第235話 感染症大流行
感染症大流行
MkⅣが、宇都宮に行き辛くなって、横浜を経由して浜松へと飛んで行ったその日の事。
横須賀に一隻の大型船が就航して居た。
その船には、乗って居たのだ、コレラ菌保菌者が。
コレラ菌は、実際に日本でも多くの患者を出し、多くの死者を出した厄介な感染症だ。
当然、横浜にはまだ保菌者は入って居なかったので、MKⅣはその事を全く知らない。
それから数週間。
丁度、MkⅣがエルフの里に辿り着いた頃に、それは突然、エリー本体の知る事と成った。
「大変だ! 天女様!お助け下さいませ!」
一人の漁師が飛び込んで来たのだ。
「どうしたの? 突然。」
「ああ!天女様だ! と、兎に角大変なんでさぁ!」
「落ち着いて落ち着いて、ゆっくり頭の中で整理して話してね?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・んぐ・・・すみません、取り乱しまして。」
「何があったの?」
「へぇ、うちらの獲った鯛や鮃ってぇのは、お江戸でお殿様に献上される事に成ってるんですがね、まぁ当然一般的にも売られる訳なんですが、要するにお江戸ってぇ所は、たくさん買ってくれる上客って奴なんです。」
「うん、それがどうかしたのかしら?」
「さっき江戸から帰って来た奴の話なんですが、大規模な流感が流行っちまっててかなりヤベェらしいんでさぁ。」
「そんなにヤバいの? ちょっと待ってね、ナノマシンデータリンクで検知して見るから。」
ナノマシンによるデータリンクを最大までエリアを広げる。
実際に現在苦しんでいる患者の様子を窺って見ると、マジでヤバそう、多分コレラだ。
一応、検体を取ってその場でナノマシンに検査をさせるが、予想通りと言うか、最悪な事にコレラだった。
こりゃマジでヤベェな。
「判ったわ、今、私は行く事が出来ないから、この子達に行って貰います。
アイン、ツヴァイ、ちょっと来て頂戴。」
猛ダッシュでツヴァイが畑仕事から戻って来る。
アインは洗い物を中断してエプロン姿で現れた。
「データリンクで既に知って居るわね?
これから貴方達を、カーマインファンレイで江戸に送ります。カーマインファンレイには貴方達を複製する事の出来るラボがあるわ、出来るだけ増やして、治療に当たって欲しい。
私が作る薬を転移魔法で送るから、お願いね。
症状の弱い人にはクラビットを500㎎で一日一錠五日分処方して、水分をしっかり取る様にとくれぐれも念を押して患者さんに伝えるようにして。
症状が進行している患者は、経口補水液と生理食塩水点滴を、それと、シプロフロキサシン点滴静注を400ml投与、症状の特に酷い場合シプロフロキサシン点滴は400mlを3本までは増やして大丈夫。
子供には30mlづつを3~4回に分けて1時間でゆっくりと、量は400mlを絶対に超えないように。」
詳細はデータリンクで送っておきます、支度開始。」
「「畏まりました、エリー様。」」
「あ、そうそう、アンタ達専用の急速充電ユニットをカーマインファンレイに送っておくから交代で充電したあんた達の電池も斬れないようにする事を忘れないように、共倒れが一番良くない。」
「「はい。」」
さて、カーマインファンレイを呼ばないとね。
«ルーディー、大至急うちの格納庫前にファンレイを付けて頂戴。»
«エリー殿、既に情報は得ています。
既に其方に向かって最大戦速です。»
「よし、これで準備は万全だわ。」
-----------
「それではエリー様、行って参ります。」
「うん、アインもツヴァイも、私の代わりにしっかり人助けしてらっしゃい。」
「はい、何かありましたらデータリンクで指示をお願い致します。」
アインとツヴァイを見送ると、私はそのままラボへと向かう。
さて、創成術でお薬作りまくらなきゃね~。
手始めに、クラビット錠500㎎、これを10万錠創成する。
相変わらず謎なのは、錠剤の容器が一緒に出て来る事だよな、このスキルってどういう仕組みなんだろう、今度あの阿保に説明させよう。
で、次に、生食点滴静注500mlと、シプロフロキサシン点滴静注400ml これも5万袋づつ創成する。
点滴用のチューブとか針も全部一式で創成されるんだ、これも・・・
もうこう言うもんなんだと思って深く考えない事にしよう。
点滴ハンガーラックも作っとかないとね。
おっと、経口補水液も忘れずにっと。
診察に関しては、アインとツヴァイならば、人が使うような器具を使わなくても各種センサーで一切手に取るようにチェックできるのだから問題は無いだろう。
流石は、作っといて良かった万能AIアンドロイド。
あ、トライは行かせないわよ、あいつ何するか判らんから逆にアブねぇw
完成した薬剤一式は、同じように創成した段ボール箱に分けて入れ、転移魔法の応用で転送して置く。
ファムにも指示を出し、アインとツヴァイの複製の他、輸送用の車両を50台程作らせて、転送した薬剤一式を割り振りして搭載させて置く事にする。
ファムの生産能力であればここから半島を迂回して江戸湾へ入って佃島辺りに揚陸するまでに半数は用意出来るだろう。
当面、アインとツヴァイは一体づつのツーマンセルで組ませて一台づつの車両に分乗させて地域を別けて行く手はずだ。輸送車両でもある程度の充電は出来るのでアインやツヴァイ達のバッテリーが切れる事は無いだろう。
オリジナルのアインとツヴァイは、この間魔素発電池に切り替えて居るのでずっと動けるけどな。
複製版の方もクワトロカーボンバッテリーの小型化が出来たおかげで丸一日は稼働し続けられるだろう。
ちなみに複製版は、AIを搭載して居ない。
どうやって普通に稼働させるかって言うと、アイン、ツヴァイのAIをファムにリンクさせてファムの領域内に複製し、複製をファムから遠隔で複製したAIで稼働すると言う強引な力技である。
だってさ、かなりの高性能にしたアンドロイドだからね、あの子ら。
あんなの完コピで50機づつ複製したら私の持ってる素材なんか倍在ったってたらんわ。
色々と目立たない所にバリとか在ったりすると言う、殆どプラモのノリで複製する形にしたのだ。
----------
暫くすると、アインから連絡が来る。
『エリー様、取り合えずポイント地点へ到着しました。
第一陣20チーム、揚陸開始いたします。』
「うん、よろしくね、アイン、アンタの陣頭指揮で構わないから。」
『イェス、マム。』
--------
第一陣の揚陸を開始する。
アインが、データリンクで各隊の複製アインへ指示を飛ばし、手始めに他地域へと広がらない様に外枠から埋めて行く方針を取る。
ここで、問題が発生。
『エリー様、問題発生です、感染ルートの発端エリアが横須賀港の様です、只今ナノマシンの探索で判明しました。』
『そうか、では、横須賀から南や西に行かないように注意して、あの先、南の半島の中央の山を越えると鎌倉っていう大きな街に出ちゃう、あそこには家で預かってるひろし君の御屋形様とかも居るからね、何とか横須賀付近までで食い止めるように。』
『畏まりました、早急にプランを再構築します。』
アインは、ファムに協力を求めて作戦の再構築を試みる。
『ファムより提案、個体名アインは、これ迄のプランをそのまま実行するべき、横浜及び横須賀方面には、ファンレイで移動し、現在複製中のチームに委任する案を推奨する。
但し横須賀方面へは横浜、横須賀へ各5チームづつ、計10チームに限定、搭載薬剤数を増やす事でこの10チームで補完可能と試算します。
念の為小田原へも1チーム派遣したいので11チームだけをファンレイで横浜へ揚陸させます。
11チームの揚陸を終わらせたのちに残りのチームを江戸へと揚陸を再開させます。』
『ファムの提案を承認します、優先事項として作戦Bを発動します。』
オリジナルツヴァイの持つ64コア全てをアインのそれと完全にリンクした驚異の処理速度で、ファムの演算能力とほぼ同じ速度にまで引き上げられた演算力を発揮して不測の事態の収拾をしたアインだった。
すぐさまファムは、横浜へと移動。
11チームと、此方まで来たついでに川崎方面へ展開予定だった5チームを揚陸させ、江戸へと戻って行く。
そこへ第一陣A-1隊より連絡が入る。
『目黒、重傷者多数に付き点滴が不足、輸送車オートドライブで補填を受け取りに向かわせて居ます。』
『ファム了解、間もなく揚陸ポイントへ戻る。オートで一台新規車両を向かわせ、此方へ来る車両は他チームへ転用する。』
『B-6、問題発生。
侍と対峙中。』
なんと愚かな事に、江戸城の城下へ向かったチームが、江戸の道臣達に、庶民に施す薬があるなら武士達の為に使えなどと言う意味不明な文句を付けられ、囲まれたらしい。
アイン、ツヴァイ、両本体の出番のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます