第34話 やりすぎ 1

          やりすぎ 1

 キースの麻酔がきれる時間だ。

「う・・・終わった、のか?」

 目を覚ましたキースが起き上がろうとしたので、そおっと起きるように注意を促した。

 なんつったって筋力が今までの5倍程になってるからね、あんまし勢い良く起きると飛んでっちゃう。

 ちなみにクリスちゃんはあのまま未だ目を覚まさない。

 作業台に座ったキースが、確かめるように右腕を動かしている。

「どうだ、新しい腕は。」

「おう、少し重い気がするけど、パワーはかなりあるっぽいな、スゲーわ、やっぱエリーを信用して良かったぜ、ありがとうな。」

「本来はな、この手術では、こっちのお金で大金貨4枚以上に成るんだ、でも今回は私を助けようとして負った怪我だから私の気持ちが金を取るなんて許せない、調子が悪くなった時のメンテナンス料金も据え置いておくから何かあったらすぐ見せに来い。」

「おう、さんきゅー、所で、クリスってなんで寝てんの?」

「本当に馬鹿だな、キースもクリスも、お前の手術を見なきゃいいのに見ていて、気を失ったんだ。

 お前の頭が開かれて中から脳みそ取り出されたのがショックだったんだろ。」

「ああ、そう言う事か、見なきゃ良いのにな、ホントに。」

 と言って笑うキース。

「今のうちに説明して置く、先ずお前の身体能力は、筋力が今までの5倍になって居るので全てが向上して居る、普通に生活する時はむしろその力が邪魔になるのでしっかり制御するように、まぁ制御もしやすいようにはしておいたので気を使ってくれとだけ言っておこう。

 それと、今キースの視界の隅っこに何か見慣れないものが有るよな?」

「ん?あ、これかな?」

「それに集中して見ろ。」

「こうか?・・・おお。」

「うまく機能して居る様だな、今お前の見て居るのは今の右腕の状態だ、その数字を上げると、腕のパワーにブーストが掛かる、下げると腕力も下がるがその代わりに精密な作業がやりやすくなる。」

「へぇ、これをこうするんだな?」

「あまり上げすぎると壊れる可能性が有るから制限でリミッターを課してある、それ以上に数字が上がると赤く表示されて上限まで戻る事に成ってる、数字の最低は1まで行くぞ、でもそこまで下げる事は無いだろうな、私のようにナノマシンを作ったり改造するなら必要かもしれないけどな。」

「もしも上限まで上げて間に合いそうも無い時とかどうするんだ?」

「そんな事に成る前に死んでるんだろうと思うけど、万一そういう時は、数字の横にあるoffの表示を意識して操作すれば、2分だけ解除出来るようにはしてある。

 あまり負荷をかけるとお前の脳にも負荷がかかるのでお勧めはしないけどな。」

「ううん・・・」

 お、クリスちゃんがお目覚めになりそう。

「おっと、サプライズサプライズ、と。」

 キースは横に成ると、自分の顔に布をかけた、お前そう言う悪戯やるキャラだったんかい。

「あ、キースは?!」

 慌てて立ち上がったクリスは、横たわったキースの顔に布が掛けられている様子を見て狂ったように叫んだかと思うと私の方へ駆け寄ってきた。

「絶対助けるって!失敗しないって言ったじゃ無い!!!」

 と怒鳴ると同時に思いっきりグーパンチをしてきた。

 避けようと思ったんだけどその気迫に負けて避けられなかった、痛い。

 その様子を聞き耳立ててたキースがびっくりして置きあがった。

「ちょ、待て待て、すまん俺が悪かった、生きてる、生きてるから!」

 目に一杯涙を溜めたクリスちゃんがキースに振り返って向き直ると、遠心力で飛んだ涙がキラキラして奇麗だった。

 ・・・んだけど、次の瞬間、振り返りざまの大振りフックがキースの顔面を思いっきり捉え、その威力で吹っ飛んでいくキース・・・

 殴る瞬間、怒りでクリスちゃんのマナが反応して身体強化が発動して居た。

 あ~あ、こりゃ痛いわ~。

 私も痛かったけどそんなの比較に成らないほど痛いわ、あれ・・・

 そしてクリスが私に向き直ったので、やられると思ったら、又も涙を一杯目に貯めて、「ごめん・・・」

 と言って俯いたのだった。

「キース吹っ飛んだのに、平気だった、やっぱりハイエルフ様・・・」

「だから違うってば。」

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