第155話 番外編7.探索者組合に走った衝撃

       番外編7.探索者組合に走った衝撃

「拙者がこの探索者組合を預かって居る、柳沢左衛門丞国定やなぎさわさえもんのじょうくにさだと申す。

 拙者に御用と伺ったが?」

「ご丁寧に痛み入る、俺は、グローリー王国冒険者ギルドより、此方の大陸の探索者組合との友好と提携を委託されてその使者として来た。

 組合の本部は何処に行けば良いのか教えて頂きたく此方へ伺った。」

「左様で御座るか、成れば、京へ上るが宜しい、この街より西へ四十里ほどあるので少々遠いとは思うが、そう言った御用であれば京の本部へ行くのが良かろう。」

「成程、確かに少し遠いようだが、まぁ何とかならん事は無かろう。

 情報の提供、感謝する。

 所でもう一つ、良いだろうか。」

「まだ何か御座るのか?」

「ああ、ここに来る途中でな、災害級の魔物を討伐したんだが、いかんせんここの魔物は独自性が強いようで、俺達の大陸とは勝手が違い過ぎるのでな、討伐証明の部位を切り取って持って来ようにも何処を切って良いのか判らず、そのまま全部持って来たんだが、見て貰っても良いだろうか。」

「はて?災害級であると?この近隣でそのような魔物が出たと言う記録は無いので御座るが・・・拝見いたそう。」

「これなんだが、恐らくオーガの亜種か、ユニークの類と思う。」

 カイエンがストレージから伽梨帝の死体を取り出す。

「こ、これが災害級の魔物であると?」

「ああ、これだ、討伐証明は角で良いのだろうか?」

「お主ら、こ奴は何か特徴は無かったか?拙者としてもあまり見た記憶が無いのだ。」

「そうだな・・・ああ、周囲に、ゴブリンの亜種のような小鬼を配してたな。」

「小鬼とな? まさかそれは餓鬼の事であろうか?」

「ああ、そう言われると、痩せこけていて餓えた鬼と言う感じではあったな。」

「す、すると、これはまさか・・・

 お主ら、誰も人員の損耗は無いか?

 誰ぞ亡くなったとか、そのような事は?

 これは、拙者も見た事が無い筈だ、伽梨帝では無いか?」

「いや、我々はこの五人で普通に討伐したぞ、街の付近にこんな危険な魔物が居ては危なくておちおち旅も出来んからな。」

「討伐したのか?たったの五人で?何と言う胆力、何と言う武・・・

 カイエン殿と申したか、お主一体何者ぞ?」

「ああ、済まない、申し遅れた。

 俺は、今代では無いが勇者の称号を、ランクル、グローリー、ユーノス、アルファードの四大国よりの認定を受けた事がある。

 そしてこっちの背の高いのが、グローリーの救国の英雄で、双大剣の首狩り鬼と言う二つ名を持つ、キース。

 こっちは俺の妻で、くノ一のマカンヌと、俺の娘の、魔法剣士カレイラ。

 最後に、キースの隣に居るのが聖女クリスだ。」

「それはどんな事で御座るかね?

 英雄と勇者殿が一緒に行動など、もはや魔王の討伐にでもお発ちに成られたのかね?

 それに、くノ一とはこの国の女忍びの事、その者はこの国の者には見えぬが。

 しかしそれよりなにより、魔法剣士とは何で御座る?

 魔法等と言うまやかしが本当にあるので御座るか?」

「ああ、それがな、最近出来たんだ、エリーと言う大賢者が現れてな。」

「何を言って居るのか雲を掴むような話で何とも・・・

 イヤしかし、伽梨帝を討伐など、誰も考えもつかなんだ事でどうしたらよいものか。」

「何を言って居るんだ、あんな強力な魔物が居てはおちおち物資の輸送もまま成らないだろうに。」

「それなのだが、何故かあの伽梨帝と言う鬼は村や町と言うのを襲った事が無いのだ、問題は奴の生む小鬼、餓鬼がそこかしこで旅商人や女子供を襲うのでそちらの討伐は行って居るよ。」

「そうだったんですね、しかし、その伽梨帝とやらを倒してしまえば自ずと餓鬼は生まれなくなるのでは?」

「うむ、それは解って居る、判って居るのだがな・・・いかんせんあまりにも強すぎて倒したと言う記録はこれまでにないのだ、むしろ、遭遇した記録もほとんど皆無で御座ったし、倒せる等と思った事も御座らなかったのが現状である。」

「つまりは我々が初めてと言う訳か・・・」

「まぁ、そう言う事に成るので御座る。

 しかし、そのお主らの強さには少々興味が有るな、こう見えて拙者も若かりし頃にはかなりの手練れであったと自負しておるのだ、どうだ、少し手合わせをしてはくれまいか?」

「手合わせか、ああ、良いだろう、だが俺やキース当たりだと力の差がありすぎて実際の実力の1割も出さずに終わってしまいそうだな、カレイラ、相手をしてやってくれ。」

「え?私で良いの? そりゃお父さんじゃ素手でも命の保証できないだろうけど、私だってかなり強いんだよ?」

「はっはっは、なぁに、こう見えても若い頃には相当であったのだ、娘っ子程度では相手に成らぬと思うぞ?」

「いや、カレイラは強くなったからな、カレイラが負ける様なら俺が相手してやっても良いが、俺では本当に指一本でも死なせてしまいそうだ。」

「むぅ、確かにお強いであろう事は解って御座るが、少し屈辱で御座るぞ、良かろう、カレイラ殿と手合わせをしてその実力を示そうでは無いか。」

 こうして、カレイラ対柳沢殿の手合わせ、模擬戦が、探索者組合の訓練場で始まった。

 木刀を構える柳沢殿、木剣を借りて来て、カレイラもそれを構える。

「何処からでも打ち込んで来るが良いぞ、拙者は後手で構わん。」

「そうですか、それじゃお言葉に甘えて~、っと。」

 カレイラの動きが急に素早くなって、一瞬で柳沢殿の木刀を叩き落として木剣を柳沢殿の喉元に突き付けた。

「はいっ私の勝ちね。」

 小娘に一瞬で負けた事が納得行かない柳沢殿が食い下がって来る。

「ま、待て、今のは油断して居ったのだ、今一度、今一度ぉ~。」

「えぇ~、めんどくさい~・・・クリス姉ぇ~、代わりにやってよ~。」

「え?私? でも私、剣とか使えないんだけど?」

「大丈夫~。 このおじさんに剣要らないって。」

 と、片手をヒラヒラしながらさっさと離れていくカレイラ。

「うう~、何で私が~、あんまり戦闘は得意じゃ無いのに~・・・」

 クリスは気付いて居ない、自分の実力が既にAクラス冒険者並み、と言うか、Aクラスとしてもかなりの上位に食い込む程な事に。

「ふむ、クリス殿は回復役と聞いて居ったのだが、戦えるで御座るか?」

「あんまり得意じゃ無いけど仕方ないでしょ~、カレイラったらもぉ~。」

 クリスがローブを取って軽皮鎧姿でグローブをはめる。

 この皮鎧やグローブも、エリーが手掛けた完全オリジナルだ。

 皮鎧には自動障壁のナノマシンが、グローブも衝撃波を撃ち出す事が出来るトンデモ仕様になって居たりする。

「はい、いつでも良いですよ?」

「む、クリス殿は無手の技の使い手で御座るか、だが、拙者の剣をなめて貰っては困るぞ、では今度はこちらから行かせて頂こう。」

 さっきは先手を取らせて何も出来なかったので自分から先手を申し出た柳沢殿だったが、そうした事を後悔する事に成ってしまう。

 踏み込んだ所をクリスが更に間合いを詰め、合気道の技で軽く投げられ、更に追撃でそのまま、パロ・スペシャルを決められてしまうのだった。

「いだだだだだだ!、参った、参り申した、降参で御座る~。」

 結局、柳沢殿はジ・アースの誰にも敵わないと言う事で諦めたらしい。

 それにしても、クリスはすっかりプロレス技が気に入って居るようで得意分野にしてしまったようだ。

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 そして、その実力を、探索者組合宇都宮支部長柳沢左衛門丞国定が認め、伽梨帝討伐を公表した為に、その衝撃は探索所組合全体へと走る事と成ってしまったのだった。

 そして更に、その冒険者が5人掛かりで倒した伽梨帝の恐ろしさがますます脅威と認定されるのだった。

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