第220話 ジ・アース、新たなる力

        ジ・アース、新たなる力

 -キース-

「さて、今日はエリーが急用で外している。

 だが、俺達はハッキリ言って暇だ。

 何故なら、探索者組合側の前回の依頼に対する本部の精査が入ってしまったらしい。

 俺達への報奨金や素材の買取額の計算も出来ない状況になって居る、まぁ、本部の方から来てくれたので、冒険者ギルドからの親書はその監査官に託け出来たので、本部まで出向く必要が無くなったのは良かったけどな。

 それで、だ、暇ついでで、軽い依頼を熟して、エリーが打ってくれた刀の試し切りがしたいなぁなんて思ってるんだけど、どうです?カイエンさん。」

「そうだな、キースにしてはヤケに説明的な長台詞だったが、たまには良いだろ。

 俺も、修繕して貰ったこのショートソードを振って見たいと思ってた所だ。」

 そう言って腰の剣の柄を軽くポンポンと叩くカイエン。

 女性陣も、オーブ、玉藻さん含めて満場一致で何かしたいと言うので、何か手頃な依頼は無いかと見ていると。

「あ、あんた、シーマで冒険者やってたキースだろ?」

「ん?誰だ? 俺にはあまり覚えが無いんだが。」

「ああ、そうだろうな、以前にアンタに絡んでけちょんけちょんにやられた冒険者崩れだからな、今は改心して此処で探索者やってるんだ。」

「そうか、まぁ以前は俺も手が出るの早かったからなぁ、すまんかった。」

「いや、そんな謝らないでくれ、君のお陰で今じゃ此処では割と実力ある方に成れたんだぜ?」

「そうなんだ、で、何でこんな所に来たんだ?」

「はは、実はよ、俺の母親がこっちの出身だったんでね、親父が死んで、実家のあるコッチに帰りたいって言うんで連れ帰って来たんだ。

 その母親も去年、大病して往っちまった、でも、何だかこっちでの生活が気に入って、こっちにそのまま移住しちまったってだけだよ。」

 そうなんだ、よく覚えてねぇな、勿論名前も思い出せねぇしな。

「そうか、元気にやってるんなら、良いんじゃねぇか?こっちでやって行くなら、頑張れよ?

 俺はもう少し、この大陸を旅して周ってから、帰るつもりだ。」

「そうか、お互い頑張ろうぜ、あ、そうそう、組合からお前の噂聞いてる。

 すげぇよ、大したもんだ。」

「何言ってんだよ、お前の方がすげーと思うぜ?

 あんな強い魔物が跋扈してる地域で探索者してるんだろ?

 気を付けてな、ンじゃ又な。」

 他愛もない会話をして、一枚の依頼書を剥がして帰って来たが、未だに誰だか思い出せねぇ、マジで誰だっけ?

「ねぇ、キース、あんた、良くあんなのと話してるよね?」

 クリスは憶えて居る様だったが、誰だ?

「思い出せねぇんだ、誰だっけ?あれ。」

「あのねぇ、私達がザインと出会ってパーティー組み始めたばっかりの頃に受けた護衛任務、覚えて無いの?」

「いや、あれなら覚えてるぞ、未だEランクだった俺達の上のDランクだった冒険者が一緒に受けた護衛任務だよな?」

「なら、覚えてるでしょう?」

「まさか! あの時の?」

「そう、護衛任務とか言って同行しておいて盗賊とグルだった、あいつじゃん!」

「そうか、あのDランクの、名前は確か、ギュンダー。」

「そうよ、私とザインを盗賊達に売ってあんたを殺す気だったあいつ!」

「そうか、そう言う事か、多分母親の実家と言うくだりは嘘だったんだろうな、脱走でもして逃げて来たんじゃねぇのかな。

 でも、心の底から改心したと言った感じの話っぷりだったから、もうやらないだろ、あんな事は。」

「だと良いけどね~。

 で、話変わるけど、良い依頼あったの?」

「ああ、これとかどうかな?」

 俺が適当に取ってきた依頼書は、ジャイアントウルフの群れの討伐だった。

「うん、良いんじゃない?丁度良さそう。」

「よし、じゃあ、行こうか。」

 そのまま俺達は、奴の事を忘れて討伐依頼の受諾申請を出して、討伐に出発したのだった。

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「凄いです!この剣、軽いだけじゃない、魔法の乗りがすっごく良い!」

 カレイラが感激している。

「うん、研ぎ直されて切れ味も増して居るし、ガタ付きが無くなった、もう暫くこのまま使えそうだ。」

 カイエンも納得して居るようだ。

「私の忍刀も良い感じよ~、火遁・炎刃もとってもしっくり乗るわぁ~。」

 何故かマカンヌさんまで、新しい武器になってからというもの、刀に何故か魔法を、もとい忍術を乗せて魔法剣の様にして戦って居る。

 オーブはと言うと、以前よりも素早くパワフルな攻撃が出来るようになって居るようだ。

 正拳突き一発でジャイアントウルフが吹っ飛んで行ってダウンしたのには驚かされた。

 玉藻さんの妖術とか言う魔法みたいなのにも驚くけどな。

 問題は、クリスなんだが・・・いくらあいつが身体強化の怪力があるっつってもなぁ、あれはネェだろ?

 何でもバトルスーツとか言うのを貰ってたけど、そいつの効果なのか?

 5m位の全長のジャイアントウルフを、どうやったら片手で投げ飛ばせるっつーんだよ・・・

 肘うち一発でノックアウトしてたし、在り得ねぇだろ、その威力!

 俺よりすでにつえーかも知れない、怒らすのは辞めよう。

 で、だ、ヨルムンガンドもなんだか角突きの鉢金貰って装備してあるけど、突進しての攻撃が今までの1.5倍以上には威力が上がって居るように感じる。

 俺の長刀も、扱いは難しいが、威力は申し分ねぇ。

 エリーに教えられた戦い方で、本当に一撃で真っ二つに出来る。

 実に、この依頼エリアに着いてから僅か1時間足らずで、40頭以上の群れを片付けてしまった。

 以前の装備ではここまでは不可能だと思う。

「カレイラ、ダメじゃない、怪我したらすぐ私の所に来ないと!」

 カレイラが怪我したのか、クリスに叱られている。

「でも、クリスさん忙しそうだったから。」

「何言ってんの、私の本業はヒーラーなんだから気にしないの!」

 どうやらカレイラは、左腕を引っ掻かれて小手を破壊されたようだ。

 左上腕の傷が痛々しい。

 しかし、クリスが呪文を唱えて間もなく、傷がすっかり消える。

 やっぱスゲーな、魔法。

 カレイラも、エンチャント魔法だけではなく、一応の攻撃魔法は使えるようだけど、効率が良いからとエンチャントに徹して居るようだ。

 こいつ等となら、本気でS級目指せる気がしてくる。

 それにしたってエリーには脚向けて寝れねぇな、俺の新しい戦い方、最高だぜ、ヨルに指示しながら戦えるってのはこう言う事なんだな、納得だった。

 ジャイアントウルフを解体して居ると、突然、どこかからか矢が降って来た。

 それをヨルがブレスで一瞬に焼き尽くして落とす。

「何者だ!?」

「クククク、お疲れさまでした、キース君。

 流石のお前らでもジャイアントウルフと連戦した後に我々の攻撃はきついだろう。

 野郎共、男は殺せ!女は捕らえろ!」

 ギュンターだった。

「テメェ!未だ懲りて無かったのか!」

「ほぉ、やっと思い出したのか、しかし遅かったな!」

「ふん、それはどうかな? ヨル、やっちゃって良いぞ。」

「ギャギャ~!」

「何だそいつは!?」

「俺の相棒さ。」

 ヨルの突進で一網打尽になる、盗賊達。

 そして、俺と対峙して居るギュンターを、背後からクリスがホールドし、ジャーマンスープレクス。

 今回クリスは、オーブの時のような手加減はしなかった。

 が、たまたま腐葉土で柔らかく成って居た地面に頭をめり込ませて、ダイノジになって痙攣している。

 街の外に不可視化して停車してあったスパイダーを呼び、この盗賊共を、捕獲用の檻を作ってあったので、全員詰め込んで、帰る事にした。

 最近、クリスが本気で怖い。

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