第198話 宇都宮の危機
宇都宮の危機
それは、突然の出来事だった。
実は宇都宮が賑わった街である理由は、ここには初心者探索者から、上級探索者迄が潜れるダンジョンが有ったからである。
そのダンジョンが今、成長期に入って居た。
ただでさえが上級者までと限定が解除されているダンジョン、つまりはかなりの深度が有る事に成る。
既に270年と言う年月を掛けて育ったダンジョンと言われており、その最深部は恐らく170階層迄存在すると言われて居る。
っそのダンジョンが、成長期に入った、つまり、更なる強い魔物が生まれ、その魔物によって一時的に、それまで最強だった魔物達が一度、上層へと追いやられる事に成る。
その後、最上級の魔物によって新たな階層が構築されて、ようやく落ち着くのだ。
つまり、一時的に追いやられた魔物が溢れ、スタンピードが発生するのだ。
しかも、今回、成長期と言った通り、一挙に30階層分の、新たな強者が生まれたのだ。
どうなるかって?
そりゃ決まっている。30階層分の様々な強者が深層階層を占拠してしまう為、深層階層の魔物が中層階層に逃げ出して溢れ、中層階の魔物は上層階へ、上層階の魔物が全て溢れる。
しかも、中層階の魔物は、特に冒険者を食ってしまうような物も少なくは無い為、上層階へと入って居たが、そこに居る魔物を見て逃げ出した低レベル探索者を食おうと追い回して此奴ら迄が外へ出て来る。
一寸した災害レベルのスタンピードになって居た。
そこへ、今日も遊びにやって来た、この街の英雄となり得る天女、餃子の女神たるMkⅣだった。
本人はそんな風に呼ばれて居るのは未だ知らない。
-MkⅣ-
ん?何か騒がしいわね・・・
「おお、めが・・・じゃ無くて嬢ちゃん! 今はヤベェから帰ってくれ!」
何か言い直す前の呼び方が少しきな臭いのですが?
「何かあったの?」
「街の裏門の外に、この街は、ダンジョンを抱えてるんだが、突然そいつから大量の魔物が溢れ出したんだ、スタンピードって奴だ、悪い事は言わない、逃げた方が良い。」
「尚更逃げられないじゃない、私が手助けしてあげるよ、任せて!」
一気にトップスピード迄加速して裏門へ。
すると、そこは既に溢れた魔物が雪崩れ込み始めていた。
折角だ、MkⅢに貰ったこの剣で退治して周るか。
「退いて~! 危ないわよ~!」
勢いよく飛び込むと、三体のゴブリンチャンプに囲まれて居る人の前に滑り込み、剣を横薙ぎにすると、上半身と下半身が切り離されたゴブリンチャンプ達が一瞬で光となって消える。
うん、ダンジョンの魔物ってこうなんだよ、通常の地上に居るのとは少し違うって言うか、これってコピーなんじゃ無いだろうか?
そしてその場に残されるゴブリンの魔石、魔石だけはどうも本物のゴブリンのと同じ物だ。
まぁこっちも本物ではあるのだろう。
そのまま走りながら、コボルトやオークを一閃して切り伏せつつ、落ちる討伐証明部位と、肉等のドロップアイテムをストレージで回収しまくって、制圧されつつある裏門の守衛所までたどり着く。
そこでは、あの慇懃無礼だったかまってちゃん野郎の結城晋三郎道隆が、個軍奮闘していた。
ふぅん、割と強いのかもね、アイツ。
まぁ転生者らしいからな、それなりにスキルとかは有るのだろう。
しかしオーガが振り下ろした大鎌を受けたまま、力が拮抗してしまったらしく動けなくなって居たので助っ人してやることにした。
サブちゃんの脇を抜きつつ、オーガの腕を切り落として、そのまま走り込みつつ片っ端から真っ二つにしながら突き進む。
「お!? おぉぉ!エリー殿!かたじけない~!」
何か後ろで叫んでるけど気にせず突っ込む。
虫の息の探索者達に、片っ端からエクスポーションを割れやすい風船みたいな容器に入れたものを投げつけてやりつつ、5体以上のオークコマンダーにタコ殴りにされつつもまだ倒れずに頑張って居る重鎧の大盾持ちを発見、一気に豚野郎共を切りつけて、かなり変形してしまって居る兜の中の顔を覗き込んだ。
「あんた、大丈夫??」
「あ・・・ああ、何とか生きてる、だが、鎧が変形して、動けん、息も真面に出来ない・・・たす・・・けて・・・」
死んだ訳ではなく、意識を手放したようだった。
身体能力を最大までアップした私は、鎧の隙間に指を突っ込んでは、引き伸ばして脱がしてやる。
かなりのダメージを受けて居るようで、肋骨もほぼ全て折れ、一部が肺に刺さっている。
これは、まずいね・・・ネクロノミコン、読ませて貰っとくんだったかな・・・
そんな時に、突然、本体の声が頭の中に直接響く。
「もう、MkⅢの好意を無にして困ってたら世話無いじゃ無いの、仕方無いから、ストレージに光と闇の魔導書入れといたから、読みなさい、あんたも医療知識は有るし魔法回路までは有るんだから原理だけ読めば使えるっしょ、関わっちゃったなら最後まで何とかしてやんなさいよ。」
急いでストレージから魔導書を出し、読んだ。
私もエリーだから速読位出来るんですよーだ、誰よ脳筋エリーとか思ってたのは?
それにしても、本体、又私を隠れて見てたのね、ナノマシンこの辺にも飛んでるのか・・・
でも、感謝だわね。
これで周囲の一層も出来るし、医療魔法が使える筈。
先ずは周囲の魔物を・・・ホーリー・レイ・・・
で、つぎは、っと。
診察・・・
かなり酷いね、良く死なないで居てくれた・・・
肋骨各部 接合、肺胞及び気胸 縫合、各骨折部位 接合・・・
各筋肉断裂部位 接合。
ハイ次!
あっちゃ~、これはアカンなぁ~、首の骨折れとるやないの~・・・
頸椎骨折箇所接合。
気道確保、 肺胞内出血箇所縫合、肺胞内血液除去。
っし、完了!次!!
こいつ軽傷、後!次!
こいつも手足の骨折だけ、後!
次ぃ~!
アラ痛そう!内臓出ちゃってるじゃん。
んじゃこうやって詰め込んでっと、腹膜縫合、患部接合、内臓外壁裂傷箇所修復。
次ぃっ!
切開、盲腸切除、患部縫合、腹膜縫合、外皮縫合!
次っ!
骨盤複雑骨折再成型、接合、左足欠損再生術、骨及び神経系再生、筋肉再生、外皮再生、左膝関節部位再生、左下足部位骨再生、筋肉再生、外皮再生・・・
ふう、何か一人変なの混じってた気がするけどとりあえず重症者はこれで全員だろ、後はポーションでも飲ませとこう。
さて、次はこの門の外だな。
閉ざされた門の門柱に飛び乗り、乗り超えようとする魔物をホーリーレイで叩き落として行く。
「く、キリが無いわね~。」
こうなったら、疑似ブラックホールでもぶち込んでやろうか・・・
ん?
いや、強ちそれは悪い手じゃ無いかも知れない。
何故なら、もうこの先には冒険者は居ないと思われる、何でかって、本体が又手助けしてくれてるらしくて、この先の生体反応は全て魔物の反応で人や亜人の反応は無いと理解出来てしまったのだ。
ならばやってやろうじゃ無いの、疑似ブラックホールは全てを飲み込んだ後も成長続けちゃうから終わったら自分で中和しなきゃいけないんだけど、まぁ私のマナ保有量なら中和も何とかなるっしょ。
早速疑似ブラックホールを空中に形成、ダンジョンの入口へ向けて発射。ダンジョンから溢れている魔物も全てのみ込んで少しづつ成長する疑似ブラックホール。
うん、予想よりも成長早いな、ヤバいかも・・・
一気に魔物の群れをせん滅できたのは良いんだけど、くそう!中和が間に合わない成長速度に成っちゃったかも!
やばいやばいやばいやばい!!!!
「何やってんのよMkⅣ~、なんか変な魔素の流れがあったから気になって戻ってくれば、あんた何してんの? アホの子じゃん?」
いつの間にか、イオンクラフトで空中浮遊するMkⅢが居た。
「MkⅢ~・・・ヒック、あじがちょ~・・・うえぇぇ~~。」
「ほら、泣いてネェでとっとと中和するよ?」
「う、うん・・・」
MkⅢと一緒に中和する事に成った、持つべきはやはり自分自身の並列存在だよね~、誰より一番信用出来る。
こうして、スタンピードは終息した。
「ほら、やっぱ読んどけっつったのに。
本体から光と闇だけ貰ったのね、やっぱこれ読んどけ。」
「うん、そうするわ・・・」
一気に読んで返す。
「読んだ、サンキュ。」
「んじゃ私は行くよ、又な~。」
颯爽と去って行ったMkⅢ、やっぱ研究詰めだった私より、実践積んでただけあって頼りになるわ、本当に今回は助かった。
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