第196話 海龍王の提案

         海龍王の提案

「さ、ンじゃ一丁やりますか。」

「今更騒いでもしゃぁねぇしな。」

「うん、まさにそれな。」

「「っしゃ!やったるか!」」

 家の裏庭に当たる、海側の崖の上にMkⅢとMkⅣが並び立つ。

 目下を猫が逃げて来る。

 そして、眼前には、重力を無視するかの如く巨大な、上り龍さながらのドラゴン。

 うん、リュウグウノツカイみてぇに見えるんだよね、これ。

 そして、龍は、武装したエリー二人を確認して、吠えた。

 流石にうるせえ。

 果敢にも龍に蹴りを入れようと飛び蹴り体制で突撃したトライが、龍の作り出したと思しき水の壁に阻まれ、ぺちっと言う音がしそうにあっさりと叩き落とされた。

「ふえぇぇぇ~~~~、無理れしゅぅ~~!」

 だろうな・・・此処までとは思って無かった。

 MkⅢがイオンクラフトで飛び上がり、MkⅣは身体強化を最大で発動し、剣を抜きながら崖を掛け降りる。

『待て、人の子らよ。』

「MkⅢ~!何か喋った~!」

「気にすんな~!自分の仕事すれ~!」

「そうする~!」

 MkⅣが海龍の腹目掛けてダイブ、水壁をも切り裂いて、その刃は海龍へと届く。

 が、いかんせん海龍がデカすぎる、この程度切った所で、人に例えたら絆創膏はっときゃいい程度でしかない、しかも、超回復スキルもあるらしく、まるでダメージが通った気がしない。

 そこへ、MkⅢが雷極大魔法を発動。

「雷よ集え! 我が眼前に立ちはだかる者に鉄槌を! イン・ドラ!」

 20本以上の雷が収束したものが、海龍へと落ちる。

 流石にこれは効いたようではあったが、海龍は尚も続けた。

『我が声を聴くが良い!人の子らよ!』

「ん?何だ??」

 ようやく、翻訳のスキルが龍の言語を解析した様だった。

『お主、先程の雷は中々効いたぞ。

 お陰で首のコリがとれたわ。

 まぁ聞くが良い、人の子よ。』

「私達を害する為に出て来た訳じゃ無さそうね。」

『おお、やはりお主は我の言葉を理解する者であるようだな。』

 と、そこへ、カーマインファンレイからのミサイル群が到着してしまった。

「おっとこれはいけない。」

 MkⅢは、礼儀も大事だと言う考えから、そのミサイルを一手に引き受けて、ファイアボール・ブルーローズの連続詠唱で迎撃した。

『はっはっは、我にはあの程度は効かぬから良いと言うのに、律儀な事よ。』

「そうは行かないでしょう? お話をしに来たと言うなら貴方は客であって敵じゃ無い、だとしたら、これは不敬だからね、私には貴方を守る義理が発生する。」

『ほう、益々面白い、お主らに決めて正解であったな。』

「どゆ事?」

『魔王がな、復活するのだ。』

「魔王って・・・私等の本体の事では無くって?」

『魔王の称号を持ってるのか?』

「うん、そりゃもう、ガッツリと・・・」

『なんと! お主らが我の敵なのか?』

「それがねぇ、そうとも言い切れないと言うか、何と言うか・・・英雄の称号と聖女の称号も持ってるんだよね、どうしてこうも相反する称号が片っ端から付いたのか知らんけど・・・」

『そ、そうなのか・・・どうなのだろうな、それは。』

「でしょう? しかも、大賢者だと、笑っちゃうよね?

 ただ、魔王と言う漠然とした存在では無く、明らかにこの世界に悪意を持って居る者が居るのだとしたら、私は喜んで対峙する積りだけどね。」

『うむ、やはりお主らの元へ来て正解であったようだ。

 我ら龍族との共闘を頼みたい。

 人族の中でも恐らく最強であろうお主らにしか頼めぬ事だ。』

「あれ?勇者はどした??」

『あの程度ではお主らの足元にも及ばぬ。』

 よっわ! 今代の勇者、よっわ!

 カイエンの現役時代のがずっと強かったんじゃねぇか?

「で? 私達にどうしろと?」

 いつの間にか本体が出て来ている。

「ぷ、っ本体、その恰好・・・」

「煩いね、バリアーの電池になりに行ってたんだから着るでしょうが、プラグスーツ。」

「そうだけどさ、着替えてから出てくりゃ良いのに。」

「まぁ良いだろう?これはこれである意味コスプレみたいで良いと私は思うぞ?」

『お主がオリジナルか。』

「うん、そうだよ、ちなみにあんたは、リバイアサンで良いのかな?」

『ああ、人からはそのように呼ばれて居るようだ。』

「そうか、やっぱそうだったか。

 所でな、私の魔法で呼び出してやるから、大津波を起こして帰って良いと言ったら召喚に応じてくれる?」

『ほう、面白いが、どう言った魔法を使うのだ?』

「まぁ要するに、あんたの居る場所が判る様に常にビーコンを身に付けていて貰ってだね、そのすぐ目前に転移ゲートを開いてあげるから顔を出して強力な攻撃をしてくれたら良いって事だ、何ならブレス一発で帰ってくれても構わない。」

『はっはっはっは! 面白い発想をするの、お主!

 しかし、転移魔法とは恐れ入った、そもそも魔法自体が眉唾であったのだがな。』

「まぁね、魔法は私が生み出したのよ、全て、ね。」

『我にも使えるのか?その魔法と言うのは。』

「使えるけど、あんたは既にブレスを使ってるでしょう?アレと同じ物よ、魔法って。」

『どう言う事なのだ?』

「つまり、体内に取り込んだ魔素は、マナに変換されて私達の意思を具現化する事が出来るようになってる。

 そのマナを体外に放出する為の回路が有れば、魔法と言う形で具現化する事が出来るのよ。

 その回路が普通の人には存在して居ないからこそ、身体能力の強化とかって形でしか発言しなかったんだけど、大概にマナを放出する為の回路さえあれば、魔法として具現化する事が出来ると言う訳。

 つまり、あんた達ドラゴンや亜竜の使うブレスってのは、そのマナを体外に放出する回路を使ってマナに命令を出して発動してるって事。」

『成程、判りやすい解説だ、魔法は我らのブレスと一緒か、納得したぞ。』

「流石ドラゴンの中でも王と呼ばれるクラスの長命種だよね、頭が良いわ。

 同じ事をこの世界の人に説明しても、半分も理解してくれないわよ?

 だから実際にやって見せてやるのが近道だったのよ。」

『はっはっはっは、まぁ、我らの英知からしたら、人の知識などは取るに足らない物であったからな。

 そこに現れたお主に興味を持ったのも、突出した知識を垣間見せられたのがきっかけでもあるしな。』

「成程ね、つまりはそれで私に会いたかったと、そう言う事か。

 でも何だって猫を追いかけて来たの?」

『うむ、それはな、たまたま我の放った情報収集の為のマーマンが、この地であまり見られない亜人種を見つけたと言うのでな、もしかするとと思ったのだ。

 間違いであった場合は、運の悪い亜人と言う事になってしまうが、この世界から見たら微々たる被害であるしな。』

「要するに私に行き着かなければ食われてたって事ね・・・」

「食わないで欲しいにゃ・・・・」

「良かったねぇ、あんた私から逃げようとしてたんだから戻ってこないでそのまま逃げてたら食われてたわよ?」

「ひぃぃぃぃ~~~~、食われるのも嫌だけどこの地獄の特訓も嫌にゃぁぁ~~~~!!」

「アンタそろそろイファーリアからも逃げ切る程だからキースの従魔にでも鍛えて貰えば?」

「何時から従魔が居るか知らにゃいけど、それはそれで嫌な予感しかしにゃいにゃ・・・」

『はっはっはっは、面白い亜人であるな、ワシが鍛えてやろうか?』

「ひぃぃぃぃ~~~! それはいっそ死んだ方が良いにゃ!

 水は嫌にゃのにゃ~!」

 やっぱ猫って思ったより進化して無いじゃね?

「あの、わっちは?

 また忘れられてる??」

 ああ、すっかり忘れてたよね、玉藻ちゃん・・・

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