第36話 初めての指名依頼
初めての
BGM:【BBクイーンズ】はじめてのおつかい
とか言う冗談はシャレに成らないので止めておこう。
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宴会はいつまでも終わりを見せなかったため、私は宿に帰る事を伝え、好きなだけ飲んで居て良いと告げておばちゃんに多めの金貨を手渡しておいた。
流石に疲れたよ、今日は・・・。
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あっと言う間に翌朝・・・
今日は昨日の熊さんの素材で冒険者ギルドが買い取れない毛皮等を売りに商業ギルドへと来ていた。
「次の人、エリーさーん、どうぞ―。」
はいはい、やっと私の番か、商業ギルドに持ち込む人はみんな早起きでいけないな、未だ白み始めた頃に宿を出た筈の私の番が回って来たのはもう正午近いじゃ無いか。
こんな事なら予約票だけ書いたらご飯でも食べに宿に戻っておくんだった、次からそうしよう。
待ってましたとばかりに、マジックバッグに見せかけたショルダーバッグを開けて、その内側に開いたストレージから大量の毛皮と、大量の熊の骨の数々を出すと、受付嬢はびっくりして居た。
「あの、これって何か月か溜め込んでましたよね?」
「いえ、昨日狩ったばっかりですよ?ウソだと思うなら冒険者ギルドで確認なさって下さいね、昨日大騒動になってたので知らない人は居ないのですぐ確認取れると思いますよ。」
「そ・・・そうですか・・・」
ちなみに熊肉はしっかりと血抜きをした後に、ギルドの食堂で串焼きやステーキになるのでギルドが買い取っている。
「お待たせしました、確認が取れましたので、纏めて一律で買い取らせて頂きます。」
「ねぇ、もし何カ月か寝かした物だったら値段ってどう付けるの? 教えてよ。」
つい、追及してしまう私の悪い癖だ。
「えっと、それはですね・・・」
「鮮度なんか関係無い筈の毛皮に難癖付けて買いたたく気だったって事だよね。」
「・・・。」
「でもね、残念なことにさ、このマジックバッグ、私が少し改造したら、収納した物が殆ど劣化しない事に成っちゃったんだよね、偶然だけどね。」
にやりと笑いながら、内心、ヤッベやっちゃった、とか思った私だった。
「そのマジックバッグを売って下さいよ!」
やっぱそう来たか。
「ごめん、それも無理、私にしか使えないようになってるんだ、この他の人に開けないって言う機能付けようと思って弄ってて偶然出来ちゃったから諦めてくれると嬉しい。」
「ますます欲しいじゃないですか、同じ物作れませんか?」
「あー、無理じゃ無いかな?その都度使用者の遺伝子登録必要だから、使う人が同席して無いと作れないし。」
こう言う時はああ言えばこう言うで取って付けた理由を次々と言えるように先読みして考えておくのだ。
「う、そうなんですか、所で遺伝子って何です?」
そうか、知らないか、そう言えばそう言う科学レベルでは無かったよな。
「遺伝子ってのは、生き物の体や性別とかの情報を管理している体が持ってる機能の一部で、例えば子供が出来ると父親と母親の姿に少しづつ似てるよね?
そういう情報が詰まった体の情報庫の事。
これは私にしか調べられないと思うから私に作り方を聞いた所で実際に作る事は出来ないでしょう、だから無理です。」
「半分以上意味が判らなかったけど何となく言いたい事は解りました、これを上に報告しても宜しいですか?」
「何で?そうやってすぐに上に報告って、秘匿義務は?
ここの商業ギルドはそんな基本的な事も出来ないんですか?」
「う・・・しかしですね・・・」
「しかしも案山子もお菓子もむかしむかしも無いわ!もしもあなたが秘匿義務を守れないと言うならこの場で死んで?」
と言ってM19ボディーガードスペシャルを抜いて額に擦り付けた。
まさかこんな所で役に立つとは思いもよらなかった、この遊びで作った拳銃・・・
「ず・・・ずびばぜん・・・。」
いきなり泣き出して涙声で謝られてもなァ・・・
「それじゃ貴女が秘匿する自信が無いと言うならこの場で記憶を消してあげましょうか?」
催眠術で簡単だもんね。
結局、面倒なので催眠術使う羽目になっちゃいました。
ついでに次から気に成らないように暗示も掛けといた。
あーめんどくせえ、お腹空いたしさぁ。
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換金が終了したのでお昼を食べに行きがてら冒険者ギルドへと顔を出そうと思い、戸を開けると、サリーちゃんが私を見るなり声を掛けてきた。
「あ、エリーさん、お待ちしてましたよ~、エリーさんに指名依頼が届いてるんですけど、エリーさんは未だDクラスだし、内容が冒険者ギルドで受けて良い物なのかが少々微妙でして、ギルマスと相談したんですが受けちゃえと言われたのでこちらで手続してください。」
「えぇ~、何で勝手に受けたン~? 私嫌な予感しかせんのやけど。」
なんか訛ってしまった。
「まぁまぁ、そう言わずに、結構いい報酬になると思いますけどねぇ~。」
「私は報酬の良い悪いだけではクエスト受けないって決めたの! たった今だけど!」
「じゃあ依頼内容だけ聞いて下さいね、依頼主は元勇者です。」
「は?勇者?しかも元って何?」
「フフフ、興味持ちました?」
「いや全然、ただあまりにも突拍子も無かったから驚いただけ。」
魔王とか、今の所私が調べられた範囲内では居ない筈なのに勇者居るの?
おかしくね?
「ねぇ、そもそも勇者って何と戦うの?どこが冒険者の剣士職と違うの?わかんないんだけど。」
「えっとですねぇ、勇者は、Aクラス以上の冒険者で、三つ以上の剣技スキルを持った人になります。
で、国や領都からの指名依頼を受けて、脅威となり得る強い魔物とか、ドラゴンを倒す為に派遣される人の事を言います。」
え、ドラゴン居るんだ?この世界・・・
魔法無いとドラゴンの存在って揺らぐ筈なんだよね、あんな小さい羽根で飛べるサイズじゃねぇ、せめてあの図体ならば体長の三倍の大きな羽が無いと無理だしな。
「へぇ、居るんだね、勇者なんて、でもそんな程度でドラゴンなんか倒せないよね?」
「そうですねぇ、実際討伐されたと言う記録は有りませんが、人間は割と強いと言う印象をドラゴンに与える事が出来る為、街の平和は守る事が出来る上に、勇者はその名の通り命を落としてまで危険な所に赴いて街への被害を未然に防ぐ使い捨ての駒のような存在です。」
「ハッキリ言ったね、あんた、捨て駒って、そこまでハッキリ言えると恐れ入るわ。
で、そうなると益々解らないのは、元って言う部分なんだけど、勇者って死にに行って国を守る使い捨てな存在なんだよね?
ある意味人身御供と言うか生贄と言うかさァ。
何で生きてるのさ。
それと、私が登録した時にちらっと話に出たラインハルトとかって言うド定番な名前の人は何で英雄であって勇者では無いの?」
「依頼の方は今の勇者様の前の勇者様に当たるのですけど、それが、ドラゴン討伐の任を受ける前にちょっとした事故で利き腕を失ってしまったんですよ。
で、今はこのギルドで昨日も貴女の討伐したビッグベア―を運ぶ作業に加わって居ました。
それと、ラインハルト様は隣国のアルファード帝国の第一王子、ラインハルト・ハリアー・アルファード様なので勇者への登録は出来ません、王位継承権が第一位なので免除されています。」
「居たのか、元勇者、あの飲んだくれの中に・・・」
「それで?何となくわかったけどその内容は?」
「彼の左腕、利き腕を直して欲しいと、何なら資産の8割をやっても良いから私に仕事を全うさせて欲しい、だそうです。」
ああ、聞くんじゃ無かった・・・
ってか、初めての指名依頼がこれかよ、重いってば、てっきり何か取って来て欲しいとかそう言うのだと思ってたのにな。
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