20話 ある時
あの後、英樹さんは血相な顔をして、一心を放って行った。一心はおそらく組織の内情に関わることなんだろうと思い、それに関して一切思わないことにした。今までも、こうしてきたし、これからもきっと...
しかし、ふと美帆の顔が浮かぶ。
「え...なんで...」
彼は涙を流した。今まで流したことのない種類の大粒の涙が。
■
あれから2週間も経ち、雫はすっかり元気になり、無事退院することができた。あの能力以外は...
雫は目を覚ましてから、一度も超能力を使えていない。一心の感情を、将又みんなの感情を知ることができない。今まで超能力に頼ってきた弊害か。
雫は退院してからも、不安な日々を過ごすこととなる。
「し〜ずく!」
「キャ!」
今までなら、突如驚かしてくる美帆に気づけたのに、今は驚く。むしろ震え上がる。
「雫?大丈夫?」
「う...うん」
でも、わたしのこの不安はみんなに伝わって欲しくない。この力を周りに一切伝えてないから、なんて説明したらいいのかわからないから。
でも、もしかしたらあの一心が美帆を狙うかもしれない。そして、美帆が殺されたら...
彼女はさらに不安な気持ちになり、過呼吸になる。
「雫!..雫!」
美帆の声だけが聞こえる。雫は保健室に行った。
■
一心はその現場を見ていた。紛れもない暗殺のチャンスなのに、ここ最近は美帆を殺さない。いや殺したくない。むしろ守りたい。この気持ちが錯綜する。
今まで、何人も殺してきたのに、なぜ今になって、殺したくないのか。英樹さんに相談したいのに、英樹さんとはあれっきり、連絡がつかない。
■
とある森、とある洞窟、その中...
とんでもなく広くある地下の楽園。アルマダ国はそこにある。
そこの資料図書室に英樹はいた。
「やはり、ある時から...この組織は...」
後ろに立つ黒い影...
数秒後に、彼は血まみれになっていた。
「知るよしもないことを...はて、なぜここにこの本があるのかね?」
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