第238話 盗賊危機一髪?

        盗賊危機一髪?

 -MkⅢ-

 盗賊討伐の概要は決まった事だし私の報告を最後まで終わらせねばいけないだろう。

「さて、じゃあ、カイエンの報告とその為の方針は決まった事だし、続き始めようね。」

「あ、そうですね、では再開しましょう。」

「えぇ~、大丈夫よ~?痛くしないから♡」

「そこからです?恵里衣様・・・」

「ここからやっておかないと面白く無いでしょうが、なんて言う色気の無いツッコミ入れんのよ、つまらない子ね。」

「そんな事言わないで下さいよぉ~。」

「あんたノリが悪いんだか良いんだか判んない子ねぇ・・・」

「と、兎に角再開お願いします。」

「判ったわよ、再開すりゃいいんでしょ?

 もう、しゃあなしやで?」

「はい、お願いします。」

「まぁ要するに、あのダンジョンは有害以外の何者でも無かったので、こうして潰して来ましたってぇ報告なんだけど、その詳細も聞きたいかしら?」

「はい。」

「そうか、判ったわよ。

 っとね、例えば上層部の蛇達は毒攻撃がきついのと、ボワ達大型蛇には人であっても丸呑みにされて食われる可能性もある、極めて危険であると言う事が一つ、中層には又別の危険があるわね。」

「別の危険と言うと?」

「探索者達は大半が男の子でしょう?

 そこが問題になって来るのよ。」

「例えば、どのような?」

「中層以降、人の顔を持つナーガ系の蛇、人の上半身を模した姿のリリス、最後はほぼ人と変わらないけれど蛇の尻尾を持つ上に石化の魔眼を有するゴルゴ―ンが待ち受けてると言う事よ。」

「男性が危険と言うのは?」

「その全てが女性型って事、ナーガは顔だけ見たら美女だったりするし、リリスに関しては人の上半身の部分は、全裸女性だし、私達の胸に当たる部分は毒袋となって居て、梅ちゃん、アンタのそのでっけぇ乳よりもさらにデカい。

 これに男性探索者は魅了される事間違いなし、って事。

 更にゴルゴ―ンはほぼ人と言ったけど、髪の毛が蛇になって居るのと蛇の尻尾が映えている以外は全裸女性よ。

 これ以上に危険なダンジョンは恐らくないんじゃないかしら?」

「な・・・成程・・・恵里衣様・・・私、この胸気にしてたのに・・・ぐすっ。」

「良いもん持ってんだからちょっとディスられた位でベソかいてないでとっとと報告書に纏めろっつーのどんくさい子ね、マジで。」

「す、すびばしぇん。」

「それともう一つ今回ダンジョンを一つ潰した事で判った事も報告するわね。

 どうやらこの付近にはダンジョンが多すぎるが為にあんなに強い魔物が集まって来るのだと思う。

 実際に今回ダンジョンを潰した事で周囲の魔素濃度が下がって少し魔物が弱体化したと感じました。

 今回の報告はこれで以上。」

「最後の貴重な報告ありがとうございます、ダンジョンを攻略して減らして行けばこの湖周辺の魔物が弱体化する可能性が高いと言う事ですね、これは重要な報告です。」

「何ならもう暫く居て後二つ三つ潰しとくわよ?」

「いえ、最近では、鵺等の強い魔物に触発されて強くなってきた探索者も出て来ましたので、あまり心配されないで下さい、この間も30階層まで行って無傷で戻って来られた方もいます。」

「そう、じゃあ私は玉藻ちゃんの探索に戻っても大丈夫かなぁ・・・」ブツブツ言いながら報酬受け取りカウンターへ向かう私だった。

 ---------------------

 新8号機にギミックを取り付ける為に本体の居る家に帰って来た。

「ただいま~。」

「お?どした?そろそろ旅が辛くなって交代して欲しいとか泣き言でも言いに戻って来た?」

「ンな訳無いでしょ、帰って来る度に似たようなボケしないの、いくら暇だからって。」

「そんな事無いわよ?

 アンタが齎した魔眼やスマホのお陰で私は研究詰めでむしろもっとマリイと触れ合う時間が欲しいと思ってる位なのよ、私が自重すんの辞めたからってアンタ迄自重辞めたもんだからいそがしいったらないっつーの。

 やっぱ見て体験するだけよりも実際に体験した者は発想が違うわね。」

「う、何か御免、本体・・・」

「謝るトコじゃねぇでしょう、忙しくて楽しい日々送れてるんだから、私としてはな?」

「そう言って貰えるなら、ありがとね。」

「所であんたは、ギミック取り付けに戻って来たんじゃ無いの?

 地下の格納庫使って良いからとっととつけて帰りなさいね~。」

「ちょっと待てぇっ!その前にマリイ抱かせろ~!」

 ------------

 ギミックが付けられたクリムゾンスパイダー・シザースモードをお披露目です。

 砲身は長くてちょっとアームのお邪魔になるので、180度回頭して後ろを向けてたりする。

「さて、そんじゃお披露目と行きましょうかね~。

 これが、クリムゾンスパイダー・シザースモードさっ!」

 ストレージから飛び出すスパイダー、それを見た全員の意見が、これ・・・

「カニだな・・・」

「カニだね・・・」

「テールホーンクラブだにゃ。

 美味い(うみゃい)んだよね、あれ。」

 そのテールホーンクラブってこんな姿なの??

「赤いし、そのままよねぇ~。

 ちょっとおいしそ~。」

 そうなんだ、そのまんまな姿なんだ!?

 カニと言われたAIがショックでもろ手を挙げて放心状態になった・・・

「あ、怒った?」

 怒って無いしw

「威嚇されちゃった~。」

 威嚇じゃねぇって・・・

 何かAIが可哀そうになって来たぞ?w

 あ、ガックリうなだれてる、相当悲しそうだ。

 脱力して地べたに降ろされたシザーアームに、思わずポンと手を置いた私だった。

 まぁ、気を取り直して盗賊を一網打尽にする為に、街外れの廃墟のお屋敷に行くよっ!

 ---------

 マカンヌとカイエンは、街壁の外へ繋がって居る脱出口の出口を抑えに行った。

 カレイラはオーブと共に、出口となって居る古井戸を抑えに行った。

 キースとクリスは、私の操るクリムゾンスパイダー・シザースと共に正面を抑えている。

「よし、ンじゃ配置に着いたかな?」

『『『『『『OK!』』』』』』

「んじゃ行ってみよぉっ! ミッションスタートっ!」

 アームを駆使して、二階建ての屋敷の屋根を引っぺがす。

 次にギミックチェンジして右にチェーンソー、左にバンカーパイルを付けて解体して行く。

 室内で思い思いに過ごして居た盗賊達が慌てふためいて逃げ惑う様子がモニターに映し出された。

 解体して居た屋敷の一角に、どうやら人身売買の為に捕らえられて居たと思われる子供や女性達が居る部屋を発見した私は、コントロールをAIに委託し、彼女達を助けに飛び降りた。

「貴女達、捕まってたんでしょ?」

「貴女は?」

「私は、旅のハイエルフで冒険者のエリー言います、助けに来ましたよ。」

「ありがとうございます、私は後で構いません、この子達を先に連れて行って下さい、かなり衰弱してしまって居るので、助けてあげて!」

「大丈夫、みんな一斉に連れてってあげるから。」

 シルフィードを召喚し、風魔法で全員を一度にスパイダーの上部ハッチまで運ぶと、中へと誘う。

「あの、エリー様、この魔物の様なのは何で御座いましょう・・・」

「これは私の作った魔道具で、戦ったり移動したりする為の物よ、中に医療施設もあるので全員中へ早く。」

「ありがとうございます。」

「各班傾注! たった今、人質は全て救助した、繰り返す、人質は救助!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 こうしている間にも屋敷はどんどん破壊されて居る。

 さっきメンバーから虐められた鬱憤を晴らすかのように解体に力が入るAI。

 ちなみにこのAIは、他のクリムゾンスパイダーと同じスペイドの改良型で、スペイド改と呼んでいる。

 従来のスペイドより解析速度が上がって居て、その性能はファムに迫る、そして一番の特徴が、落ち込んだりする、つまり、かなり精密な疑似人格がインプットされて居る為に感情があるのだ。

 余計な物を作ってしまった気はするが、そこは面白いので良し。

『こちらカイエン班、かなりの人数がこちらへ逃げて来ている、現在俺が無力化しマカンヌが縛り上げている。』

 うん、地獄絵図しか想像できない。

『こちらカレイラ班、オーブさんが毒手拳の麻痺毒で此方に逃げて来る盗賊を逃さず無力化しました、これで終わりかも知れません。』

 張り切るオーブの姿が目に浮かぶようです、ってか一応映像も届いてるけどな。

『こちらキース班、暇だ・・・』

『ねえエリー、アンタがあんまりにも徹底的に破壊するもんだから正面から逃げて来る奴居ないじゃない!

 暇すぎる!』

 いや、大丈夫だと思うぞ、ギリギリまで正面から脱出狙ってる一行が居るぞ、6人位だが。

「キース、クリス、油断すんな~。

 そろそろ出るぞ、6人くらい居る!

 後は任せた、私は衰弱した子達の治療に当たる。」

 ブリッジを出て急いでストレッチャーに乗せた子供達の元へ。

 生食点滴とブドウ糖点滴、ビタミン剤点滴を用意して子供達を危機的状況から救うのだ。

 さっき鑑定した子の中にはすでにSPが1割を割り込んで居る子も居たので本当に緊急を要する。

 -----------

 -キース-

 ちなみに今回、ヨルは召喚して居ない、相手は人間だしな。

 エリーから指摘が有ったので、気構える事にした。

 恐らくは、「化け物じみたデカいのが屋敷を壊して居て抜け道を逃げた連中が捕らえられて居る事に気が付いてた、ここにはカニの化け物しかいないからここが一番逃げ出しやすい。」とでも計算して居たのだろう。

 エリーの言う通り、隙を突くようにして飛び出してきた一団、その中に、貴族らしき風体の男が混じって居た。

 恐らくはこの盗賊達を雇って奴隷を集めて居たのでは無いかと思う、どこぞの木っ端貴族だろう。

 この大陸の物では無く、我々の大陸の貴族服に身を包んで居たので、ワザワザこちら迄買い付けに来た、と言うよりも様子を窺いに視察に来ていた、という所だろうか。

 良い具合に良いタイミングで襲撃したのだと思う、運が良かったかもしれない。

 貴族っぽいのと頭目っぽいのを護衛する形で先に飛び出してきた4人は、アッサリと倒せた。

 クリスが貴族っぽい奴を捕らえて、パワーボムで沈黙させたのを横目に、頭目らしき奴と対峙して居た俺だが、この男、出来る・・・かなりの強さだ。

 互いに決定打がいつまでも決まらない、俺とほぼ同等の剣の腕前を持って居ると言う事か、やり難いな・・・

 義手の出力をちょっと上げれば勝てそうだけど、それだとウッカリ殺してしまいかねないのでそれは出来ない。

 刀で戦うスタイルになってからの俺には新しい戦法として、突くと言う手段もあるので、突きを放つも、紙一重で躱されてしまった。

 もっと速く突きを出さなければ・・・

 突きの速度が上がって行く。

 それでも躱される、更に突きの速度を上げるも、又躱される。

 そんな事をやって居たら、クリスがいつの間にか頭目の懐に滑り込んで居た。

 クリスの方は片付いたようだな。

 滑り込んだクリスが、腕の力と、あの脚力を使って、逆立ちのように伸びあがって頭目の顎を真下から突き上げた・・・

 思いっきり飛んでったよねぇ・・・

 何か、これ、エリーの電脳から似た映像を見た事があったなぁ・・・

 確か、ナイフで突いて行って、樽の中の海賊か何課を飛ばす玩具・・・

 黒ひげなんちゃら言う奴を思い出した・・・あの頭目、生きててくれるかなぁ・・・

 ---------

 危機的状況は回避でき、意識を取り戻した子達が、お腹が空いたと言い始めて居る。

 肉体感覚が戻ってきた証拠だろう、良い傾向だ。

 ひと段落が付いたので、食堂を開放してやってからミッションへ戻る。

「みんなお待たせ、衰弱児たちの危機的状況は回避した。」

『『『『『『お疲れ様~。』』』』』』

「皆もお疲れ、全員捕らえたみたいね。

 じゃあ今から回収に向かう。」

『あの、さ、エリー・・・』

「ん?どうした?キース。」

『さっきな、この頭目、クリスに蹴られて高々と飛び上がっちまって、かなりの高さから落ちてよう、今クリスが治療中だけど意識戻らないんだ、何とかなる?』

「しゃあねえな、私が今行くからそこで待ってろ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る