32話 期末試験
二月に入る。二月の末には期末試験と修学旅行がある。学校全体としては沖縄へ向かうときに。
雫と春はこっそりネパール行きへ乗る。学校側には悟られたくない。こんな危ない橋を渡ろうとしているのを。
だがしかし!
その前に期末試験があるのだ。雫は特に問題はないが、春は大問題だ。一個でも赤点を取れば、留年かつ補習になる。補習になれば、修学旅行に行けず雫が危ないところに行ってしまう。
それまでに勉学と自分の中にいる影の正体を知らねばならない。勉学の方は雫に教えてもらうことになった。すべてを見透かしたような勉強法。次のテストで何が出るのかわかっているような...
「というわけで、このプリントさえすれば満点は取れるわ!」
すべて透視やら先生の心を読んだりしてできたブラックボックス。絶対に100点取れる代物。まあ雫は本番のときには念のため、クラスメートや担当教師の心を読んでる。完全カンニング行為である!!
「本当にこれだけで...」
ふと思った。春はテスト対策のために雫と勉強している。しかも雫の家で。今日、ここへ入る時に玄関口に雫の靴しかなかった。
「あの...今日、お母さんは?」
「あー確か、担当さんと話があるって出かけたよ」
これはまさに、雫と一つ屋根の下2人きりじゃねえか!そう感じてきたらなんだか胸の心拍数が上がる。勉強どこじゃねえだろ。
一方、雫も(ああ!なんでお母さん、こんな時に出かけるのよ〜!いつも家で担当さんと話してるじゃん!昨日、私が春とお勉強するって言ったから〜?)と心の内で思っている。
だが2人は特に何事もなくこの日は終えた。ただし、心は熱く火照っていた。
■
期末試験当日、雫はいつも通りズr...能力をうまいこと使って事なきを得た。さて、問題は春だ。テスト勉強に関して言えば雫のプリントがほぼ同じでビビっている。おそらく大丈夫だが、あの時感じた。温泉街の時にも感じた春ではない春という存在をずっと追い詰めている。けど、追えば追うほど逃げていくように、一向に捕まえられない。怪盗ルパンもびっくりだ。春の心にいる存在...
■
雫はわかっている。春には...いや、春の中にいる殺人鬼。おそらく美帆の母を殺したのはそいつだ。春ではない。雫とその彼が合わさればきっと美帆を助けられるはず。だから、春をテスト終わりにあの神社に呼びつけた。
「春、ごめん!」
春の胸に当てる。バキューム。吸い付くのは物体だけではない。心という抽象的観念も吸う。春の中にいるはずの悍ましい何かを引っ張り出そうとしている。かなりの戦力になるから。
「...なんや、任務か?」
春の口調が変わった。
「あなたのコードネームは?」
見た目は変わらないが明らかに中身が違う。
「俺は、DEADや。覚えてないんか?」
「...DEAD、任務よ!私と共に殿下美帆を助けに行くのよ!」
「なんでや?あと、お前は...」
「私は最近組織に入ったのよ。それで上から、あなたとタッグを組まされたの」
雫は嘘をついた。今彼が考えていることが筒抜け。ある組織のこともわかった。目的はわからないが。きっと彼は信じてくれる。
「了解、承った」
ちょろい。そして、来たる修学旅行まであと少し...待ってて、美帆!!
■
雪降りゆく山の下。雲は太陽を覆い隠し、光を遮る。影に映る際立った黒。
「計画よりだいぶ早いが、敗北の線は潰す。そのためにも殿下美帆は絶対に助ける!!」
彼が向かう先、一面石でできた遺跡の前に。
■
雪が降り吹雪くネパールの山。
「美帆...いや、SHINEよ。よろしくな」
「...」
かつての美帆の姿がそこにはいない。彼女はいったい------------
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