第145話 再生医療1

          再生医療1

 ザインは、全身麻痺の重傷を負ってしまった、私を助けようとした為に。

 先進義体を作れば良いじゃ無いかと、皆は言うかもしれない。

 だが、それではダメなのだ、ザインには、使えない。

 何でザインには電脳を作らなかったのか、それには、もう一つ、理由があった。

 エルフ族の細胞は、金属に対しての拒絶反応が出やすいのだ。

 所謂、金属アレルギーのような物だが、その発現が洒落に成らない症状として表れてしまう。

 それは、ナノマシンで散々色々調べた結果、誰にも言ってはいないが、調査済みで、私自身は知って居た。

 電脳化をすると言う事は、電極と神経系を繋ぐので、結果、金属と触れてしまう事に成る。

 エルフの特有の金属に対する拒絶反応は、皮膚が腫れ上がり、まるで癌細胞の様に肥大化して行き、ある時、はじける。

 当然大量の血を吹き出し、即死する。

 ザイン自身、無意識に金属に触れることを拒んで居た節がある。

 きっとエルフ特有の危機回避超感覚なのだろう。

 実際にザインの弓は、トレントの枝と蔓で作られており、矢も、トレントや、この世界の硬い木を、木同士でこすり合わせて成型したと言う膨大な時間を掛けた物だ、矢尻は、黒曜石などを使って居た。

 ザインがオリハルコンのナイフを欲しがったのは、オリハルコンだけは金属を触れた時の拒絶反応が出ないからだろう、これも私は調査済みで知って居た、だからこそザインの為にナイフを作ったのだから。

 まぁ、あまりにもとんでもない物が出来てしまった為に封印と成ってしまっては居たが。

 エルフが、森の住人等と揶揄されたりするのは、金属の武器、防具を一切触らないからと言うのが原因なのだと私は思って居る。

 一緒に私の防具を買った時にザインが着て見せたビキニアーマーも、革製だったんだ。

 そんな重大な理由があって、ザインに義体は扱えない。

 カイエンやマカンヌの表皮にはちゃんと人工皮膚が貼ってあるので、握手とかは出来るだろうけど。

「ザイン御免・・・私のせいだ・・・。」

「ハイエルフ様、大丈夫、体、動かなくても、精霊は呼べる。

 戦えるよ。

 精霊に手伝って貰えば、体動かなくても歩けるし。」

「そんな切なく成る事言わないでくれ、私は、ザインを意地でも助けてやる。

 一晩、考えさせてくれ。」

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 エルフの細胞は、特別製だ、ある意味。

 DNAに、テロメアが無いのだ。

 だが、エルフは確かに長命だが、ちゃんと寿命とされる年齢がある。

 この辺が不思議なのだ。

 テロメアが無いと言う事は、細胞の分裂回数の制限をする機構が存在しない事に成る、つまり、永久に細胞分裂を繰り返す事が出来ると言う事に成り、即ち、老いる事をしないと言う事に成る筈なのだが、実際に900年位生きたエルフは、歳を取って居るイメージになるし、1000年を超えると、ほぼ生き永らえるエルフは居ない。

 そして、エルフは、何故かアルツハイマーと言う老化現象を知らないのだ。死ぬ直前まで脳は生き生きとしている。

 一切の記憶を有しているため、自ずと博識に成り、エルフの長老はそれだけ偉大と称される訳なのである。

 ザインにお願いして、口の中の、頬の内側の細胞を、スプーンでこそげると剝がれる分だけ頂いて、研究をする事にした。

 やはりエルフの細胞は特殊である。

 不思議、と言うか、大変興味深い反応をいくつも示してくれるのだ。

 エルフ肉を食べ無い説、これはただの都市伝説的な所は有るのだが、強ち間違いとも言い切れない部分がある。

 実際にザインは肉が大好きだし、問題無くモリモリ食って居る。

 だが、多分肉を食わないと言う噂の元は、この細胞の特徴からと理解できる。

 一切のたんぱく質を取らずとも、細胞内で生成出来てしまうから、嫌いであれば一切肉を食わずに生きられるからだ。

 多分、ザインのように肉を食べるエルフにとっての肉は、趣向品の類なんだろう。

 食べないエルフにとっての肉は、所謂血生臭い不味い物、と言う認識なのだろうね。

 要するに魚嫌いにとってのお魚とか、煙草のような存在、そんな感じだろう。

 さて、どうした物か。

 そして、最大の問題はエルフの細胞、いや、DNAの弱さにある。

 壊れやすいのだ、テロメアが無いからでは無いかとも予想されるのだが、癌細胞に侵されやすい。

 先程言ったような、金属アレルギーの異常すぎる過剰反応は、その弱さが原因。

 とは言ってもどうしてそこまでに過剰すぎる反応に成るのか迄は、調査不足だけどね。

 ザインが全身麻痺状態になってしまったのは、恐らく一度に大量の細胞が死滅してしまったせいでのDNAの異常だろう。

 つまり、回復魔法で治す事も、このままでは不可能。

 万能細胞を使ってザインの体のコピーを創れれば、と考えたが、この特殊なDNAが、急激な爆発的増殖に何処まで耐えられるのかが難しいのだ。

 しかし、手はもうそこしか無いと考えて、今こうして試行錯誤している。

 ザインの移植手術、首から上だけを生かしつつ、それ以外の全ての器官を、ザインの首に移植する訳だが、オリハルコンの医療器具を使えば何とかなるだろう、問題はその移植する為の体の全ての器官を作る方法だった。

 万能細胞、それは、欠損等を治せるかも知れないとされて研究がなされてきた夢の細胞。

 だけど、エルフの不可解で特殊なDNAで同じ事が出来るのかと言う問題。

 何年もの時間経過を、一気に加速させて作る事が、欠損移植の為に一番必要な作業であり、これが一番難しいのだ。

 そうで無いと、例えば20歳の人の腕を移植するに当たって、10年掛けても未だ子供の腕にしか成らなければ、移植する意味が無いと言う事だ。

 それこそ何十年も生きた人の移植をするのであれば、それだけの経年を、作りだした新しい腕なりに体現させなければいけない訳だ。

 私の生きた時代では、出来ない事は無い程にその技術は進歩して居たが、それでも完璧とは言い難い物であった為に、私の開発した義体で欠損を補うのが普通になって居たのだから。

 それを、今、私は、エルフの全身でやろうとして居るのだ。

 そして、ザインの細胞と私の細胞での違いを検証しようとして幾つか実験をして居た結果なのだが、私の細胞も何かオカシイ事に気が付いてしまう・・・あれ?

 エルフの細胞に非常に近い反応を示す私の細胞、だけどエルフの細胞よりも強い反応、そしてエルフとの違いは、テロメアが有る事、しかし細胞分裂を繰り返してもテロメアが短く成らない。

 どゆ事???

 試しに、私自身を、多角視点で客観的に見て、私のカンストした鑑定スキルで見て見た。

 暫く、あまりの出鱈目な私の能力がどんな進化してんのか怖くて見て無かったんだけどな、ステータスすら。

 何故敢えて自分を鑑定したかって、ステータスを見ても、ステータスしか見れないからだ。

 秘匿項目を見たいと思ったら私のぶっ壊れ性能鑑定しか無かろう。

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 エリー・ナカムラ(ヒューマン)→(ハイ・エルフ) LV:114 job:サイエンスアルケミスト・創造者・大賢者・聖女・医学博士・魔王・邪剣士

 HP 148410/148410vi MP 649480/649480mas SP 100%

 防御力  1266(NM補正+180)

 体力   1150(NM補正+240)

 腕力   1100(NM補正+300)

 精神力  2880(NM補正+966)

 速力   1650(NM補正+290)

 命中力  1100(NM補正+190)

 固有スキル

 ・身体能力アップデート

 ・ナノマシン創生・統制・改良・制御・進化・掌握→ナノマシンマイスターに統合

 ・ナノマシンによる自己高速再生→超速に進化

 ・ナノマシンによる光学迷彩→完全隠形に進化

 ・ナノマシン自己防衛システム

 ・魔王覇気

 ・英雄覇気

 ・精霊創造

 ・無条件召喚

 ・武器召喚

 保有スキル

 ・理術(LV.MAX)→世界の理(lv.2)・錬金術(LV.MAX)→創生術(lv.16)・身体強化(LV.MAX)→身体自動強化(lv.25)・アクセルブースト(LV.99)・武器マスター(LV.70)・並列思考(LV.MAX)→並列存在(lv.1)・超速思考(LV.MAX)・創造(LV.MAX)・精霊召喚魔法(lv.MAX)→複合合成精霊魔法(lv.1)・属性魔法(lv.MAX)・創造魔法(lv.MAX)→万物創造(lv.1)・多重複合魔法(lv.20)

 称号

 ・神の系譜・ナノマシンマイスター・哲学士・錬金術師・賢者・大賢者・魔王・救国の英雄・科学を際めし者・創造者・ネクロノミコン・ドラゴンスレイヤー(亜竜)・信仰を集めし者・ガトリング奏者・将軍・独裁者候補・爆破技師・美食家・焼肉マスター・武術を際めし者・トレーナー・大聖女・大魔女・魔法を作りし者・精霊の母・幼女コレクター・美少女コレクター・ショタコン・美しきを愛でる者・お姉さま

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 なっ!??

 なんじゃこりゃ~~~~~!!!!!

 種族進化してる!??

 え、私何時からハイエルフ???

 ハイエルフなの?

 ハイエルフなのかぁっ!?

 本当にハイエルフになってんの??

 もしかして悠久の時を永遠に生き続ける神に最も近い存在なの???

 神の系譜ってなんだYO!

 しっかり魔王の称号もあったし!

 最後のお姉さまってのはあの子のせいだな?

 ネクロノミコンて何だよ、まさかとは思うけど魔導書作ったから?

 ・・・・って、さりげなく合間に入り込むようにして滑り込んでる称号だからスルーし掛けたけど、独裁者候補ってのは何さ。

 何だか途轍もない進化を果たしたようで・・・

 あたし困っちゃう~♡ なんつって。

 成っちまったもんはしゃぁねぇな、なっちまったもんは。

 でも本気で秘匿しとくか、ハイエルフってとこはな。

 しかし、これだとヒューマンの細胞とエルフの細胞の違いを検証したかったのに私がヒューマンじゃ無くなっちゃってるって事は検証のし様が無くなっちゃったな・・・

 って論点はそこじゃ無い気がしてきた・・・

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