第233話  大樹

          大樹

 -MkⅣ-

 リンドウの案内で隠里へと入って来た私と玉藻だった。

「エリー様、此方へ。

 里の長にお会い下さいませ。」

 偉く低姿勢になったリンドウ。

 私がハイエルフだと言う事をちゃんと信じてくれたのだろうね。

「リンドウ、何故連れて来る、排除しろと言ったはずだ。」

「戦士長、そうは行かなくなった、ハイエルフ様だったのだ。」

「何?ハイエルフ様だと?

 何故ハイエルフ様が外からやって来るのだ?」

「失礼、戦士長さんとやら、私は、世界を旅して周って居るハイエルフの、エリー・ナカムラだ。

 突然の来訪で申し訳無いのだが、私のツレのこの妖狐、玉藻の姉妹がこちらで御厄介になって居ないか?

 妖気が感じられるのだが。」

「ああ、あやかし狐か、あれならば、森で迷って倒れて居たので開放してやって居た迄、あやかしとは言え獣であるからには、私達エルフの財産のようなものだ、易々と渡す訳には行かん。」

「ちょっとお待ちになっとおくれやす、その妖狐はわっちの姉妹、強者を求めてこの地にて散り散りに手分けをして探して居たんどす、この恵里衣様をわっちが見つけたので返して頂く訳には行きまへんですやろうか?」

「ふむ、確かにハイエルフ様の強さは解る、しかし、その者がハイエルフと胴証明出来るのだ?」

 ちょっとカチンときた。

「ふぅん、随分な自信じゃない?

 ハイエルフの証明が必要?

 良いでしょう、見せてあげるわよ。」

「何を見せて頂けるのかな?」

「貴方達、精霊を実際に見た事は?」

「その位はある、この里の中心にある大樹は、ドライアド・トレント、意思の有る樹だ。

 極稀に、ドライアド様が降臨成されるのだからな。」

「成程、じゃあ、全属性の精霊と逢わせてあげましょうか?」

「ふん、出来ると言うならやってみる事だな。

 出来ませんとか言って泣き着くんじゃないぞ?」

「その言葉、そっくり返してあげるわね、驚いてオシッコちびっても知らないわよ?」

「く・・・」

 なんだか火花バッチバチだ。

「我が呼び掛けに答えよ、精霊達。

 我は其方らの友、我が名は、エリー・ナカムラ。

 ハイエルフたる我が名の下へ、その姿を現したまえ、火の精霊、水の精霊、木の精霊、風の精霊、土の精霊、炎の精霊、氷の精霊、森の精霊、雷の精霊、大地の精霊、光と闇の精霊。

 サモン、オールエレメンツ!」

 総勢21体の、上位精霊、最上位精霊たちが姿を現した。

「なっ!?

 ぜ、全属性を召喚した・・・だと?」

「どう?これで信じてくれたかしら?」

「ししし、失礼いたしましたぁっ!」

 本当にジャンピング土下座をするところ初めて見たよね~・・・w

「しかしアンタら全員一度に出すと賑やかだわね、御免ね、帰って良いわよ。

 この頭の固いエルフのボンちゃんを納得させる為に呼んじゃったから、今度埋め合わせするからね~。」

 精霊達はプチプチ文句を言いながら帰って行った。

 トリーシアを残して。

「ん?どうしたの、トリーシア。」

『エリー様、この地のドライアドに会う為に残らせて頂きました。』

「成程、マジで居るって事ね。」

 すると、大樹の枝の一本から、光が注いで来る。

 へぇ、実体化する為に、私の作ったナノマシンを利用してるよ、こっちの方が効率が良いのをちゃんとわかった上でナノマシンに契約を持ちかけたんだろうね、すごいな。

 この付近に漂ってる木(森)精霊のナノマシンは、居心地も良いのだろう、すっかりこのドライアドと共存を果たして居る。

 驚く進化をしたと考えて良いだろう。

 研究対象としてサンプルを数体持ち帰ろう。

 実際に此処の天然ドライアドにも会ってやろうじゃ無いの。

「これはこれはハイエルフ様、ようこそお越しくださいました。

 私はこの里の長を務めて居ります、ユーフォルビアキュルレンシスと申します。」

 長老さんに挨拶されたけど、なげぇな名前、しかも大雲閣の学名みたいな名前でちょっと笑える。

「初めまして、長老さん、エリー・ナカムラと申します。

 735歳になりました、旅のハイエルフです。

 こっちのドライアドは私の従精霊のトリーシア。」

「おお、流石はハイエルフ様の従精霊、ネームドで御座いますか。」

 成程、ドライアドも基本的に名前は無いのが普通なのか。

 名前はその個体のステータスに成るから無いよりあった方が強いらしいけど、この森を守ってくれる守り神的存在の筈のドライアドにも名前つけて無いんだね~。

 何だかどっかの城の図書室にあった見聞に、ドライアドはネームドになると寄樹の呪縛から解放されて、ドライアドを生んだ樹は世界樹へと進化するとあった気がするけど、本当なんだろうか、ここのドライアドでやってみようかしら。

 ってか見聞なのか昔居たと言う大賢者の日記なのか、はたまたただの物語なのか判んない内容の本だった記憶があるけどね。

 まぁ、気になったらやって見るに限る。

 それにしてもこの森は、この大樹のお陰なのだろうか、かなりの濃度のエーテルが満ちていて凄く清々しい。

 こんな所に籠ってしまいがちになるエルフの気持ちが判らんでも無いよな。

「あ、そうそう、長老さん、これを。」

 そう言ってて渡したのは、全属性魔法大全最新改定版(ネクロノミコン)

「これは、何で御座いましょうか?」

「私が開発して進化させて来た魔法の全てが書かれた本です。

 この里の書庫に加えて、写本等してご活用下さいな。」

「ま、魔法・・・ですか?」

「そう、例えばこんな感じ。」

 そう言って、掌の上に水を出す。

「これは、我々にも使えると言う事でしょうか?」

「ええ、エルフ族は特に魔法に対しての適性が強い場合が殆どです、この本を、写本する事で魔法が使えるようになるはずです。

 適性の無い属性は読めませんので、是非、この里で魔法使いを。」

「は・・・ハイエルフ様・・・」

 ムッチャクチャ拝まれた。

 その反応もう良いからね・・・

 そして、ドライアドに会う為に大樹の根元へとやって来た。

 淡い緑の光が集まって、人型を成す。

『ようこそお越し下さいました、精霊を生み、精霊を解放せし者よ。』

「私は、ハイエルフのエリー・ナカムラ、こっちは私の従精霊のトリーシアね。

 後この子は、妖狐の玉藻ちゃん。」

『よろしくお願い致します、トリーシア様。』

 ドライアドは、トリーシアに対して深々と頭を下げた。

「時に、貴女、まだ名前が無いのよね。」

『はい、私が生まれた時には、この地を開拓されたハイエルフ様は既に他の地へと旅立った後でした。』

 ん?もしかして、エンシェントトレントって進化すると樹自体が動けなくなる代わりに精神生命体として進化してドライアドとなって分離、その後に名前を貰うと精霊として自由に動き回るようになるって事で良いのかな?あの本は見聞で間違いは無さそうだな、信憑性が増したね。

 しかも、もしかして私ってハイエルフでも無いのにエルダートレントをこうなる直前のエンシェントトレントに進化させたって事?まさかとは思うけど、私があれやったから私自身がハイエルフに進化する条件が解放されたとかそう言う事かな・・・(汗

 偶然とはいえ、やらかしてたのか・・・

 おかしいと思ったのよ、ヒューマンがエルフ飛び越えてハイエルフに進化って。

 謎は全て解けた! ってんなわきゃねぇだろ・・・

「よ、よぉし、この子に名前付けてあげないとね・・・っと。」(目が泳いでるのは秘密)

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