第121話\ 港街ローデスト

          港街ローデスト

 クリムゾンスパイダーで、ローデストの街に到着した。

 やっぱり魔物扱いされるのかと思って居たけど、ポルコさん率いる騎士隊が出迎えてくれて騒ぎには成らなかった。

「到着したな、ローデストの冒険者を助けてくれてありがとうな、感謝する。」

「おお、ポルコさん、お出迎え感謝。

 ちなみに、漆黒の風のメンツは4人とも乗せて来たよ。」

「怪我の治療もしてくれたそうだな、ありがとう、あんな程度でもこの街では一番の冒険者チームだ、本当に助かったよ。」

「ポルコ先輩、酷いっすよ、俺らだってマダマダこれからっすよ、エリーちゃんにもこんな良い盾貰ったんで、頑張ってCランク目指しますよ。」

 ジェイは新しい盾がよっぽど自慢したかったらしくて披露し始めた。

「ところで、神速の勇者と言うのは彼か?」

「ああ、そうだ、カイエンはちなみに、勇者と言うより、元勇者だけどな。」

「ん?それはどう言う事だ?」

「ああ、それは俺が自分で話そう、カイエンだ、よろしく。」

「ああ、ではよろしく、ポルコ・ロッソだ。」

「実はな、俺は以前、利き腕の左腕が完全に機能しない程の損傷をし、反対の右腕にも全治1カ月の怪我を負って、勇者の称号をはく奪された、過去にそう言う勇者が居たと言う話は聞いた事があるだろう? あれは俺だ。」

「え?待って下さい、それって15~6年程も前の話では?」

「ああ、正確には18年前だ。」

「しかし、カイエン殿はどう見ても20歳そこそこ・・・」

「ああ、それは企業秘密、と言うか、エリーの能力で若くなった、そして、腕も治っただけでなく、以前よりも強くなった。」

「そんな事が・・・エリーさん、貴女は一体?」

「私はね、前世の記憶を持って転生して来ただけの、唯の科学者だよ。」

「ただのって、そんな事無いでしょう?一体どうやって若返りなんて芸当が?」

「そんなに難しい事でもないさ、若返ると言うより、若い体を作れば良いだけの事、なんせ私の今の年齢は735歳だからな。」

「は?意味が解りません・・・」

「そう言うポルコ君だって、実は転生者なのだろ?」

「君て・・・まぁ貴女がそれだけの長い歴史の記憶が有ると言うなら、それも仕方ないですが、確かに俺も転生しましたが、そんな漫画のような、精々人の寿命なんてどんなに長くても100年・・・」

「そうか、そう言う意味で混乱してたのか、それは私の時代ならではでもあるな、人は老化する体を捨てて長生きできるんだ。

 ならば君はいつの時代から転生して来たんだ?ポルコ。」

「どう言う事です?そんなに様々な時代からここに転生して同じ時代に居るんですか?」

「例えば此処に居るカイエンの妻、マカンヌは2000年代の大学生だった。

 そしてグローリー王国の王太子は2400年代、グローリーのシーマ伯の所の執事のジュドーは3200年代から転生して来て居る。

 更に私は2700年代の世紀末近くに生まれ、734年生きて義体やコールドスリープ、宇宙戦艦や戦略人型兵器、亜空間航行と様々な物を開発して着た科学者と言う訳だ。」

「そんなに・・・では俺も明かしましょう、俺は1922年の日本に生まれ、太平洋戦争では、艦載水上偵察機、瑞雲と言う偵察機で戦闘、退却の殿を務め、友軍機を退避させる為に奮戦、米国海軍の艦載戦闘機、対地攻撃能力を削いで空戦特化型のヘルキャットと言う機体に撃墜されて気付いたらこの地に生れ落ちていた。」

 うわぁ、根っからの水上戦闘機乗りだ、マジで紅のアレだわ。

「それでどうしてそんな体型に?」

「過去の記憶を有したままここに生まれたのでな、強い体を作らねばならんと力士のような生活をして作り上げたアンコ型の肉体だ。」

 成程、唯のおデブでは無くて相撲取りに習って作り上げた鋼の肉体と言う訳か。

 そうか、それなら私の造ったこいつをくれてやっても良いな、力士の肉体と言うなら大丈夫だろう、この水上戦闘攻撃機シーグリフォンを。

 対地攻撃も可能のミサイルポッドを内蔵する事で40発のマイクロミサイルが搭載可能になった。

 機体の上下から発射されるミサイルは、高誘導性を有して居る為に恐らく急な軌道変更が可能と思われるドラゴン相手でも引けを取らないのではなかろうか。

 一発一発の威力は宇宙戦艦の装甲に風穴開ける位の火力だしな。

「そうだったんだ、力士体型って事ね。

 じゃあ、ちょっとやそっとじゃビクともしないだろ、ポルコさんや、本当に航空機に乗らないかい?」

「何だって?それは、まことの話か?」

「うん、実は造っちゃったんだよね。」

「見せてもらえるか?」

「勿論、港まで案内してくれる?」

「ああ、直ぐに行こう。」

 港へと歩きながら会話を続ける。

「ところでどうしてそんなに航空機が欲しいのさ。」

「実はな、街の南東の山に、最近厄介なものが住み着いてな。」

「それはまさかとは思うけど、亜竜とか言わないよね。」

「いや、そこまでの物では無く、鳥なのだが。」

「どんな鳥?」

「一際巨大でな、種族的には海ガルーダと言って本来なら翼を広げた大きさで精々8m程度だが、今回のは進化して居るのか更に巨大でな、20m近くあるかもしれん。」

 元もでかいけど、又一際でけぇな、それ。

「成程、そいつを駆除、もしくは追い出してしまいたいって事なのか。」 

「ああ、既に複数の冒険者チームが奴の被害にあって居るのだ。」

「え、もう?

 まさか食われたとか?」

「いや、海ガルーダと言うだけあって魚介が主食なのでそれは無いが。」

「って言うと、被害ってまさか・・・」

「多分その今の想像は間違い無いと思うぞ、その顔を見る限りな。」

 そう、私は非常に苦虫を噛み潰したようなイヤそぉ~な顔をしたのだ。

 ご想像の通り、フンの被害だ。

 多分さっきまで居た森の辺りとかで戦闘中に、上空から爆撃されたと言う事だろうな・・・恐るべし巨鳥・・・

 ----------

 港に到着した。

「で? どのように航空機を?」

「ん?こうするんだよ。」

 と言ってストレージから引っ張り出して港の水上に浮かべる。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 開いた口が塞がらない様だ。

「おーい、もしもーし!」

「は!? あ、いや・・・何処から出した?」

「ああ、私の最もお手軽な運搬方法のストレージって言う、仮想空間から出したんだ。」

 亜空間っつっても判らんだろうしな、大正生まれじゃな。

「ところでこの機体、プロペラは無い様だが・・・」

 ああそうか、あの時代はレシプロだったな。

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