第122話 紅の・・・?

          紅の・・・?

 港の桟橋に着いてすぐに、虎の子の水上ジェット戦闘機、シーグリフォンを、桟橋に横付けする形に浮かべると、ポルコさんは大変興味深げにしげしげと眺めてはここはどうなってるのアレはどう言う物か等と、散々に根掘り葉掘りと聞いて来た。

 良かったよ、作って、興味持って貰えるって事は気に入って貰えたと言う事に他ならないからね。

「じゃあ、早速乗って見て?」

「いきなり初めての機体、操縦できるだろうか・・・」

「ああ、そう言う心配は大丈夫、自転車にしかの乗れなくたってはじめはAIで半自動操縦で殆ど勝手に飛んでくれるから。」

「へ? それはどう言う??」

「そうだねぇ、ポルコさんの前世の時代の機体には付いて無い機能だからね~。

 要するに、この機体は頭がムッチャクチャ良くてね、自分で演算して安定した飛行が出来ると言う事なんだ。その気になったらデモンストレーションで勝手に飛んで帰って来るなんて言う全自動飛行も可能、試して見ようか?」

「意味が判らんが、勝手に飛ぶと言うなら見せて貰おう。」

「了解、じゃあ行くよ?

 SGF-01、オートパイロットモード、デモンストレーションフライト。」

『いぇす・まむ』

「うぉ!喋った!」

 エンジンに火が入り、逆噴射で桟橋からゆっくり離れていく。

 うん、スーパーサイレントエンジンにして置いて良かった、それでもかなり音がするけど、これなら静かな方だな。

 100㏈程度の音しかして居ないので、船や人でごった返して居る港であれば大して気になる音では無い。

 滑走距離の確保が確認出来たらしい、いよいよ加速を始めた。

「おおお~~~~~~! すごいな、本当に勝手に動いてるぞ!」

 やがて、テイクオフして空へと上がって行った。

「飛んだ!こいつはスゲェ!速いな!」

 そりゃそうだろ、レシプロしか知らないポルコさんにはジェットエンジンは新鮮だろう、しかも私のジェットエンジンはスーパーサイレントの長小型ジェットだしな、見た目もスッキリしてる。

 何処にエンジンが有るのか判らないと言われる程に小型化してるからな。

 ちなみにこのジェットエンジンは私が以前に作ったアタックヘリにも搭載して居る。

 但しこのままの出力だと強すぎてローターが耐え切れなくなるので出力を2割まで落としてるけどな。

 ちなみに今飛び上がったシーグリフォンの最高速度はM5.5、最低速度は750km/hだ、それ以下に速度を落とすとエンジンストールしてしまう。

 パフォーマンスを見せつける為のデモ飛行だから、トカチェフコブラを敢行したりアクロバット飛行を連発して・・・あ、インメルマンターンしてる。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!すげえぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~!!!!!」

 横でスゲェ音量で燥ぐポルコさんがうるせぇ!

 もうこの人は会う度に弄る方向で決定!弄られキャラとして弄んでやる。

「俺もやりてぇ!今の旋回とかむちゃカッコ良かったぞ!」

 アレだな、この人は根っからの飛行機乗りだったな、間違いなく。

「くぅ~~! 今の動き! 乗ってたら視界がスゲェ楽しいだろうな~!」

 ああ、やはりそうか、動きを見てるだけで乗ってる時の視界が想像出来ちゃうタイプの人、所謂天才って奴でしょ。

 体操選手なんかでも、こんな捻り方してこんな宙返りしたらこんな視界だろうなぁなんて想像できる人が天才なんだって言うからね。

 いよいよ、デモフライトも終わったらしいね、低空飛行になって速度が落ち、フロートが迫り出し始めた。

 着水、丁寧に着水するね、流石私のAIだ、ナイスランディングだね。

 そしてこの桟橋に戻って来た。

「なぁ、エリー殿、これ、本当に俺にくれるのか?」

「ああ、そのつもりで作ったんだけど?」

 しかもこれ一機じゃ無いんだな、同型機を後4機、実はすでに用意してある。

「なぁ、乗って見て良いか?乗りたい!」

「さっきも乗って見ろって言ったじゃない、ちょっと待ってな。

 SGF-01、ハッチオープン、権限譲渡、ポルコ・ロッソ。

 生体認証スキャン開始。」

『いぇす・まむ』

「ポルコさん、今からこの機体の操作権限をポルコさんに譲渡して生体認証を登録する為のスキャンをするから、コックピットに乗り込んでくれる?

 それと、今みたいな具合に音声識別操作も可能だから。」

「乗るぞ、乗って良いっつったよな、乗るぞ!」

 そう言ってる、っつーかとっとと乗れ!

 乗り込んだポルコさんは、子供に戻ったようなキラキラの瞳で、胸に両手を当てて深呼吸をしている。

「ああっ!懐かしい飛行機の機械油のにおい!」

 おいおい、ある意味変態の側に片足突っ込んでる方の人か?

『生体認証完了、ますたー ぽるこ・ろっそ 登録完了シマシタ』

「登録が完了したね、ポルコさんハッチ閉めて、音声入力でセミオートに設定して。」

「えっと、どうやって閉めるんだ?

 それとその設定も教えてくれ。」

「落ち着いて良く見てごらん、メモ貼っておいたから。」

 あちこち見まわしたポルコさん、ようやく見つけたらしい。

「ごほん・・・い、いくぞ・・・はっち・くるぅぉーずど」

 何でコブシ効いてんのよ。

 でもちゃんと認識したね、良かった良かった。

 テイクオフ・・・

 セミオートで遊んでいるんだろうな、面白い動きをして飛んでいる。

 と・・・つい今しがた迄思って居ました。

 あぁ~、こりゃやっちまったなぁ~、M3.5位まで急加速したと思ったら、エマージェンシーセキュリティーが発動してAIフルオートにコントロールが切り替わった。

 完全にブラックアウトしたよね~。

 あーほら帰って来た。

 桟橋に丁寧に停泊した機体は、すぐさま自動でハッチを開ける。

 なかを覗けば、やはり失神してしまっている様子だ。

 仕方無く引き釣り出して介抱する羽目になってしまったのだった。

 やっぱ対Gスーツ作らなきゃダメかな?

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