序章
第4話 序章1
序章1
エリー・ナカムラにとっての時を少し戻そう。
「敵艦隊、ワープアウトします、座標、x1156384.y2225639.z0002356、当艦隊よりの距離、0.3光時!各員第一戦闘配!」
「艦長!”ゆぐどらしる”の戦術予報100%的中しました、予定通りの行動を開始します。」
「うむ、では予定通り、小惑星群にブラインド粒子散布、アーマドラグーン全機出撃! 各砲門防衛射撃準備!」
「「「「ワカヤビタン!」」」」
~時は西暦で言うと3520年、宇宙歴で言うと実に422年、人類は既に地球に留まる事を辞めていた。
この艦隊は、地球連邦政府宇宙軍所属第二太陽系ネオオキナワ星系ネオナハ星所属第一艦隊である。
先程の命令に対しての受諾の返答は、2400年頃には廃れてしまい一度は無くなってしまった沖縄弁と言う方言を復活させようと言う取り組みから発生した了解の意味の言葉であるが、正直な話長い事時が過ぎてしまった今更に復活させた言葉なので果たしてちゃんと合った意味なのかは誰も知らない、しかし高名な言語学者が大昔の見聞を解き解して拾い出した言葉なので、強ち丸っきり違う意味の言葉と言う事は無いのだろうと思って使っている。
ちなみにこの艦は第一艦隊旗艦、ニライカナイ二世号。
実に全長2200㎞、全幅800㎞、全高680km、艦内には各種野菜を栽培出来るプラントから居住区、市街地、工業区まで何でもある。
最大級の宇宙戦艦である。
”ゆぐどらしる”と言うのはこの艦に搭載されたスーパーAI、アーマドラグーンと言うのは、各戦艦に搭載された戦闘用ロボットの総称である、パイロットはアーマドラグーンに乗る訳では無く、丁度平成や令和と言った元号の時代頃のゲームセンターにあったような筐体から脳波を飛ばして操作する、人的損耗を抑える為にはこれが一番効率が良いからだ。
だが、まれに、リンクを切り損ねて撃墜されてしまい精神を破壊されて廃人になってしまう者も出なくは無いが。
ちなみに何故そんな筐体風のコックピットを有しているかと言うと、多分だがアンティーク好きな開発者の趣味だろう。
脳波を超ナノ波に乗せて遠隔操作するのだから、操縦桿や操作パネルが有る訳では無いので、パイロット一人に付き一つもこんな無駄な大きさは要らない気がするのだが、そこは割愛しておこう。
なんせ開発者は非常に変わり者だ。
700年程前に、大昔のアニメを再現したいという謎の発想から実際に人の脳を機械の体、義体に移植すると言う奇想天外な技術を生み出し自らがその実験台になる。
そして今でも、その非常識な科学技術を揮って居るのだ。
しかしそのおかげで人類は寿命からある程度解放され、宇宙に旅立つことに成功したとも言えるのだ。
その
とにかく愉快犯的な人物だ、悪い言い方をすればはしゃぎ過ぎて少々ウザいタイプとも言う。
本人曰く、「パタ〇ロが私の目指すところだ」そうだ・・・
そのパ〇リロが何かわからないのだが、本人に言わせると聖書だそうだ・・・
「やあ艦長、どうかね、今度の新しい戦術予報AIの調子は。」
突然現れたこのアンドロイドは当艦内に内蔵されて居る、彼の分身と言うべき存在だ。
どんな原理なのかは全く解らない、彼に言わせると彼とリアルタイムで繋がって居る言わば並列存在的な物だという話なのだが、そう言われると益々解らん。
ちなみに、彼と称しては居るのだが、実の所性別は女性なのだそうだが、義体の形状を何故か男性型ばかりを好んで使う為に、本来女性だと言われても彼を示す三人称は彼である、少なくとも私は女性型の義体を使う彼を見たことが無いので、私の認識ではどこまで行こうとも彼である。
そして彼自身もそれを咎めるでも無く、むしろ心地よいと思っている節がある。
彼の名は、エリー・ナカムラ、名前だけ聞くとやはり彼の本当の性別が女性である事が伺えるが、700年も前に本来の自らの体を捨て、義体に脳神経系統のみを移植した、ハイブリッドサイバー仙人のような人物だ。
どうやって唯一の生体である自分の脳神経系統を700年も死滅させずに居られるのかも謎である。
そして何故か、彼が現れると妙な懐かしさと言うか、遠い親戚に出会ったような不思議な感覚がある。
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