第226話 MkⅣの受難
MkⅣの受難
今日も、私は浜松で遊んでいたのだけど・・・
「なぁ、彼女~、良いじゃん遊ぼうぜ~?」
しつこい、こいつマジで殴ったろか? 手加減無しで。
「うっさいなぁ~もぉ~、一昨日来なさい。 私はあんた程度に靡く安い女じゃねーっつーの。」
「一昨日じゃ来れなかったから今来てるんじゃ無いかやだなぁもう~。」
コイツ馬鹿だろ?
一昨日来いってのの意味知らんのか?
マジで額面通りの返答返して来やがった、知ってて言ってんのか知らんとボケたのか判別が付かん。
「あのね、しつこいのよ! 私の前に現れるなっつってんの、判んねーかな、このタコ。」
「またまたぁ~、俺の女になるのを嫌がる女なんて居ないんだぜ? 何そんなに抗ってんの~?」
はぁ、お脳が沸いてる方のタイプだったか・・・
「馬鹿じゃねぇの? あんた自分の顔鏡で見てから声掛けて来なさい? ってか私は面食いなだけじゃ無いけどな? あんた程度の小物に対して何も言う事は無いわよ、二度と顔出さないでくれないかしら?」
「小物?? 誰に向かって言ったんだ? 今の言葉、こら、このクソ女。」
「ああ? 私の目の前に居る羽虫に言ったに決まってんだろ? 羽虫がイッチョマエに人の言葉喋ってんじゃネェよ。」
「俺を敵に回してタダで済むと思うなよ?」
「その言葉そっくり返しておくわ、私を敵に回してタダで済むと思わない事ね。」
「俺はこの浜松の代官の嫡男だぞ?」
「だからどうした? 私は一人で国を一つ滅ぼした大魔法使いだが?」
売り言葉に買い言葉だった・・・ つい、秘密だったことを言ってしまった。
「ぶひゃひゃひゃ! 国を滅ぼせるだって?寝言は寝て言ってくれよ、そこまでデカい嘘付いたって誰も信じる訳がねえだろ?」
ああ、やっぱそんな反応か。
まぁ普通は信じないわなぁ~・・・ だから嫌だったのよ、ついノリで言っちゃって失敗したわ。
面倒だな、もう。
「なぁ、お前本当に死にたいみたいだから特別に見せてやんよ? 信じて貰えないみてぇだからな。」
そう言って、掌を上に向けてその上空に炎を弾を発生させる。 所謂単純な初期魔法のファイアボールだ。
「面白れぇ手品だな、益々気に入ったぜ、お前やっぱ俺の女に成れ。」
「ヤだっつってんだろキモイんだよテメエ、マジで殺すぞ?」
ふと周囲に意識を向けて見ると、又やってるよ。 とか、あの子可愛そうに、御愁傷様。 とか・・・
何だか私に同情するような声が耳に入って来る。
こいつ、まさかテンプレの領主の馬鹿で愚かなドラ息子って奴かっ!
面倒なのに捕まったもんだな~、もう。
魔剣グラムで斬っちまおうかな・・・
まぁ私のはミスリル箔加工して無い偽グラムだけどな。
ッたく何なんだよ此奴、マジで纏わり付く感じでキモイしウゼエんだけど。
仕方無いから無視して歩き出したんだけどしつこく付いて来る。
ダリイな、撒くか。
超加速をして走り出し、そのまま建物の屋根の上に飛び上がって視界から外れ、相手の様子を観測する為に屋根を光学迷彩を使って見つからない様に移動してあのボンボンの近くへ戻る。
キョロキョロしてるね、いきなり目の前から消えたように見えた筈だからまぁそうなるわね。
次の行動に私は衝撃を覚えてしまった。
鼻をクンクンし始めたのだ・・・ まずったな、何かの亜人だったのか。
鑑定してみると、狼の亜人になってた。
人狼って奴?
仕方が無いので、強烈な玉葱の腐った匂い、要するにプロパンガスに付けて居た人工の奴を作って私の居た場所に撒いて離脱、を、4回程繰り返して、今度はその匂いを辿られない様にストレージにスプレーを仕舞う。
これで辿れなくなる筈。
そんな事やってたらもう夕方だし!
もう、仕方ねぇからあのオヤッサンの所で飲むか・・・はぁ。
「おやっさーん、来たよ~。」
「おお、来たな、えっちゃん、お前さんに教わった餃子は良く売れるぜ、お陰で儲かってるぞ。 驕りで飲んでってくれよ。」
「オヤッサンこの間もタダで良いっつって金取らないじゃん、ちゃんと金取って良いからさ~。」
「そう言う訳にゃいかねぇよ、えっちゃんにゃ脚向けて寝れねぇと思ってるんだから。」
えっちゃんと言うのはすっかり仲良くなったおやっさんの使う私のあだ名だ。
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「んじゃカンパーイ!」
すっかり上機嫌のおやっさんが何回目かの乾杯を強要して来たのでそれに応える。
私が来ると接客そっちのけで私の席に付きっ切りで飲んじゃってるんだよね、このおやっさん、いいのかなぁ・・・
そこへやって来た招かれざる客。
「クッソぉ~どこ行きやがったあのクソ女、変な臭い嗅がせやがって鼻が未だおかしいぞ。
おい親父、酒だ酒!」
と言いながら暖簾を潜ってそいつはやって来た。
マジか!何で来るのよあいつ!
「あれ? 何だお前、こんな所に居たのか!」
「はぁ、まさかここに来るとか、無いわ~。」
「やっぱお前とは縁が有りそうだな!」
「二度と来れないじゃねぇかよ! マジウッザ!」
「何だ、えっちゃん、知りあいか?」
「とんだナンパ野郎よ、しつこくてウザいから逃げて来たのよ、今日。」
「照れなくて良いぞ! 俺の女になれるからって!」
「こいつマジで殺していい?おやっさん・・・」
「殺すのはまずく無いかな、ここの代官の息子だしなァ・・・」
この勘違い馬鹿を何とかしてくれ、誰でも良いから・・・
「ほんと照れ屋だな、お前。」
「照れてる訳じゃねぇって! ホントマジで止めてくれない? ガチでウザいんだけど!」
「またまたそんな事言っちゃって~。」
こいつ、吉本新喜劇でこれに近いギャグをする奴が居た筈だけどそのギャグ位メンドクセェ!
「もう良いわ、私は帰るよ、今日は・・・」
「何、帰るのか? もう宵の口だ、女性の一人歩きは危ないから送って行こう。」
「いや要らねーから。」
「ダメだぞ、傷付いたりしたら俺が自分を許せない。」
変な所で紳士的だな、こいつ、何なのいったい。
でもこんなアホでも一応二本差しなんだよな・・・
「心配には及びません、アンタより強いし、それに歩いて帰ったりしないから、うち遠いからね?」
「何だと、この街の者では無いのか?」
「いつ私がここに住んでるとか言った?住んでねぇからな?」
「ならば尚更送ってやる、早馬で良いか?」
「馬なんかで行ける距離じゃねぇし! ホントウザいだけだから、ほっといてくれたら良いからな?
おやっさんからもなんか言ってよこいつもう~!」
「ははは、まぁ送って貰っときな、何処まで帰るか知らんけどよ。」
「おやっさん迄そんな事言う訳?」
「まぁ、こんなでも一応代官の息子、剣術位は出来るし、送らせたら良いんじゃないか?」
「こら、不敬だぞ?こんなでもって何だよ。」
「はぁ、メンドクセェ・・・」
勝手にスタスタ歩く私を小走り気味に追いかけて来る。
しつけぇわ~。
港に着いた。
「そうか、船で来たのか、お主。」
「違うって、船じゃ着くの明日の朝になっちゃうよ。」
ストレージからスカーレットグリフォンを召喚し、乗り込む。
「そんじゃ。」
しゅたっと手を上げてスカーレットグリフォンで海上を走り出す。
呆然としてみている代官の息子、あ、そう言えば名前聞いて無いな、聞く気も無かったけど。
そして離水し飛び上がるとその驚きは最高潮になった様子。
「て・・・天女であったか・・・」
そんな事を口走って居るのをナノマシンが伝えて来た。
どうだ、お前ごときには高根の花だと理解したか。
あのあっけに取られた顔を見れたので少し満足した私はそのまま帰路に着いたのだった。
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