第7話 エリーの過去2
エリーの過去2
目覚めた時、周りはどこぞの軍国主義国家の諜報員と思しき連中が占拠しており、恩師や友はその銃弾によって倒されて居た。
私の手術は、まさにぎりぎりで間に合ったようだった。
恩師を、仲の良かった同期研究生達を殺害された私は、怒り狂った。
その場に居た諜報員達を全員殴り殺した私は、研究資料の全てを私の電脳へとコピーし、研究所専用の6基の原子炉を暴走させ、その技術の流出を完全に食い止めるとすぐさま取って返すように私のスポンサーである、中東の某国の皇室へと逃れた。
2040年頃まで石油大国として名を馳せた、かの王国の第一王子は、私の唯一の元カレであったし、私の成した唯一の子の父親であった。
勿論この国に行けば私の娘も居るのだ。
連絡を入れると、彼はアンドロイドと化した私を快く受け入れ態勢を作ってくれた上に、私設軍隊一個師団まで派遣して迎えに来てくれた。
義体の性能をフルに使い、何とか追手から逃げ切った私は、合流場所になって居た某大型ビルの屋上にて迎えのヘリに飛び乗って脱出し、迎えの一個師団によって保護されたわけである。
北欧のとある街で偶然出会い、互いに惹かれあい、私の若気の至りで関係を持ち、私のわがままから別れを切り出した自分勝手な私に、研究者の道を歩ませてくれた最愛の人は、まだ私を愛してくれていたのだと思いうれしかった。
彼の国でなら、私の研究成果を存分にふるっても構わないと思った。
その後数年間、私は、脳波信号で動かせる義手や義足を作り続け、石油が売れなくなったが為に食いつぶしを続けていた王国に新たな財源を生み出した。
時には完全な全身義体の依頼もあり、数名の全身義体保持者も生まれた。
彼の全身義体も私は作ってあったのだが、彼は義体へ移るのを長らく拒否し続けた。
そんなさ中、突然、私を渡せと、宣戦布告がなされた、あの時、諜報員を送り込んで来た軍国主義国家だ。
当局の役人を殺害し、逃走した狂気のマッドサイエンティストを匿うならば宣戦を布告すると言った内容だった。
役人だと?フザケるな、あれは明らかに暗部だ。
大方私を洗脳でもしてその技術をすべて手中に収めんとする為だった事は明白だった。
この国もかなり精強な軍隊を所有しては居たが、人的資源が圧倒的であるその敵国は徐々に優勢となる。
全身義体のみの部隊を作ろうと言う私の提案が国王に却下されて居なければもっと状況は変わって居たのでは無いだろうか。
劣勢となった為に、私は彼を逃がそうと試み、かたくなに義体を拒んでいた彼の影武者に自らが成るべくして、彼の姿の義体へと自らの脳(コア)を移し、彼を守ろうとした。
だが、戦況が不利になっても引かない彼は、ついにその凶弾に倒れ、我が娘とも完全に離れ離れになってしまった私は、もしもの時にと彼が建設してくれて居た秘匿研究所へ、またしても逃げ延びてしまった。
せめて娘の所在をと探っていた私は、研究所のスーパーコンピューターに世界中をハッキングさせ、全ての国のマザーコンピューターを手中に収めた。
始めからこうやって世界中のクラウドを牛耳ってしまって身の安全を確保するべきだった。
どこかそれはイケナイ事なのだと言う凝り固まった私の倫理的価値観がそれをすることを良しとはしていなかった。
後悔は先には立たないのが道理だ。
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