23話 大雨の女

未だ雨は降り続く夜。

暗くなりゆく外を眺めながら、部屋備え付けのお風呂タイム。運良く、屋根がついているため、雨に濡れずにお風呂に入れる。ただ、寒いが。


部屋はまさかの男女一緒。絶対に覗くなよと美帆に念押されて、特に春はロープでぐるぐる巻きにされている。


「なんで!俺だけなんだよ!」


「春が一番危なっかしいからでしょ!」


そんなこんなで、美帆と雫はお風呂へ、一心と春は部屋で留守番。まあ、一枚壁の向こう側にお風呂があるんだが。


「おい、一心さ〜あの向こう側気にならねえのか?」


「別に」


「そんな...おめえ、さては男じゃねえだろ?!」


「そんなわけ...」


「おいおい、なんで黙る!さては、本当なのか!なのか?」


一心は何かを察知した。この大雨の中、おぞましい気配に...



一方、風呂では。


「1番の危険物は、封じ込めたわ!これで安心して、入れるね?」


「そうね...」


雫は気をいつも以上に張り巡らしている。


「...もう雫ったら、風呂に入るぐらい体を休めてよね!」


美帆はドンっと雫の背中を叩いた。


「もう美帆〜痛いって!」


雫の笑顔が戻ってきた。そのまま、風呂に入る。大雨かつ夜で景色が良くないが、とても楽しい旅行である。


「...美帆、これからもさ、友達だよね?」


「もう!何言ってるの!ずっっっと、友達だよ!」


2人の仲は深まった。


ポチャンッ...


「え?滴?」


ふと、上を向く。屋根が壊れ、雨がかかる。


「キャ!なんなの!」


その悲鳴に気づいた。一心が駆けつける。


「どうした?」


2人を抱える女性。


「青春ごっこはたのちいですか〜?BLACKくん〜?」


「!?RAIN!なぜ、彼女を狙う?」


「そんなこともわからないとか、堕ちたわね。最強の殺し屋さん♪」



一面白く輝く世界。そこに一人で立つ雫...


「ここは...?」


何もない。服もない。


「わたし、今まで何してた?」


記憶もない。


「何か、大事なことを忘れているような...」


うっすら目の前に赤く輝く影が見える。それは徐々に人の形になる。赤く輝く少女が見える。


『あなたはわたし、わたしはあなた...』


「誰なの?」


『ふふふ...覚えてないの?あの時のことを?』


「え?...」


雫はゆっくりと勝手に瞼が閉じていく。

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