第2話 状況確認
状況確認
あ、でもネット接続は切れてるし、そもそもが超々ミリ波通信が圏外になってる。
本当にここは異世界なのか?
寝ている間になんか奇妙な夢を見た気がするんだけど・・・思い出せない。
その夢が何かのカギを握っている気はするんだけど。
「ま、何にせよ、こんな所に居りゃまたいつゴブリンに襲われるかわからん、街に戻るから一緒にいこうや、な?」
ゴブリンだと?
さっきの怪物はゴブリンなのか?
本気で異世界だとでも?
ここは空気を読んだ返答をしておこう。
「うん、そうだね、ちょっと私も考えの整理が付かない、ここが危険な場所と言うのなら、移動しよう。」
森を抜けると、少し離れた先に、壁と門のようなものが視界に入って来た。
「すごい、本当にファンタジーな世界みたいだ・・・」
「何言ってるんだ、街は魔物の侵入を防ぐ為に何処でもこうなってるだろ?」
そんなもんなのか、ではもっと規模の小さい村とかはどうなってるんだろう、とか心の隅で突っ込みを入れて見たりする。
都市ならば頷ける、中世以前の地球の都市はポリスと呼ばれ、大きな壁で仕切る事で他の都市からの侵略を防ぐ形になって居たのだから、だが小さな村はそんなものがつくれるはずもなく、その壁が他の都市から守るためではなく、魔物から守る?
そもそも魔物って何だろうね。その定義も判らん。
そして彼らの口ぶりからすれば魔物には何を言っても無駄らしい、つまり、村等の小さな単位でもやはり壁が存在すると言う事なのだろうか?
だとすれば村の壁に関してはある意味オーバーテクノロジーなのでは?
ああ、どうもいかん、私は科学者の端くれなのでどうしてもこう理論的に考えすぎて理解に及ばない事に直面するとこうやって考え込み悩む癖がある。
「で、お嬢ちゃんは身分証は?」
お嬢ちゃん? 私は何歳位に見られているのだ?
街の衛兵のような門番に問われて我に返るが、身分証か、こんな感じでいいのだろうか?
手のひらを上に向けて、地球連邦宇宙軍で発行してもらったIDの投影を試みたが、出ない、なんで?
あ、そうか、やっぱこの体って生身なのか?
仕方がない、ここは誤魔化しておくとしよう、こう見えて私は空気を読むのは得意な方だからな。
「すみません、魔物に襲われて紛失してしまったようです。」
「なんだ、そりゃ大変だな、じゃあこっちに来てくれ。」
「あ、ちょっと待ってくれ、この娘は倒れている所を俺達が保護したんだ。」
あ、やっぱ私って今、娘って言われる位のうら若き女性なんだな。
まぁ、腕等の肌の質感は確かに若い子のそれであると思えるが。
本当にいくつ位に見えるんだろう、後で鏡を探してみるとしよう。
「おう、キース、じゃあお前が身元保証人になっても良いって事か?」
「ああ、そうだな、乗り掛かった舟ってやつだしな、仕方ねぇ。」
「そうかそうか、キースの好みのタイプってやつだしな、まぁせいぜいクリスに嫌われないようにしてくれよ?」
衛兵がニヤニヤとスケベそうな笑いを浮かべている。
「そ、そんなんじゃねぇってば!」
いやキース君、そこまで全力で否定すると泥沼になるってば、ほら、クリスちゃんがジト目で睨んでる・・・
メモしておこう、キース君は自爆体質・・・と。
「ちょっとおまえ、なんか今ものすっごく失礼なこと考えてなかった?
ってかそういやまだ名前聞いて無かったっけ、何て名前?」
「ん、私も言うのを忘れてたね、私は、エリー・ナカムラ、よろしく。」
「ゲッ!お貴族様だったの?マジかよ!
ってか家名は聞いた事ねぇから外国のお貴族様ってとこか?
やべぇな、お嬢ちゃんとか言っちゃったじゃん、助けたって事でチャラにして、お願い。」
キース君がたじろいでいる。
「いや私はただの普通の研究者だけど・・・」
「いや、普通の人、違う、家名が有るのは、貴族だけ、でも、ハイエルフ様だと、部族名が家名の代わりに付く、やっぱりハイエルフ様?」
なんでそうなる・・・
「いや、私の国では、家名は苗字と言って、誰でも普通に持ってるんだけど、貴族だと、ミドルネームってのが付いたりして、家名の前にフォンとかって付くので長くなりがちなんだけど。」
「あ、そうなんだ、お貴族様じゃないんだ、よかったぁ・・・、しかし全員家名を持ってるなんて変わった国だな、家名自体もかなり変わってるし。」
「やっぱり、ハイエルフ様だと思う。」
「違うからね・・・」
なぜか無口と紹介されたエルフのザイン君の方が良くしゃべって居てクリスちゃんが無口になっているが、クリスちゃんがあまり喋らない理由はなんとなく理解できている、クリスちゃんは私とキース君の会話が有るたびにほっぺ膨らまして居るのだ。
クリスちゃん判りやすい、かわいい。
きっとザイン君が良く喋るのは私をハイエルフと勘違いして居て好感を持っているんだろうけど、何だかな・・・
「じゃあ、これに触れてみてくれ。」
「あ、はい。」
水晶のような石に触れると、石の中に何かが映りだす、もしかして魔道具?魔道具なのか??
「よし、問題はなさそうだな、しかしこのレベルで本当にどっから来たんだ、一人で倒れてたってよう?」
「良く判りません、なんでこんな所に居たのか、私は第二太陽系星系第5惑星、オガサワラの所有者でそこに建てた研究所にて研究中だった筈なのですが・・・」
「うん、何言ってんのか意味が分かんないが、多分まだ混乱してるんだろ、キース、ちゃんと面倒見てやれよ?
その様子じゃ金も持って無いだろうし、宿屋位斡旋して宿代も出してやるんだな、まぁ、それをダシに夜這い掛けたりしたらクリスに蹴られるどころじゃすまねぇだろうけどな。」
「するかよ!子供だぞ?」
あ、やっぱ私かなり若いんだ、いくつ位か確認しとかなきゃダナ、鏡探すのは必須だね。
キース君はそうやって強く反応するからホラ、クリスちゃん又ジト目でほっぺ膨らましてるじゃん。
うん、ロリコンと思われたね、こりゃ。
「おっと大事な一言を言い忘れてた、ようこそ、グローリー王国シーマ伯領へ。」
誤魔化すように定番の挨拶をする衛兵だった。
「う~ん、身分証も無いわどっから来たのかもここがどこかも判んねーってんじゃ、せめて身分証に成るから冒険者登録でもして冒険者証でも発行して貰ったら良いかもな。
冒険者なら犯罪者では無い事だけは証明出来てるから誰でもなれるしな。
当面の生活費も稼げるだろうし。」
ん?そう言う事か、さっきの魔道具?は、犯罪歴が無いかとか、そういう事を調べるもんだったのか。
「まぁ、嬢ちゃんならソロでもCクラス位にはなれるだろうよ。」
「え、エリーさんってそんなに強いんですか?」
「え、そうなの?」
「ああ、さっきの石は魔道具でな、犯罪歴や、ステータスがみられるんだ、速さも力も、ましてや所有スキルに関してもかなりのもんだった、レベル1の割にはって条件付きだけどな。」
やっぱ魔道具なんだ! ってことは本気で異世界転生しちゃったんだね?私。
「私ってレベル1なんだ、そうなのか。
ここはレベルの存在する世界、本当に異世界に来たんだな・・・でもそのステータス私も見れるかな、でも義体でもないのにボディーコンディションは視界の隅にあるし・・・」
小さく独り言を言ってしまった。
「え?今なんか言った?」
危ない、クリスちゃんが聞こえたっぽいけどちゃんと聞き取れなかったみたい。
「あ、ううん、何でもない。」
衛兵のすすめもあって、一応冒険として登録をすることになった。
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