第232話 隠里
隠里
-MkⅣ-
今日も私は浜松であそん、もとい、色々情報を集めていた。
そこへ・・・
「もし、恵里衣さん?恵里衣さんですやろ?」
ん?どっかで聞いた事のある声だな、誰?
振り返るとそこには、MkⅢと行動を共にして居た筈の玉藻ちゃんが居た。
「あれ?玉藻ちゃんどうしたの?MkⅢと一緒に行ったんじゃ無かったっけ?」
「実は、姉妹を探して昨日から別行動しとるんどす。
なんでも皆はん用事が出来てしもたさかいにもう暫く琵琶町に滞在なさると言う事やったので、姉妹の反応を探して飛んで来ましてん。
そしたら、此方にMkⅣはんがおってはると耳にして寄ってみる事にしましてん。」
「成程、で、姉妹は何処に居るの?
私暇だし手伝ってあげようか。」
「ほんまどすか? 助かります~。
寄って見て良かったわぁ~。
えーっと、ここより東の富士樹海言う所で最後に妖力感じ取りました。」
なんと、富士樹海か。
ちなみに余談だけど、この世界の富士山、元居た世界の日本の富士山より高いんだ。
標高4,401mあるっぽい、本体情報で。
「そうかぁ~、樹海だと少し距離有るよねぇ~、まぁ私に掛かれば大した距離では無いけど。
玉藻ちゃんついて来れなくなるし、あれ出すか・・・」
「どうしはりましたん?」
「ちょっと街の外に出ようか、丁度良い乗り物がある。」
距離もそんなにバカ遠くは無いし、ヘリだよな、ここは。
ストレージに入ってるしな、実は。
街の外へ出て広く成った場所を探し、ストレージから召喚する。
「あの、何どすか?これ。」
「これは空飛ぶ魔道具だよ、さ、乗った乗った。」
後部座席を勧める。
「え?あの?と、飛ぶ?ちょ、ま、えぇぇ??」
「大丈夫大丈夫、玉藻ちゃん自信此処まで飛んで来たんでしょ?一緒一緒!」
「あ、あの、そうではなくて、え???」
後部座席に押し込んでソートベルトで固定すると、わたしもさっさと前部座席に座り、エンジンスタート。
「さぁ、しゅっぱーつ!」
飛び始めて暫くすると富士山付近へ到着、さて、裾野の辺りにヘリを降ろして、そこからは徒歩になる。
ヘリを降下させて居て気が付いたのだけど、樹海の真ん中に随分巨大な樹が一本立って居た。
世界樹?って奴かな??
にしては未だ小ぶりな気もするけど・・・
まぁ、当面目指すランドマークとしては有効だろう。
「さて、ここから先が樹海になるようだけど、方向感覚が狂うらしいから気を付けて進むよ、玉藻。
私からあんまり離れない様にしてね。」
「はい、恵里衣さん、とりあえずこの奥から妖気は感じますけど、正確な位置までは、何やここの森は変な感じがしますえ。」
「だろうね、私もなんか普通じゃない感じはしてるよ。」
-------
樹海に入ってから、かれこれ2時間・・・私や玉藻ちゃんの移動速度を持ってしても、未だに、玉藻ちゃんの姉妹にも、例のでかい樹にも辿り着く様子が無い。
これは、あれだな、方向感覚が狂う云々なんて生易しいもんじゃ無いわ、間違いなく魔法的な力で捻じ曲げられてると思う。
「時空間魔法を使った結界の一種かしらね。
だけど、私以外にこんな物が使えるってどんな奴よ?」
まぁ良いわ、レジストしたら良いんでしょう?
既にハイエルフへと昇華している私のマナを放出してやれば大概の物はレジスト出来ると思うのよ、どの程度のエリアに展開した広範囲結界だかは知らないけど、私のマナ量を舐めて貰っちゃ困るわよ、スタンピードの鎮静化でかなりレベルが上がってるから、既に100万masを超えて居るんだからね。
ってか、ハイエルフに成ってからのマナ量の上昇率はそれ迄を遥かに凌駕する状態だったんだ。
逆にHPはあんまり増えて無いんだけどね。
「んじゃ、いっちょレジストして見るとしようか。」
「レジストって、何かの結界ですやろか?」
「うん、多分ね、しかも玉藻ちゃんの姉妹の子はその結界の内側にどうやったか知らないけど居るらしい。
だから私達もその中へ入る必要性が有るんだ。」
「でも、どうやってレジストするんどす?」
「こうやるのよ。」
そう言ってマナを放出してオーラ全開状態にする。
「え、恵里衣はん、ちょっとそれ・・・」
「暫くきついかも知れないけど、この状態であの気へ向かって歩けば、あ、ほら、あそこ、景色が歪んでる、あそこだわ、行くよ。」
「は、はい。」
結界を超えたのを確認出来たので、放出を止める。
「これは、あれだわ、あの樹が張って居たようね、この結界は。」
すると、あの樹がユグドラシル?
じゃあ、この先はエルフの里?
もしくは、ハイエルフの里?
樹へ向かって歩いて行くと。
「お前、何者?」
ん?なんかこの喋り方、一時よく聞いてた気がする。
「そんな所に隠れて居ないで、出て来たら?
私は逃げも隠れもしないわよ。
それに、見ての通り、何も武器になりそうな物を携帯して居ないでしょう?
ね、怖く無いわよ?」
すると、ザッと草を搔き分けるように、1人の弓を携えたエルフと思しき少年に見える者が現れた。
「お前、何者?
自力で結界を超えて来るとは。」
「初めまして、私は旅のハイエルフ。
今回、私のツレの妖狐の姉妹がこの結界内に閉じ込められているのを察知したので入らせて頂いたの。」
「は、ハイエルフ様!?」
「そうよ、私はハイエルフ。
ハイエルフのエリー・ナカムラです。」
「さ、先程は御無礼致しました、僕は、集落の戦士で、リンドレスガイアスと申します。長いのでリンドウとお呼びください。」
リンドウが立膝を突いて頭を下げる。
「良いわよ、頭を上げなさい、それより、このツレと同じ顔をした妖狐を里へ連れて行って居ないかしら、里へ案内してくれない?」
「はい、お任せ下さい、ハイエルフ様であれば全面的に信頼に値いたします。
ではこちらへ。」
リンドウの後を着いて行く事、10分、大木の幹が見えて来た。
ここが、エルフの里か・・・
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