第65話 精霊魔導士爆誕

           精霊魔導士爆誕

 領主との対談を終えた私は大急ぎで製作中のラボへと戻る。

 なんたって、あんなに心拍数マジで加速して楽しみに待ってるザインをあまり待たせ過ぎては、心筋梗塞や脳内出血でポックリ逝かれかねないもんね(笑)

 急いで戻ったら、ザインちゃんったら私の作ったポケットゲームに夢中だった、あ、そう言えば仕舞うの忘れてたわ・・・

 -------


「お待たせ、ザインちゃん。」

「楽しみに待ってた、ハイエルフ様。」

 なんか興奮冷めやらぬ感じの返答が返って来たんだけどその視線はゲームにくぎ付けだった、オイ・・・

「あ、それ、気に入った?」

「不思議、面白い、でもこれで何をする魔道具なのかわからない。」

「これはね、携帯ゲーム機って言ってね、このちいさな魔道具の中に2000個以上のゲームが入ってるんだ、例えば、これなんかザインちゃん上手そうだけどな、シューティングゲームって言うんだけど。」

 表示してあげたゲームは、古き良きシューティングゲームの王様、”ゼビ〇ス”。

 携帯ゲーム機で再現するのはこう言う古い懐かしい(と言っても私の生まれた時代には既に秋葉原で発掘した古代ゲーム機とかで無いと遊べない幻の一品だったけど)物が良いよね。

「ハイエルフ様、ありがとう。」

「ザインちゃん? そのゲーム機あげるからやり過ぎないようにしてね、今はやめて私の話に集中して?」

「ん、わかった。」

「実はね、ザインちゃんに素敵なお友達を紹介しようと思ってます。」

「お友・・・達?」

 少し首をかしげて目を見開いたザインちゃん、超可愛い。

「うん、精霊を見つけたのだよ?」

「!!精霊!?」

「良い?呼んでも。」

「うん、わくわく。」

「風よ集わん、我の元へ、我が名はあなたの友 エリー、顕現し賜え、其方の名はレジーナ。」

 と言ってナノマシンに命令をする。

 すると、淡い白色の光がゆっくり収束し、幼女の姿に成る。

「凄い!本物の精霊だ、流石ハイエルフ様、お友達なのですか? とってもかわいい!!」

 ザインはどうも興奮すると饒舌になるらしい。

「でね、ザインちゃんにこの子とお友達になって貰って、精霊魔導士になって欲しいんだ。」

「なるなる!なります!精霊魔導士! きゃ~!かわいい~! 

 レジーナちゃんって言うの?私とお友達になって~。」

『うん、良いよ、ザインおねーちゃん、よろしくね。』

「尊い!超かわいい!レジーナちゃん、私の名前は正式にはザイデリュースよ、よろしくね!」

『ザイデリュース、うん、わかった。』

「ザインちゃん、レジーナはね、こう見えて風の攻撃魔法が得意なんだよ、契約してあげたらどんなのが使えるか教えてくれるから契約してあげて。」

「するする、契約でも何でもしちゃう!! 精霊魔導士にでも何でもなる!」

 ツボに入ったらあっさり騙されて謎の道具とか買わされてそうだな、この子・・・

「そしたら、このステッキを持ってね。」

「これは?」

「魔法のステッキです。」

 プラズマ○リアの魔法少女ステッキにそっくりなのを作ってあったりして・・・

 この際ハッキリ言おう、このステッキは魔法少女っぽいコスチュームに変身できると言うだけな普通の玩具だったりする。

 何でこんな物を渡すかって?決まってんじゃん!ザインが可愛いからそんな格好させたかったからっ!

 ただそれだけの為にそんなしょうもない魔道具玩具作る私もどうかしてるとは思うけどね・・・

 変身の呪文とポーズを覚えさせて、変身は問題無く成功するようになった。

 次に上級精霊を呼び出す時のお作法として、ポーズとせりふを教えた。

「ハイエルフ様、これ、必要?」

「魔法を使う時のお作法だと思って欲しい。」

「ハイエルフ様は?」

「私はほら、ちゃんとここに変身アイテム持ってるから。」

 たまたま身に着けていた、ハート形の魔石をあしらったネックチョーカーを指さす。

「ハイエルフ様の変身、見たい。」

 う、マジか、適当な事言うんじゃ無かった・・・

 羨望とワクワクのまなざしで見つめられてしまった。

 くそう!余計な設定するんじゃ無かった、判りましたよ、やりゃぁ良いんでしょやりゃぁ。

「エリー!フラーッシュ!」

 私の周囲にいるナノマシンをフル稼働して無理やり疑似的に変身をする私であった・・・

 ちょっときわどい格好なので恥ずかしいけどしゃぁねぇか・・・

 アァん?胸がネェだぁ!? どこのどいつだンな事言う奴!出て来いや!

「尊い、ハイエルフ様。」

 -----

 こうして風精霊レジーナとの契約をしたザインだったが、まだまだザインの興奮は冷めやらないのだ。

「次はね、水精霊のウンディーネちゃん。」

「まだ居るの?契約しますします!ハイエルフ様早く呼んで!」

「はいはい、じゃあ呼ぶね~。」

「わくわく。」

「水よ集わん、我の元へ、我が名はあなたの友 エリー、顕現し賜え、其方の名はウンディーネ!」

 淡いブルーの光が集まって来る、段々と姿を変えて行く。

 そして透き通った幼女の姿に成る。

『呼んだ?エリーお姉ちゃん、あ!キューティーエリーだ!』

「ありがとう、ウンディーネ、新しいお友達を紹介してあげたくて呼んだのよ。 ってかその名前で呼ばないで、むっちゃ恥ずかしいから・・・」

 っつーかナノマシンめ、余計な知識付けやがって、っつーか教えた憶えないんだけどな。

『新しいお友達?』

「そうよ、紹介するわね、エルフのザインちゃん、ザイデリュースって言う名前なの。」

「か、かわいい・・・尊い、萌え死ぬ・・・」

「死なれたら困るので落ち着いてね、ザインちゃん。」

『ザイン~!大好き~!お友達なって~!』

「うん、お友達になってね、私もウンディーネちゃん大好きよ!」

 何か知らんがむっちゃ相性が良さそうな反応がナノマシンで構成されてる筈のウンディーネから返って来て驚いた。

 こうして、世界初めての精霊魔導士は、風と水の上位精霊との契約を果たして爆誕したのだった。

「あ、ちなみにウンディーネちゃんにもレジーナちゃんにもお姉ちゃんが居るので、頑張って魔力を高めて呼び出せるようになってね。」

「お姉ちゃん!?」

「そうよ、お姉ちゃんの精霊が最上位精霊でこの子達は上位精霊よ。

 召喚出来るようになったらこの子達が何処に行けば会えるか教えてくれるから、がんばって。」

「ハイエルフ様、ありがとう。」

 大はしゃぎでザインは帰って行った。

 あ、あの子あげたゲーム機忘れてるわ、もう興味は精霊に移っちゃったから良いのかな?

 翌日、ファングの討伐を受けたタイタンズだったが、討伐は成功したものの、ザインのやり過ぎで売り物に成る部位の評価額に問題ありで、キースに叱られ、クリスの背後に隠れてしょぼくれるザインの姿があった。

 うまく制御できるようになろうね、頑張れザイン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る