第48話 ミッション:阿保貴族を阻止せよ!2

      ミッション:阿保貴族を阻止せよ!2

「さぁ、それじゃ行って来るね、パーティーの始まりだよっ!」

 キースが出鼻を挫くように一言つぶやいた。

「酷い事に成る予感しかしねぇな・・・」

 あのねぇ、さすがの私でもそんな惨い事にはしないってば。

「さぁ、それじゃ行って来るね、パーティーの始まりだよっ!」

「何で二回言った?」

「いや、大事な事なので二回言ってみましたが何か?」

「どこが大事なんだ?」

「それツッコむ?」

「「え??」」

 あのな、キースと遊んでる場合じゃ無いんだってば、私のナノマシンネットワークで送られてくるLIVE映像ではあの阿保貴族は辺境伯のお屋敷に逃げ込む所なんだよ、入られたら色々面倒だからすぐにでも飛び出したいのに、変な突っ込み入れるから、もう。

「あ、キースと漫才してる場合じゃ無いじゃん!」

「ああ、すまんすまん、ついツッコみたくなって。」

 キース突込み体質に認定。

「しまった間に合わん、行って来るね。」

 私は大急ぎでナノマシン補正をフルに使って身体能力強化を施すと、一直線に建物の屋根の上を伯爵の居城へと全力で駆け出す。

 私の今の体重は、身体年齢が低い事も手伝って、42㎏程しか無いので全力で飛んでも屋根が抜け落ちる事は無いだろう・・・と思う。

 ---------------

 ようやく居城が見えて来た・・・ちょっと間に合わなかったか、残念!

 だけどこのまま塀飛び越える気だからまぁ良し!

 どこが良しだと言う突込みは募集して無いよっ。

 塀を飛び越えると、敷地に通された阿保男爵が居城の玄関口に向かって呑気に歩いて居た、これはチャンス!

 目の前に降り立って、言って見たかった一言を言ってみる事にした。

「えへへ、わ・た・し。 来ちゃった♡

 そこのドン引きしてる人、ここ、笑うとこだからね?

 突っ込むとしたら、来ちゃったじゃねぇよっ!です。」

「なっ!貴様何処から!」

「突っ込みのセリフはそうじゃねぇっつってんじゃんっ!

 まぁ良いわ、そこからだけど?」

 塀の方を指さして言うと、

「そんな事を聞いてるんじゃない!何で塀を飛び越えて来たんだ!」

「あったから?」

「・・・・」

 何だかプルプル震え出した。

「何か可笑しなこと言った?私。」

「何なんだ貴様は!」

「私はエリー! 冒険者ですっ!」

「ふざけるな!」

「ふざけて無い、私はいつだって真剣だもん!」

 当然では無いか、私はいつだって真剣に笑いを追求して居るのだ、笑顔は人を幸せにするのだよ、その信念を貫く為に悲しむ人を救おうと作った欠損補修技術の集大成こそ義体であるし、増え過ぎた人口を減らすのでは無くもっと大きなマーケットに旅立たせる為に確立した超高速航行や超空間航行なんだから。

 私は初めからブレて居ない!ブレて居ない!

 大事な事なので二回言っておきます!

「そこのお前!どこから入った!」

 おっといけない、警備兵に見つかってしまったでは無いか。

「私はこの阿保男爵に用が有って来た、冒険者のエリーです、こいつだけ連れ出せればそれで良いので手出し無用に願います!」

「なんか趣旨がおかしいと言うか視点が変なんだが?」

「良い所に来た、助けてくれ! 突然襲って来た幼女の皮を被った魔人はこいつの事だ!」

「おいおい、随分な言われようだな、私は見た目は幼女かも知れんが魔人では無いし突然襲い掛かったりはしていないぞ、元はと言えばお前が私の知人達を拉致しようとしたからそれを阻止しただけじゃないか。」

「とにかくこの敷地内での争いは容認出来ない、両者とも拘束させて頂く!」

「な!わしもだとっ!?」

「ふん、私を拘束したければ戦闘用AIアンドロイドが30体は必要だぞ?」

「ちょっと何言ってんのか意味が解らんが?」

 仕方ないから一暴れするか、と思って居ると、屋敷の方から声がした。

「何をしている、ここは私の屋敷だぞ?」

「辺境伯様! この魔人に私の私兵は皆殺しにされてしまったのです! ご助力を!」

「何言ってんのこのイカレポンチ(死語)は、おっさんの部下の騎士達は一人も死んで無いしこんな可愛らしい幼女を捕まえて魔人とは何だ魔人とは!」

 辺境伯が割って入って来た。

「まぁ待て待て、カースは少し落ち着きたまえ。

 それで君は? 私はこの男に、聖女を教会まで護衛したと言う冒険者に会いたいので連れて来てくれと頼んだだけなんだが、何故こんな大事になって居るんだ?」

「成程、貴方がこの街の領主殿でしたか、この阿保は事もあろうかそのタイタンズを罪人扱いした上に捕らえろと私兵に申し付けて一暴れしたのだ、私は彼らの友人として容認出来ないと言ってそれを治め、こうして逃げ出した彼を逆にとらえに来たのだ。

 ちなみに私はソロで冒険者をしているエリーと申します。」

 と言って、貴族では無いがカテーシー位は嗜んで居るので丁寧に挨拶をする。

「何だと! カースよ、貴様何をしてくれたのだ、私は今この領地で起こりかけている問題を解決するべくして聖女とやらに会う為に情報が欲しかっただけなのだぞ、何故情報提供の為の召喚を頼んだのに罪人扱いをしたのだ?」

「何を甘い事を申して居るのです!

 冒険者のような平民以下の貧民や孤児の集まりの様な下賤な者など丁寧に召喚しても来るはずが無いでしょう!?」

 聖女の仮面を取り出し、ゆっくりと被りながら私は静かにキレていた。

「ほう?聞き捨てなりませんね、私が下賤だと?

 では貴様に問おう、この聖女の私が下賤だと?」

 と言ってローブを羽織った。

 しまったなぁ、ちょっと冒険者の皆を馬鹿にされたので頭に来ちゃってついポロっと・・・ とか思っても後の祭りである。

「なっ!馬鹿なっ! こんな化け物じみた攻撃力の魔人が聖女だと!?」

「当然でしょう? 聖女は一人で旅をして居たのですよね? 彼ら、タイタンズと出会う迄は。

 そんな人物が弱い訳が無いですよね?」

「全くその通りだな、カースよ、貴様の処遇は追って沙汰を下す、全く余計な事をしてくれたものだな。

 衛兵長、この阿保を捕らえて地下牢へ幽閉して置け。」

「は、仰せのままに。

 カース男爵、ご容赦願います。」

 阿保男爵は連れて行かれてしまった。

「さて、聖女殿は冒険者であるとはどう言う事でしょうかな?

 屋敷でじっくりお話をお聞かせ願えますかな?」

 はぁ、こうなるよね、やっぱ。

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