第37話 面接、問診1
面接、問診1
聞いちゃったからには受けないとなァ・・・
性分なんだよね、つい同情とかが入っちゃう。
悪い癖なのも判ってるし同情しても何の得もしない事だって良く判ってる。
おかげで私の人生の一番楽しい、いい筈の時期はずっと逃亡の日々だったのだから。
今度は満喫するぞーって思ってたのに、性分は変わらないんだよねぇ。
まぁ仕方ない、事情を伺っちゃって、ちょっと同情して、そして治してあげたらこの人は死にに行くんだって思ってもそれを敢えてしようとしているこの人の行動力に感動すらしちゃったのだ。
しかも、今回の話の流れでSランクが居ない本当の理由も判っちゃったしさ、魔王だろうが魔人だろうがドラゴンだろうが倒せるような頑丈な体を作ってやろうじゃ無いの。
何なら全身義体も視野に入れて面接と洒落込もうじゃないのさ。
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とりあえず会って話をする事にした、第一会議室をギルドから無償提供されている、わたしがご飯を頂いている今の隙にもう元勇者は来ているかもしれないが、朝から何も食べて居ないのでどうか勘弁して欲しいと思う。
それにしても、このギルド食堂のランチはうまい、他の所で食べるより格段においしいのは何故だろう、もしかするとここの食堂のあのおばちゃんは私と同じ世界から転生して来たのでは無いかと思う程である。
まぁ私の方が料理はうまいと思うけどね、なんつったって料理の実績が長い、700年も自炊して料理作ってりゃそりゃ誰よりうまくなるわな。
今度おばちゃんにあの唐揚げの作り方を伝授してみようかなっと。
おっといかんこうしちゃ居れない、お腹もいっぱいになった事だしこんなバカな事考えながらゆっくりしてないで早く第一応接室に行かねば・・・
第一応接室に到着すると、元勇者殿は思った通りもうすでに来て待って居た。
「あなたが元勇者殿ですか?」
「ええ、私がそうです、初めまして、カイエンと申します。」
こんな見た目幼女の私に対して何と礼儀正しい方なのだろう。
しかも恐らくだいぶん待たせたと思うのだが、苦言の一言も無いとは、出来た人だな。
それにしても、思った通り勇者としてドラゴンやら魔人やらと戦う事を考えると体力に少し疑問を感じる年齢になって居る気はするのだが。
ってか、魔人とかってやっぱ魔法使うんじゃないのか?
ドラゴンはブレスだろうけどな。
話を元に戻します、面接開始である。
「私が義体の開発者です、サイエンスアルケミストと言うレアジョブを賜って居る、エリーです、よろしく。」
「ああ、よろしく。」
「っと、それでは、いくつかお聞きしたい事が有ります。
よろしいですか?」
「ええ、何でも聞いて下さい。」
「まず、お歳はおいくつですか?」
「今年で42ですね。」
ギルマスよりも7つも年上だった。
織田信長の時代みたいに、人生50年とか言われて居る程の環境なので相当な年齢と言えよう。
「事故にあったのはいつごろでしょうか。」
「えー、勇者に22で認定されて、事故で腕を失ったのが1年半後、24でした。」
「成程、ではその後、片腕であるが故に討伐依頼などからは遠ざかって居る訳ですね?」
「そうですね、あまり強い魔物との戦闘はしていません、ゴブリンかコボルト、強くてもオークが精々です。」
ゴブリンやコボルトか、最も初級の討伐対象かそのちょびっと上と言う所だな、かなり体に弛みも出てしまって居る感じだし、納得と言う所か。
「では、ご家族は居ますか?」
「はい、8つ下の妻を25の時に娶りまして、今は3人の男の子と2人の女の子、合計5人の子供が居ります。」
「そうですか、すると、もしも生殖機能が無くなっても構いませんか?」
「ダメになると言う事ですか?」
「いえ、ギルマスよりも大分年上の貴方の体では、片腕の義体化をしてしまうと、どう処置しても他の筋力が確実に追いつかないので、どうしても今の体をそのまま残して左腕だけを義体化すると言う場合、今の片腕しかない状態で半年以上に渡って遠征軍予備役並みのハードな訓練を行って体をしっかり作り直さねばいけないと思われます、何故ならば義体は割と重いので、通常の腕の倍近い重さを支えてもバランスを取る事の出来る強靭な肉体を作らないといけなくなるからです。
ですが、全身義体にすると、常人の10倍の腕力、脚力等を備える事も可能です、何でしたら目なども義体にすると、遠視能力や敵の行動予測演算や、光学迷彩等も利用可能です。」
「その行動予測演算と言うのは、未来視魔眼のような物ですか?」
ん?何だか素敵な単語を聞いたぞ、魔眼って在るのか! だったら魔法在っても可笑しくねぇじゃんか!
「そうですね、似たような物です。」
「えと、もう一つのは?」
「光学迷彩ですね、あれは、姿を背景に溶け込ませる技術です。」
「そんな事が出来るんですか!」
「ええ、ですが代償として、生殖機能を失います、機械の体になると言う事なので。」
本当は私は生身だけど電脳化だけで光学迷彩を実装してるけどね。
「その、機械とは何でしょう?」
「カラクリ、と言った方が良いでしょうか?」
「成程、魔道具のような物ですか・・・」
「まぁ、似たような物ではあるかも知れませんね。」
「今日一日、考えさせて貰えますか? 妻に相談をしてみようと思います。」
「ええ、何でしたら明日、奥様を連れて来て頂けますか?」
「そうですね、私一人で決められる問題では無くなってしまった気がしますので、そうさせて頂こうと思います、それにしても、貴方は何者です?まさか魔人では無いですよね。」
魔人とか言われるとは心外だ、色々長くなる説明しか思い当たらないので正直に転生者だと明かした方が良いし、この際話しとくか。
「私は、今よりずーっと遥か未来から来ました。
まぁ信じては頂けないのが普通なので信じろとは言いませんが。」
厳密に言うとこの世界では無いんだけどね。
そこまで言うと話が拗れるので強ち間違いでは無いしそうして置く。
「到底信じられる事では無いですが、信じます。」
それを人は信じて居ないと言う。
そう言う反応は想定済みだし、まぁ良いけどね。
「では、明日、お待ちしております、朝からギルド食堂で何か頂いて居ると思いますので。」
こうして面接は、とりあえず終了した。
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