29話 久しぶりやね、この感じ

雪はまだ降ってないが、極めて気温が下がってきた。クリスマスが過ぎ、特に何も起きずに大晦日。学校への登校はクリスマスの後2日間で過ぎていき、そのまま休みへ。


その間、春も美帆もあまり喋ることはなく、休みに入りそして大晦日を迎える。


●超能力、そしてある存在を忘れた雫。


漫画家である母もやっと休みをとり、久々の2人だけの夕食。今年最後で最初の晩餐だった。


「...雫、悩み事あるの?」


「え...いや、別にないよ!」


母に言えるわけない。


「そいや、前雫が入院してた時、見舞いに来てた男の子!その子とはどうなの?」


「え?春のこと?」


「いやいや、春くんじゃなくて...えっと〜もう1人の子!」


春とは前々から母と面識はあったけど、彼が私のことを好きだとわかってない。むしろ今気になるのは...


「もう1人の子...?」


「なんて、名前だったかな〜?え〜っと、烏丸一心くん!!」


なんて聞き覚えのある名前なんだろう。私の心にある詮がだんだん無くなっていくのを感じた。


私はすべてを思い出した。私の力のこと、あの夜のこと、そして彼のことを。


●告白を先送りされた春


イブの告白が終わり、独りでクリスマスを過ごす。今年最後の学校が終わり、受験生へ一歩近づいた。春は父子家庭で、夜遅くまで父は仕事をしているから、いつも1人。


雫の返答が気になるも、待つと言った限りでは彼女を待ち続ける覚悟はある。雫の忘れものって何だろうと気にはするも、俺が考えちゃいけない気がする。たとえ、俺にとってだとしても。


学校ではそんな雫に話しかけることができず、休みに入った。特に普段通りの、一つ違うのは雫らがいないことだが、日々を暮らした。


そして、大晦日。珍しく休みがとれた父。今年最後の晩餐を迎えた。ちなみに父はハゲてます。


何か俺の心がざわめきながら...


●友達と仲良くなりたいが、父の様子がおかしいと気づく美帆


私はずっとずっと何かを追い求めている。忘れてはいけない気がする。そのせいか、日々の暮らしがそのことでいっぱいすぎて、あっという間に大晦日。


久しぶりにお父様と会えた。いつも父上と極上のディナーをして、新年を迎える。


でも、今年は何かが違う。いつもよりちょっぴり質素。そんな違和感を感じるも言い出すことはできず、食事を楽しんだ。特に会話が飛び交わない食事の最中だった。


「今年は美帆に手伝ってもらわなきゃな」


父はボソッと小声で言った。それを私はしっかり耳でキャッチしていた。


「会社のこと?」


「いや...まあ、いつかな」


そんな意味深な発言。私にはわからない。


「そうだ、最近さ〜。何か忘れてる気がするのよ。旅行帰りに」


「そうか...そういうときもある」


今年の父はいつも以上に冷たい。何かを焦ってるように。


●夜明けを見るBLACK


「あと、3ヶ月...」


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