16話 拝啓 花火の文化祭


陽はすっかり落ち、絶好の花火日和。


生徒やら先生、保護者たちなどによって埋め尽くされた運動場。屋上からその人々を見ることができる。


彼らは一体何を思っているのか。


今、屋上に起こっていることに全く気づいていない様子。


ーーー


現在、一心は後ろに美帆を置き、(なんか1人倒れているが)周りのナイフを持った連中を食い止めている。ざっと3人支えて続けるのは、多少なりとも厳しいが、には絶対に守らねばならならない。


「一心くん...」


そうターゲットが言う。一心はすっかり騙されていた。


「残念だね...BLACK。君は、少し遅れた。」


後ろからナイフで思いっきり、刺された。美帆だと思われる人物は美帆ではなかったのだ。そして、周りの連中がドロドロと溶けていく。


「一体...お前は...?」

「まだ、そんなことを言える元気があるのか?こりゃ、驚いたぜ。」


一心は背後にいる男が見えない。声だけが聞こえる状態だ。


「俺はだな、お前をずっと憎んでいた。これで、俺の悲願も達成するわけだな。」

「悲願...だと...」

「ああ、そうだぜ?お前が、俺の父を殺したあの時に誓ったんだ。お前を殺すってな!」


一心は全く覚えていない。声の感じも全くわからない。


「どういうことだ?...お前は...誰だ?」

「...俺は、新田目あらため清志きよし。今は、殺し屋カメレオンとして活動している。」

「なるほど、そういうことか...」

「あ?」


俺は刺さっていたはずのナイフを跳ね飛ばし、奴にカウンターを仕掛けた。そして、少しの間合いを作った。


「おい、なぜ刺さらない?」

「チョッキ、着ているからな。これぐらいもわからねえのか、二流殺し屋め!」

「クソっ!一本、取られたか...でも、まあもう少しであの殿下美帆がやられる頃合いだろう。その点、依頼は完了されている。お前の死はただの副産物だったんだよ!」


「ああ、そうか...でも、お前ちゃんと死んだところ見ないと、いけないじゃないか?」

「は?何を言っている?」


そんな時、カメレオンにとある一報が届く。

『カメレオンさん、大変です!拉致監禁場所が殿下家や警察にバレて、もう突破されそうです!』


「嘘だろ?なぜだ?なぜ、早く言わなかった?」

『なかなかカメレオンさんと繋がらなかったから...』


通信機越しに扉が突破される音が聞こえ、音だけでわかるほどのとんでもない人数の波が押し寄せたのだろう。カメレオンの一味の悲鳴が響いた。


「お前...一体、何をした?」

「まあ、昨日はNightの仕業だなと思ったが、まあ違うってのは、すぐに気づいたんでな。この街の空き家をしらみつぶしに探したよ。そしたら、君たちが怪しげな会話をしているのを聞いてな...まあ、君たちは甘かった訳だな。」

「チキショー!!」


そう叫び、寝転んでいる雫のこめかみに銃口を突きつけた。


「こいつがどうなってもいいのか?なあ!!」

「お前さ...」


一心は空気を読んだ。風の気持ちをより理解して、全てを計算した。愛銃を掴み、引き金を引いた。その間、およそ0.001秒。


放たれた銃弾はまっすぐ奴の拳銃を持った手に当たった。その時に、すぐに走り、奴を捕らえた。


「依頼と別の暗殺、殺人ってのは見過ごせねぇな」


あたりはすっかりと真っ暗。お客さんたちはこの事態に全く気付かず、大きな火の花を見ていた。燃えさかる一輪の花を。



次の日、殺し屋カメレオンの身柄は警察に引き渡された。彼の実態はここ日本で有名な変装を得意とする暗殺集団ヘロインの幹部だったようだ。全く一心は知らなかった。


そして、一番気になるのは、一心の素性だ。幸運にも、一心の正体は日本警察にはバレていなかった。


美帆の方は、殿下家の警備隊もしくは警察が駆け寄ったところ、ただ眠らされていたことにより、心身に異常はなかった。


また、春は美帆の近くにある固く閉ざされた部屋で、寝そべっていた。もう少し助けるのが遅れていたら、中で充満していた毒ガスで死んでいたらしい。九死に一生を得た。






しかし、一心の近くにいたはずの雫はなぜか10日経っても、目を覚ますことはなかった...




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