居た大陸でもこの大陸でも無く、もう一つの大陸の中の一番大きな大国、ルージア帝国からやって来て居て、この国で拉致した女子供を自国へ連れ帰り売り飛ばして居たらしい。

 盗賊団に関しては、その為の奴隷を確保する為であり、誘拐以外の悪事に限っては、底辺の連中の小遣い稼ぎが殆どだったようだ。

 この国の女性は、いつまでも若く見える、ましてやこの国に複数の集落があるエルフは特にいつまでも若い為に、ルージアと言う帝国では奴隷として人気があるらしい。

 これは、この国を回り終えたらそっちの大陸へ行っておく必要性が有りそうだ。

 そこまで判った以上、放ってはおけない。

 場合によっては滅ぼしても良いよね?

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