13話 怒涛の文化祭 〜雫視点〜
昨日の一件があり、特に害がないと判断されたのだろう。
いつも通りの文化祭が開かれることとなった。
しかし、一心の心を読んだ結果、この日にまた美帆を狙う別の殺し屋が来るということ。
だから、私はいつも以上に危機感知を行う。
しかも、必ず美帆のそばを離れずに。
未だに美帆の傷は癒えていないことを私は感じているから。
去年のこの日、美帆のお母さんが美帆を庇って亡くなったあの日...
■去年
私と美帆は、高校一年として初めての文化祭に参加した。美帆のお父さんは、万が一に美帆の身に何が起こるのかと心配をして、際になるまで文化祭参加に反対していた。自分の娘だもの、お金持ちの父だって自分の娘が可愛いはず。
それでも、美帆のお母さんは大丈夫、と底知れない自信を持って説得していた。美帆自身もそのことは知っていたらしい。
そして、文化祭当日、私と美帆と美帆のお母さんと一緒に学校を周ることになった。私の母は締め切りが近いために、欠席。とても行きたがってたが、まあ自業自得だろう。
それでも、その3人との思い出は楽しかった。途中、その時は別クラスだった春とも一緒に周った。
「愛しのエンジェル!雫〜!」
「あら、春くんじゃありませんか」
「おお、これはこれは、美帆のお母様ではありませんか」
「もう、春ったら...」
笑顔の絶えない日だった...
しかし、もうすぐ夜に沈む頃に、事件は起こった。
私の危機感知に何か怪しげな人影が察知したのだ。私はそれに気になり、美帆と美帆のお母さんと少し離れた。トイレとか、そういった理由で。まあ言い訳です。
そして、私はその人影を追い、体育館倉庫の中へ誘われた。
なぜかその時からの記憶は無くなっている。
そして、私が目覚めた時...
人々がパニックになっていた。私はすぐに空間把握能力を使い、その発生源を特定した。体育館裏だ。すぐに、私はその場へ向かった。
私がそこで見た光景は、美帆をかばって血だらけになった美帆のお母さんだった...
近くには、警察と先生らに尋問されている春。
私はその近くに寄り、素性を明かし、何が起きたのかを聞いた。
そしたら、春が語ってくれた。
「俺が、少しの間、フランクフルトを買っていた時に、黒ずくめの男とすれ違ったんだ。俺は少し気になったが、なんの事もなく、素通りした。そして、俺がこの場所へ戻ってきたら、美帆を庇うお母様を刺していたあの黒ずくめの男がいたんだ!俺がすぐに叫んだせいで、そいつは逃げてしまった。でも、きっと美帆は助かるはずなんだ...母を除いては...」
私は頭が真っ白になっていくの感じる。私が持っているこの超能力があれば、美帆を守ることができる、と慢心していた。
私はひどく後悔したのを覚えている。
■
あんなことみたいなのは絶対にさせない!
そう意気込む雫であった。
危機感知に未だ引っかかるような怪しげな人物も、物もない。でも、いつかはその時がやってくるのでは、と思い顔をしかめる。
「もう、雫ったら、顔が怖いよ!そんな顔じゃ、お客さん、笑顔になれないじゃない」
「え、あ...そうだね」
学級の出し物、メイドカフェ...
ちょうど、私と美帆は同じグループだったために、一緒に接客を行なっている。でも、後々に自由行動の時がやってくる。もしかしたら、その時ではと思い始める。顔をまたしかめる。
「もう!雫ったら!」
雫は笑顔で接客する。楽しく。元気に。
そして、時が満ちた。メイドカフェ中は特に何もなかった。でも、もしかしたらここで...
また、顔が怖くなる。
「雫...?どうしたの?さっきも顔をしかめちゃって?」
「え、いや、なんでもないよ!」
「そう...」
「あ、今日は思いっきり、楽しもうね!」
「うん」
私があんな顔になるから、美帆を不安にさせてしまったかもしれない。反省しなきゃ。それにしても、あの一心はどこに行ったのか。なぜか、あの一心は今日休みを取った。もしかしたら、罠なのかもと思ったりもしたが、あの一心の心のうちが全く聞こえないから、おそらくない...
春はメイドカフェ総指揮官として、常に働かされているため、一緒に周ることができない。よって、美帆と2人で周ることとなった。
「残念だね、春くんも一心くんも...」
「そうだね」
なんだか、空気が重くなった。
「そうだ!ねえ、あのフランクフルト、食べに行こ!」
「うん!」
2人っきりの時間をめいいっぱい楽しんだ。
特に何事もなく、太陽が沈み、毎年恒例の花火大会。去年は例の一件があったために中止になったが、今年は見られる。
人だかりの極めて少ない屋上へ駆け上る。普段は開かれていない屋上。毎年この日だけは開かれる。そこそこの人数のため、ある程度犯人は絞られるはず。
「ねえ、もう少しだね...」
「うん、そうだね」
「...お母さんと一緒に見たかったな...」
私はどう返答すればいいのかよくわからなかった。
そんなとき、春から電話がかかってきた。
『おい、大変だ!お前のお母さんが意識不明の重体だって!?』
私は頭が真っ白になってしまった。
「美帆...やばいよ、お母さんが意識不明の重体って...」
「え?雫、それはやばいよ!今すぐお母さんの元に行って!」
私は迷ってしまった。家族か、友情か。
「雫、お願い...」
美帆の顔に心を占領されてしまったようだ。私はすぐに駆け下り、家へ向かった。その走ってる時に、お母さんに電話をかけた。
「ん?どうしたの?」
「え?お母さん?」
「そうだよ!何言ってんの?」
「よかった...」
安堵とともにふとした疑問、春は私のお母さんを知らない。おそらく誰にも私のお母さんが有名漫画家なんていった覚えがない。じゃあ、あの電話は一体...
私は、また過ちを犯してしまったかもしれない。今度こそ美帆が危ない。帰宅途中だったのを方向転換して、走る。
私の超能力には、肉体的な能力は備わってない。だから、走りの速さは平均並みだ。それでも、走るんだ!
そして、学校に戻り、屋上へ駆け上がる。
「よかった、まだ美帆がいる」
「雫!なんで、お母さんは?」
「お母さんは無事だった...」
そんな疲労困憊のとき、美帆の後ろ男が飛び上がり、美帆に向けて、ナイフを刺そうとする。
まずい、疲労のせいで超能力がうまく扱えない。このままだと美帆が...
なぜか、意識が遠のいていく。そんな意識の中、何か黒いものが美帆を...
私は倒れてしまった。
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