第146話 再生医療2
再生医療2
そうなんだよね、私がヒューマンを辞めてしまった為に・・・ゴホン。
言い方・・・それだと「人間やめますか?」みたいでちょっと。
人族から進化してハイエルフと成ってしまった為に、ヒューマンとエルフの違いを検証する手が無くなってしまった。
のだけども、それってこの時点では既に必要無くなってしまった気がする。
なんせ、私は今、エルフの上位種族ハイエルフなんだから。
試験的に、エルフであるザインの細胞から取り出したDNAには存在しないテロメアを、ハイエルフである私のDNAに存在して居る減らないテロメアを移植して見たらどうかと思う。
久々にマッド魂が震える思いだ。
遺伝子工学を含める超精密工学は私の一番の得意分野だしな。
早速、カーマインファンレイにあるラボで、ザインの細胞と私の細胞を、精密作業用のカプセルに大切に保護、電子顕微鏡をモニターで開き、マニピュレータ―で細胞壁を開き、DNAを採取。
当然マニピュレータ―はオリハルコンで加工、マイクロメスは炭素繊維製なので問題はない。
私の細胞から取り出したDNAのテロメアを引き剝がしておく。
次に、ザインのDNAを解し、普通テロメアの存在する筈の両端を、薄皮一枚剥がす感覚で切り込む。
そしてその切り口にテロメアを張り付け、この世界に来てから作ったあのローポーションを一滴、すると、私の思惑は見事にはまったらしく、予想していた以上に親和性が高いようで、アッサリとザインのDNAは、エルフ細胞からハイエルフ細胞へと進化した。
さて、この新DNAを、今度はザインの細胞から作った万能細胞へと移植して、培養すれば良い訳なのだが、今の所は本当にこれでハイエルフとしてのザインの肉体が再生されるのかは未だ解らないので、培養カプセルで様子を見る事に成るだろう。
ちなみに今回使う万能細胞はiPS細胞だが、STAP細胞を使った方が良いかも知れないと思い、失敗した時の為にそっちも用意してある。
ん?STAP細胞? 有りますよ。
あの事件の後、研究自体がされなくなったみたいなんだけど、私は一つ、思い当たる節が有ったので、私の時代になってからSTAP現象が起きるか否かを試したのだけど、確かあの時の研究者の方は、”オレンジジュース程度の酸を投入した所STAP現象が起きた”と宣って居たと見聞に残っていたけど、私は思った、あの研究者の女性、お若かったので、”オレンジジュース程度の酸”では無く、”ウッカリ掛かってしまった飲みかけで置いてあったオレンジジュース”だったのでは無いかと。
そこで、あの年齢の女性が常時飲んでいるオレンジジュースがどんな物なのかを追求した結果、当時割と子供向けとして販売されて居て一世を風靡して居た、Qo〇と言うオレンジジュースに行き着いた。
そこでそのオレンジジュースの成分を調べ上げた私は糖質から何から一切合切全く同じ物を再現、それを試験管の中に入れて見た。
そうして数分様子を見ていると、反応が起きたのだ。
ですから、あの時の研究者の名セリフ、STAP細胞は、有ります!は、ウソでは無かった事に成る、但しその反応が起こるまでの工程が問題だっただけだ。
そりゃぁ、再現しろって言われておいそれと再現出来るもんじゃねぇよな。
まさか、”オレンジジュース程度の酸”の正体が、”果汁30%しか入って居ないあまぁ~いオレンジジュース”だったなんてな。
しかも糖分も必要だったなんて誰にも解らん。
脱線しちゃったけど、兎に角万能細胞を培養し始めた・・・んだけど、10個の培養カプセルが根こそぎ一回目の分裂に耐えなかった。
どうにかならない物かと考えた結果、シーサーペントのコアである魔石、あれを試して見る事にした。
何故それを試そうとしたかと言うと、あの魔石には、実は超速再生のスキルが刻まれて居たのだ。
STAP細胞とiPS細胞を、5つづつ用意し、培養カプセル10個に振り分け、魔石のスキルが使えるように装置に組み込んでその能力を送り込む、そして更に、恐らくSTAP細胞と相性が良いのであろうと思われる糖質を栄養源として大量に用意して使う。
この培養実験を開始して6分後、10個共に細胞分裂の反応が起こった。
そして、内2つが、爆発的な細胞分裂を始める。
iPSが一つ、STAPが一つだった。
それぞれ、培養液内の成分を少しづつ変えていて、STAPは一番濃い物、iPSは丁度中間の濃度の物がそれに当たる。
こうして様子を見ること2時間。
かなり時間加速をして見たが、ようやく人型、赤ん坊のような姿になった。
但し、ザインの脳を移植する為に、頭部には脳が出来ない様にスペーサーを入れて置いた。
これは全身欠損の培養に当たっては絶対必要な作業だから非人道的とか言わないで欲しい。
むしろ完全クローンを作って置いて脳を挿げ替える方がよほど非人道的だ。ちなみに両方ともここまでは仕上がってしまったので、両方鑑定して見るも、何方も全く問題無く出来上がっている。そこで、少し加速してる時間の強弱を付けて見る事にして、ザインに報告しに行く事にした。
あ、但し、ザインに報告している間に何かあっても困るので時間加速は一時解除する。
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「ザイン、新しい体が出来たよ、未だ赤ん坊だけど、もう少し頑張ったら15歳位の年齢にはなると思う。」
「ハイエルフ様、僕、赤ん坊でも良い。」
「え?今すぐ移植して良いって事?」
「ん、ハイエルフ様の子供になりたい。」
「そりゃぁ~・・・ザインの新しい体ってさ、ハイエルフになっちゃってるけど・・・」
「!?」
「イヤぁ、なんつうかね、ザイン、聞いてくれる?
私は本当に初め、普通にヒューマンだったんだ、でも、いつからそうなったのか知れないけど、進化してハイエルフに種族が変わってたんだよね、マジで。」
「知ってた。」
「知ってたんかいっ! 何時からよっ!」
「ん、昨日、シーサーペント。」
「え、マジ? あの時なの???」
確かにあの時、怒りに任せて魔力ダダ洩れで対峙しててさ、一瞬マナ切れの感覚が有った筈なのに急に更に力が溢れて来たしなぁ、あの時かぁ~・・・」
「ん、途中で、風格が変わった。」
そうだったのか、自分では判んないもんだねぇ、そう言うのって。
「はぁ、まぁそれは良いわ、置いとくとして、その私のハイエルフになったDNAを、ザインのエルフDNAと融合させる事で、ザインもハイエルフになっちゃいます。」
「ありがとう、ハイエルフ様。」
「で、本当にザインは赤ちゃんの体からやり直しても良いの?」
「ん、僕を師匠の子供にして欲しい。」
「・・・・・・・よし! 判った!」
タイタンズの二人は、カイエン達と新しくPTを組ませる形にするしか無いだろうな。
「ザイン、クリス達にこの事は伝えない方が良いかな?」
「ん、ママがそうしたければ、今すぐ移植してくれても良い。」
もうママ呼ばわりだけど、悪い気はしない。
そして私は、敢えて罪を被る事で、キースやクリス達とは別れて行動するつもりなのだ。
何でかってな、私はつい、手出ししすぎる、それは、冒険者としてずっとやって行く彼らの弊害になってしまうのだと思う。
だってほら、私にはナノマシン補正とか色々反則な機能があるから、大概死ぬ事は無いけど、万一私の目が届かない所でクリスが大怪我をしたらどうなる? 今までであれば、そんな事に成ったらキースは、多分逃げる事を選んででもクリスを助けようとしただろう。
でも、私と言う最後の砦が有れば、きっとキースはそのまま戦い続けて、全部倒してからクリスにポーションを飲ませようとか考えるだろう。
何故ならば私も回復が使える上に、もしもキースの手に余る様なら私が代わりに戦うからポーションをすぐに飲ませろとか言う指示も出しちゃうだろ?
甘えは死を招くんだ、私も居ないのにそんな甘えた態度でやって来た冒険者は対応が利かなくなるだろう。
だから、未だぬるま湯に浸かって僅かな時間しか経って居ない今の内に突き放すのが正解だと思うんだ。
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