30話 朝日

とある極寒の山々が連なる地。その中でも飛び抜けて標高が高い山頂に彼はいた。まだ日は明けてない。辺りを闇が包み込む。


「RAIN、結局仲間は増えたか?」


無線機で彼女に伝える。


「組織に不満を持つ者数十名、別の暗殺組織多数...まあ順調ね」


「そうか...」


「ねえ、あの子たちも連れていかないの?」


「あの子たち?」


「私が洗脳を施した人たち、いつでも解かせられるけど...」


BLACKは悩む。


「彼女らは一般人だ、俺らの戦いに巻き込みたくない。極力、表世界に干渉させたくない。すべて、裏で誰も知られず...」


「そう...切るね...」


通信機を切る2人。


「私の能力は人の心に干渉できる。私にはわかる。あの3人、私たちが思っているほど強いのよ...BLACK、あなただけですべてを助けれるの?」


朝日が上がる。これからの3ヶ月間、世界を助ける物語が今幕を上げる。



初詣、それは新年となり最初に神社に訪れ、神様にここ一年のことに感謝を述べ今後の一年を願うこと。


とある田舎の神社には雫の姿、母と共に。そこには運命の神様がいるらしい。


(願います。一心君と...春くんと...)


一方、学校の近場の神社。いつも新年になれば家族とそこに行く春。恋についての神様がいるらしい。


(雫と結ばれますように...)



新なる夜明けを見て、覚悟を持つ。


「これが俺の希望の夜明けとなるように、これからは暗い暗い昼になるがいつかきっとまた同じ夜明けを見られたなら...俺はまたあいつらと会いたい...っ!!」


一方、暗い暗い地下深くの牢獄の中、がちゃん。

鎖を腕につなげられた少女。


「お父様...!?どうして...助けて、春、雫...BLACK」


なぜ知る彼女は一体...彼女は夜明けを見られず暗闇の中にひとりぼっち。どこで選択を間違えた?



そして、冬休みが終わる。また一同生徒が集う。まだ寒く、正月太りした〜っと嘆く女子生徒、大晦日のテレビ番組について語る男子生徒、宿題やるのを忘れた生徒、様々だ。


佐藤雫は探していた。親友を。


「ねえ、春...美帆知らん?」


「え、あ、知らないよ...」


いきなり声をかけられて、動揺する春。雫に告ってからはじめての会話だから。


「先生も知らんのよね、今日美帆ん家行くか」


「なあ、俺もついて行っていいか?」


照れながらも誘う。雫は考える。


「いいよ」



空に太陽は見えない、雲空。陽射しなんて差し込めるわけがない。美帆の家へ向かう2人、雫のとなり。確実に朝にはあった、あったはずだったのだが、更地。美帆の連絡先にかけても出てこない。


「ねえ!春!美帆、どこ行っちゃったの?!」


雫は明らかに動揺している。


「わ、わからない...」


春は何もできない自分に腹立つ。雫は透視で辺りを見渡すが、怪しげなものは一切ない。


雫と美帆は昔からの親友、そんな彼女が音沙汰もなく消えた。誰か!何か、知ってないの?そう願う。



地下深く、雨水滴る牢獄にて...


「お父様...」


美帆らしき少女がいた。


「助けに来たよ、美帆...パパと一緒に着いておいで」


少女は弱々しくもうなづいた。白髪の男に連れられて。



次の日、担任に昨日のことを問いただす雫と春。


「知らないんだよね、いきなり親御さんが来て、急な転校って言って来たから」


おかしいよ、美帆。なんで、私を置いていくのよ。

どこに行ったのよ。


「...」


春は、泣きじゃくる雫の背中をさするぐらいしかできなかった。こんな自分で、不甲斐ない。春には愛する人をただ見つめるしかできなかった。それしかできない自分に憤りを感じる。



雫はその後、元気がないわりにもしっかり授業に出ていた。きっと集中して、いつか戻ってくるであろう親友のために。


だけど、春は違う。何も授業に集中できなかった。

そのまま何も得ないで、帰路に着く。雫のそばにいてあげたいが、自分はふさわしくないと割り切って別々の道を歩む。


「おれ、どないしたんやろ...」


心に響く音、夢ではない何か。別の存在が彼をちらつかせている。赤い血をかぶった存在が...!?












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