第46話 シーマ辺境伯と寄子

        シーマ辺境伯と寄子

「どうだ?ジュドー、聖女関連の情報は手に入ったか?」

「旦那様、誠に申し上げ難いのですが、聖女の足取りは全く掴めておりません。

 ですが、聖女をエスコートしたと言う冒険者チームは突き止めました。」

「ほう、して、その冒険者にはコンタクトは取れそうなのか?」

「ごくごく普通のC級冒険者のようですから、問題無いと思います。」

「そうか、では会いに行くぞ。」

 そこへ、たまたま寄親である辺境伯に融資の嘆願でシーマ伯領を訪れ控えていた、寄子のガルベージ・カース男爵が割って入った。

「お待ちください、その任、わたくしめにお任せ下さい、必ずやその冒険者一味を連れてまいります。」

「カースよ、それではお主に任せよう。

 ジュドー。冒険者のグループ名を教えてやれ。」

「は、ではお伝えいたします、彼らはこの領地の冒険者ギルドに登録されて居ます、C級冒険者パーティー、タイタンズです。」

「お任せ下さいシーマ伯爵、必ずや捕らえてまいります。

 早速行ってまいります。

 その代わりに、融資の件、よろしくお願いいたします。」

「うむ、前向きに検討しよう。

 あ、待て、今、捕らえるとか言わなかったか? くれぐれも丁重に・・・行ってしまったか、大丈夫なのだろうか・・・」

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 三日連続で真面に睡眠が取れなかった冒険者達が目の下にクマを作ってギルド内で微睡んで居る、キース達タイタンズも被害者であった。

 特にクリスちゃんなんかは、少々鬱病気味なのでは無いだろうか、何事かブツブツと独り言を言って居る。

 うん、多感な時期にあんな激しいの聞かされたら耳年増なこの位の年齢の子には少々毒・・・

 ギルド内ではかなりカオスな空間が出来上がって居た。

 流石にあの騒音と言うか、あの声を三日連荘で夜通し聞かせられたら、多感なお年頃で無くともたまったものでは無かった。

 やっぱりカイエン殿はいっぺん死んで見たら良いんじゃ無いかな? って仮死状態になら一回なってるけどな。

「邪魔するぞ、ワシはガルベージ・カース男爵だ、このギルドに所属して居るタイタンズとか言う者達をだせ。」

「カース様、私はこのギルドで受付をしておりますサリーと申します。

 失礼ながら、ギルドへのご要望は私かギルドマスターを通してお願い致します。」

「ふん!貴様らは隠し立てせずに言われた者達を差し出せば良いのだ!

 タイタンズとか言う連中は何処に居る!

 この街の領主であるシーマ辺境伯様よりの命令で捕らえねばならんのだ!」

 部屋から出て来たギルマスが割って入った。

「ほう、それは只事では無いな、奴らが何かしたとでも言うのか?

 あいつらはこのギルドでも今一番勢いのある有能な冒険者だ、はいそうですかと簡単に渡す訳にも行かねぇ、ギルドマスターの俺が話を聞こう。」

「ふん、平民ごときが随分とほざくでは無いか、大人しく差し出すのがお前らの為だと思うぞ。」

「残念ながら俺はただの平民と言う訳でも無いんだ、家督は兄が継いだから好きにさせて貰おうと思って冒険者となって、今はこうしてギルドマスターになって居るが、俺の兄は現ヤリス子爵なんだ。

 兄から聞いて居るぞ、カース男爵、随分とやらかしているそうじゃないか?」

「な、何だとっ! 元貴族であろうが家を飛び出して平民になった者が無礼だぞ! 舐めるなよ!」

 どうやら話の通じないタイプのようだ。

「なんだ?俺達になんか用なのか?」

 そこへタイミング悪くキースがやって来て仕舞った。

「貴様らがタイタンズとか言う冒険者か?」

「ん? ああ、そうだぜ、何だ?おっさん。」

「おい!こいつらを捕らえろ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 カースの引き連れていた兵士達がタイタンズの3人を取り囲んだ。

「おい!ちょっとまて、俺達は何も悪い事してないだろう! 理由位聞かせろってんだ!」

「やかましい!貴様らは大人しく従って居ればいいのだ!」

 やれやれ、何と傲慢な事か。

「ちょっと待て、彼らは捕らわれるような事はしていないぞ、何なら俺が相手になるが、それでも連れて行くと言うか?」

 カイエンさんや、勇者が出て行くとなお話が拗れそうなので止めた方が良いのでは?

「何だ貴様は!?」

「俺はカイエン、名前を聞けば知って居ると思うが、勇者だ。」

「ふん、魔王に届かず逃げ帰って来た腰抜け勇者か、貴様ごときに用は無い!」

 ほら拗れた、人の話聞かないタイプみたいだから色々捻じ曲げて理解してる気がしたんだよね、恐らく勇者に対する知識も曲解してるんだろうと思ってた。

「カイエンのおっさん、あんたが出るほどの事は無いと思う、俺達が行けば良いだけだろ?」

「ほう?物分かりが良いですね、さぁでは大人しく捕らわれなさい。」

 やれやれ、仕方ないな、いかに勇者と言っても貴族が相手じゃ色んな意味で分が悪い、ここは貴族だろうが気にして居ない私が行くしか無いだろう。

「キース、待ってくれるかな?

 君はそれでも良いかも知れないけどクリスちゃんとザインちゃんがかわいそうじゃん、私ならばこいつ等なんか関係無いし蹴散らしてやるけど?」

「エリーか、お前に掛かったら死体の山が出来そうだから出てこないで良いぞ。」

「人聞きが悪いな、大丈夫だ、死人に口は無いからな。」

「それはある意味問題発言だと思うぞ。」

 ギルマスが突っ込み入れてきた。

「ほら、私だったらこの国の国民では無いからな、私が指名手配になったところで誰にもどうする事も出来んと思うぞ?」

「エリー、お前の思考はどうもこう、極端な所が多すぎるんだよ、やりすぎっつーかな。」

「ええい!どいつもこいつもいい加減にしろ! 面倒だ、抵抗した奴は斬って良い!捕らえろ!」

 あ、とうとう強硬手段に出た。

「ほら、こんな奴に話通じないんだからやっちゃえば良いんだよ・・・っと。」

 と言ってミニ・ガンを構え、訓練用ゴム弾で襲い来る兵士達を一掃した。

 ゴム弾だって当たったら半端じゃ無く痛いしな、馬鹿にしてると怪我するよ?

「さて、殺してはいないけどお前の連れて来た兵は戦闘不能だ、お前はどうするのだ?」

「き、きさま! 覚えて置け!」

 横暴貴族は逃げだしたのだった。

「エリー、やりすぎだ、どうするんだこいつら。」

「こんな奴らふん縛って動けなくしてから怪我だけ直してやったらいいさ、どうせ命令で仕方なくやったって所なんだろ?」

「この娘の言う通りだ、俺達は何も知らない、捕らえろと言われたからそう行動したまでだ、この冒険者達は犯罪者か何かでは無いのか?」

「何でもかんでも上司の発言が正しいと思わない方が良い、あの貴族は色々やってるそうだからな。」

「俺達が犯罪なんかするもんか、孤児だからって誰しもそう言う方向に進むと思うなよ?」

 キースが、ギルマスの発言にかぶせるようにして言い放った。

「う、済まない事をした、お願いだ、何方かあの阿保男爵を止めてくれ、多分辺境伯様からの依頼内容も曲解してるのだろうと思う。」

 あ~あ、この騎士団長っぽいの自分の主の事阿保男爵って言っちゃったよ、言い切っちゃったよ、この人もうあの男爵の所には帰らないだろうね、多分。

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