35話 残念、君は救えなかった

組織をステルスで潜入していくBLACK...


いや、もう彼はとして生きている。彼の名は英樹から貰ったものだが、名付けた理由は最後まで聞いていなかったな...


そんなことはさておき、数々の兵士を避けつつ、一つ一つの部屋を漁る。それでも彼女は見つからなかった。このはかなり難しい。何か脳の後ろの方で誰かが投げかけているような気がした。気のせいだと気を留めず、奥へ...さらに奥へ進む。


耳につけた通信機から連絡が来る。


一心とは別時間、別の入り口から入る別動隊からの連絡だ。そのうちのひとつ、RAINからの連絡。


「BLACK...残念だったわ」


「ん?どういうことだ??」


いきなり電気が消えた。真っ暗な中、念の為に用意した暗視ゴーグルへ手にかけた瞬間、頭を強く殴られた。一心は真っ暗な中、闇へ沈む。


▪︎


RAINの部隊では、一心が中に入ってから5分後に入る計画になっている。光り輝く満月の下、その来る時間を待つ。


「BLACKを囮に、私たちが殿下美帆を奪還する魂胆ね...どんだけ、お人好しなのか...」


そろそろ時間が迫ってきた。若干30名、少数精鋭で行く。もし失敗すれば、その残り数千の殺し屋が中へ一斉に侵入する。でも、失敗なんかないよね。そしたら、少し空から雨がぱらついてきた。まるで私を歓迎しているように。私なら彼ならきっと打ち勝てるぞと神様が言ってくれるように。


「アンタたち、殿下美帆の奪還が目標!私たちはもう殺す必要なんて...ウ」


腹をひと刺し、周りにいた仲間らは驚愕。なぜなら、囚われているはずの殿下美帆がそこにいるのだから。


「反乱因子は排除しなきゃ...ね?」


かなり手慣れのRAINでも、彼女の気配を感じられなかった。RAINは腹部に大量の出血をしている。RAINを刺した彼女はもう美帆ではなかった。化け物だ。


「...BLACk...逃げ...」


通信機に手にかけたとき、胸へひと刺し。とどめを決めた。美帆?はそれを取り、話す。RAINにそっくりの声で。その声で一心に伝えかける一瞬、コンマ0.00000001秒の世界で、彼女はとてつもない覇気を放ち、凄まじい速度でアジト内に入った。それにより、近距離にいた仲間ら全員気絶、彼らは一応殺し屋教育の過程で育った手慣れのはずだが、そんなこと関係なく、やられてしまった。そして、その覇気は遠くへ飛び、少し離れた位置にいた大量の殺し屋集団をほぼ壊滅に至った。



「一心...」


の右目には殺意が、左目には涙が溢れていた。一粒の雨音が消えていく・・・


▪︎


その一部始終を見ていた組織のボス。


「俺の世界を拒む、邪魔者は排除しなきゃいけねぇんだ。残念だが、君は救えなかったんだよ。うちの美帆は、この世界で最も悲しく美しく殺意に満ちたなんだから。」


光り輝いている満月は雲に隠れ、下界は闇夜に包まれる。




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