第127話 怪鳥トリコ

           怪鳥トリコ

 港へ行くと、丁度ポルコさんが離水する所だった。

 しまった、間に合わなかったような気がする。

 クリムゾンスパイダーを収納から召喚して、通信端末を使い、ポルコさんに戦うなと伝えようと思い、急いで召喚するも、既に交戦状態だった。

 ポルコさんのスカーレット・シーグリフォンがミサイルを発射するも、トリコは身体硬化みたいなスキルを発動させて耐えきって見せた。

 次の瞬間、トリコの爪があっさりとスカーレット・シーグリフォンを捕らえてしまった。

「あ、落ちた・・・」

 M3位出てた筈なんだけどなァ・・・

 仕方ネェな、AIが寸での所で墜落を回避し、緊急着水を行ったようでなんとかポルコさんは死んでは居ないだろう。

 取り合えず、クリムゾンスパイダーの主砲で追い払うだけしとく事にした。

 でも、あれ程の化け物を相手にするならあの機体でも5機以上の編隊を組んで戦わないと無駄だと思う、正攻法で正面から攻撃しても落ちないだろ、あれ・・・

 実際にスカーレット・シーグリフォンとのサイズの対比でどれ程巨大かが良く判った。

 あんなのほぼギャ〇スかロ〇ロス、もしくはラルゲ〇ウスだ。

 仕方ネェな、私が落とすしか無かろう、あれは無理だよね。

 精霊でも駆使すれば何とかなるよね・・・多分。

 ボロボロになった機体が、何とか桟橋まで戻って来た。

 ハッチが開き、ポルコさんが悔しそうに降りて来た。

 怪我も無いようで安心はしたが、一言苦言を呈して置くとしよう。

「くそう!あとちょっとだったのに!」

「コラ!ポルコさん、いくらシーグリフォンでもあんな化け物に勝てる訳ねぇだろ!

 アンタは先ず、私が今増産してる機体を使う乗り手を育てて航空隊を組む所から始めないとダメでしょ!

 5~6機の編隊で挑まないとあんな巨大な化け物は倒せないって!」

「う、エリー殿・・・済まない、折角の機体をダメにしてしまった・・・」

「まぁ、シーグリフォンは大丈夫、ちゃんとセルフバリアーコートは機能して居たし、ほんの少し破損しただけだから明日にはナノマシンが修理を終わらせるだろう。」

「え?明日には勝手に飛べるようになってると言うのか?本当なのか?」

「ああ、多分この周囲の魔素濃度なら撃ったミサイルも補給されて居ると思う。

 だけどお前アレには敵わんだろ、無理したらダメよ。」

「しかし、俺がやらなきゃこの街の連中が被害を受けている以上は・・・」

「だからこそでしょ、あんたは精強な航空隊を作る事が今の課題!

 あんな化け物相手に正面から挑みかかるってどんだけ無謀なのよまったく。」

「・・・確かにそうだ、面目ない。」

「でも私も野放しにはして置けないと思う、私がやるからそこで見てなさい。

 あのサイズにもなって来ると魔物としての格も段違いな筈だから、普通の火力じゃ太刀打ちできないからね。」

 そう言って私は、手始めにクリムゾンスパイダーを全機並べてAIオートで支援攻撃を指示。

 スパイダーの上に立って変身だ。

 何処でハイエルフフェチエルフが見てるか判んねぇから恥ずかしいけど変身しない事には召喚出来ないし・・・あんな縛りをつけるんじゃ無かったなぁ~、速攻でブーメランだったもんね~。

 地面に接して居ない鳥には恐らく有効であろう、そしてスピードでもこいつ等ならば負ける気はしないので、雷属性の精霊を呼び出す。

「雷≪イカヅチ≫よ集わん、我の元へ、我が名は貴女達姉妹の友 エリー、顕現し賜え、其方達の名は、ラム、ミコト。」

 パリパリと静電気放電のような現象が収束していく。

 プラズマの様にカッと一瞬光り、光が落ち着くとそこには、ビキニ姿の精霊と、短めのスカートにカッターシャツ、ネックスカーフを襟に巻いた精霊が現れる。

『マスター久しぶりだっちゃ!』

『何よ、急に呼ばないでよね、私にだって都合が有るんだから!』

「はいはい、二人ともありがとね~、今日の相手は、アレね。」

『任せるっちゃ! あんなの楽勝だっちゃ。』

『可愛くない鳥よね、でっかいしいやだなぁ~。

 でも、喧嘩を売る相手を間違えたんじゃない?』

 ラムは、イオンクラフトを発生して飛び上がると、瞬時に加速して距離を詰め、トリコの背後に回り込んだ、出来る精霊はスゲェな。

 こいつ、鳥の癖にブレス吐いてやがるし、迂闊に突っ込んじゃダメみたいだ。

『飛べなくたって撃ち落とす位出来るんだから。

 いっけぇ~!』

 勢い良く直径2㎝の鉄球が閃光を伴って飛んで行く、レール・ガンを撃ちやがったな、ミコト・・・しかし確かに、いくらM3の戦闘機を叩き落せたってM25で飛んで来る鉄球には対応出来ないわな。

 その巨大な翼に風穴をあけられて逆上するトリコ。

『私の見せ場を奪うな~! 負けないっちゃ~!』

 なんか対抗心燃やしてるよ、この姉妹仲良いんだか悪いんだか・・・

「あ、それ使います?そこまで要らない気が、あ、ちょっと!ヤバい逃げよう。」

 ラムが放ったのはブラックドッグだった、広範囲に影響が出る上に威力も洒落に成らないんだよ、これ。

 急いで、完璧な絶縁が出来て居るクリムゾンスパイダーに逃げ込んだ。

 っつーか誰かイ〇ジンブレイカーと諸星あ〇る連れて来いよ! 危なさ過ぎる!

 まぁ当然だけど、その凶悪なまでの電力を一手に引き受けた可哀そうなトリコちゃんはその羽を黒焦げにして墜落・・・

 だけど、まだ生きてるよ、凄いなこいつ。

 んじゃ止めは私が刺そうね、何もしないでここまで落ちて来た事だしな。

 クリムゾンスパイダーの砲塔から外に出てタンクデサント状態で墜落したトリコに接近。

 ライトセイバーの出力を最大にした、光の柱のようにも見えるそれを揮い、トリコの首を落とし、プラーシャゴーレム(最大サイズ)を召喚し、足を掴んで上空へと引き上げて、その下に展開したストレージの亜空間へと放り込んだ。

 これで血抜きも完璧だしね、美味しいかも知れない鳥は、取り合えず食って見るに限る。

 呆然としているポルコさんの所に戻ると、突っ込まれた。

「何だあれは!? 雷が・・・

 それに、あの巨人は???」

「あ、うん、私の友達、雷精霊の姉妹、それに木の精霊が手伝ってくれたのさ。」

「えぇぇ~~~~~~???」

 まぁ、精霊なんか信じて無いだろうからそうなるわな、でも慣れてくれ給えよ、これから少しづつ精霊魔導士も増えていくはずだから。

 そして、この港街には、ミコトとラムの雷精霊姉妹像が建てられる事になってしまった・・・・やっちまったぜ。

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