第227話 現地調査1
現地調査1
-MkⅢ-
昨日の今日で探索者組合に呼び出された私は、受付嬢の登美子ちゃんに食って掛かって居た。
「何で私が単独でそんなダンジョンの調査に行かなきゃならんのよ。」
「そこは本当に申し訳ないと思うのですが、ナーガを単独で倒せるような人は他に居ないので。」
「あのねぇ、あのナーガだってこんな所まで出張って来るって事はアレ一体じゃ無いって事の証明なんでしょう?
いくら私だって同時にそんなモンが3体も4体も出て来られたら対処のしようも無いでしょうに。
私単身でって言う選択肢はどっから出て来たのよ全く!」
「はぁ、そう申されましても恵里衣さんを指名としかなって居ないので。」
「あんたじゃ埒がアカン、支部長呼んで来いよ。」
「あ、エリーどうしたの?」
「おお、クリスか、こいつ話に成らなくてさー。」
ここまでの経緯をクリスに話すと、クリスが乗って来た。
「私、一緒に行こうか? あ、オーブとカレイラも一緒にね。」
「あれ?キースとカイエンにマカンヌは?」
「カイエンさんとマカンヌさんは今日は夫婦でデートだって、キースは、昨日の盗賊の中に知り合いが居たもんだからそれで個人的な用事が出来ちゃったのよ。」
「成程な、それでこんな女子会みたいになってんのか。」
「師匠、アタイを連れて行くにゃ!」
「エリーさん、私も暇だから行きますよ。」
「うん、オーブは良い実戦経験だろうな、属性エンチャントが出来るカレイラは有効だと思う。
クリスは多分、居てくれるだけで安心感が違うと思うよ、今回ナーガの出現が確認されたダンジョンの調査だからな。」
「にゃにゃ!? 蛇にゃ??」
「そうだぞ?どうした?」
「にがてにゃぁ~・・・」
「行くっつったんだから来いよ、お前。」
「うう、判ったにゃ・・・」
「そんないやそうにすんな、お前の身になると思うから来いって言ってんの、絶対いい特訓になる。」
そんな会話の合間に支部長が奥から出て来た。
「すみませんな、恵里衣殿、この度は本当に世話になりました。」
「なぁ、私に単独で行けって依頼なの?」
「いやいや、そんな事は有りません、いくら恵里衣殿でも単独では危険かと。」
「そうでしょう?なのにこの子は私に単独で行けと言うのよ、こいつら連れて行くわね。」
「女性だけですか? 男性の方は?」
「あ?そんなの要らないわよ?」
「え?御冗談を。」
「冗談でそんな事言わないわよ、拳聖のオーブ、その拳聖に楽勝した格闘聖女、こっちは勇者の娘で魔法剣の第一人者、で、私は賢者で居合切りの達人だけど。」
「成程、恵里衣殿のお墨付きなら問題は無いでしょう、では、パーティー名は如何しますか?」
「そんなの恵里衣とゆかいな仲間達で良いわよ。」
「ちょ!エリーそれは!」
クリスが私のネーミングセンスに物言いをつけようとするも、それで登録されてしまう。
「はぁ、せめてかっこいい名前つけて欲しかったですよ~・・・」
何だかがっくり肩を落としているカレイラ。
「例えばどんなのよ。」
とりあえず聞いて見ると、
「たとえば・・・暁の戦姫、とか?」
なんとも中二病丸出しみたいなネーミングセンスを披露してくれましたw
「まぁ、良いじゃない、今回だけのチームなんだし♡」
とかさらっと流してあげる事にした。
組合の建物を出ると、6人組の男ばかりの探索者のパーティーが待ち構えていた。
「なぁ、アンタ等昨日のナーガの調査に行くんだろ?
悪い事は言わねぇから俺達と一緒に行こうぜ?
女の子ばっかりであんな危ない所に行ったらだめだよ。」
テンプレナンパ野郎だね。
「ああ、そう言うの間に合ってるんで。」
「おい、待てよ、マジであぶねーから言ってるんだぜ?」
「ふぅん?私達の一番弱いオーブ一人であんた達全員で掛かっても勝てないと思うけど?」
「ッンだとぉっ!?」
「オーブ、ちょっと捻ってらっしゃい、これも修行よ。」
「任せるにゃ~、拳聖は伊達じゃにゃいにゃ~。」
何故かどっかのアニメ映画作品に出て来るチリ毛のおっさんみたいなセリフ吐いてるけどな。
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街の外に出て5分後・・・
オーブが得意げに「この位は楽勝にゃ、一昨日来るにゃ~。」
とか言ってます。
今回オーブに一任した本当の理由は、当然だけど一番手加減が利くからだよ。
カレイラでもクリスでも、ちょっとムカついたりしてしまうと規格外の身体強化の発動で死んじゃうかもしれないでしょう、相手・・・
私じゃ礫すらも貫通しそうだしな。
「どう?アンタたち要らないでしょう?そんじゃね~。」
と、その場を離れようとするも、街から出てすぐの所でこんな乱闘してたもんだから警備の人が集まって来てたのね。
「凄いな、アンタ強いね~。」
「ここで働かないか?」
等とオーブちゃん警備兵に大人気。
「お兄さん方、悪いんだけどこれから調査依頼に行かなきゃいけないので、又後でね。」
そう言ってオーブから引きはがすと、早速出発。
ダンジョンは思ったより近くにあった。
「ここで良いんだよね?予想してたより近くて肩透かし食ったわよ?」
「組合発行の地図では間違いなく此処ですね。」
「まぁ、入って見たら判るか。」
「そうね、エリーが居れば大概何があっても大丈夫だし。」
「クリス、そう言うフラグを立てるな。」
「じゃあ早速行くにゃ~。」
先陣を切ってダンジョンへ入って行くオーブ。
良いねぇ、やる気満々じゃ無いか。
オーブが胸を張ってあまりにも得意そうに先陣を切るものだから、つい揶揄いたくなった私は、そっとクリス達に手で合図し、暫くほったらかして入らないで居た。
「にゃぁぁぁぁぁ!!!! 酷いにゃぁぁぁ~! 誰もこにゃいにゃぁぁぁ!!!」
という声がダンジョン内から響いて来て次の瞬間。
「にゃ!?? ちょ、ちょっと待つにゃ!
ぐぅ・・・っ師匠たしけてぇ~・・・」
悲痛な叫びに変ってしまったので慌てて飛び込む。
すると其処には、3匹のニシキヘビ級のスネーク達に雁字搦めになっているオーブが居た。
私が一体をストーンバレットで打ち抜き、カレイラが風魔法で一体を切り裂き、最後の一体はクリスの左ジャブ一発で吹き飛んだ。
「ふう・・・もう少しで変な趣味に目覚める所だったにゃ。」
「んじゃもう少しほうって置いた方が良かったかもな?
マカンヌが丁度良い相手が出来て泣いて喜びそうだな?」
「ひぃっ! 冗談にゃ、勘弁してにゃぁ~。」
「冗談言える余裕があるなら良いんじゃない?」
「さっさ、とっとと行こう。」
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