12話 文化祭前日

ついにやってくる文化祭。

それは明日に迫る。


そのためか、各教室には、明日の文化祭の準備でてんやわんやとしている。

雑談をして、遊ぶ者。

しっかりと真面目に働く者。

主にこの二つが入り混じっている。


そんな時でも、一心は暗殺計画を怠らない。以前の任務報告で、英樹に喝を入れてもらったおかげで、いつもの一心である。また、そんなことに気づいた雫である。


だから、雫は美帆の近くにずっといる。一心の暗殺計画の抑止力のために。


それでも、一心はタイミングを伺っている。伺いながら、メイド喫茶の飾り付けを行なっている。そんな様子に気づいた天然バカは、自分にとっての好きな人が狙われて、自分の恋を邪魔してきたと思ったのだろう。


だから、より一層の雫へのアプローチが強い。


それもまた、気づいている雫はこのまま春に呑まれてしまったら、美帆が危ないと、自我を保ちつつ、



そんな時、窓ガラスがバシャンと割れた。

そして、その原因となったのが、一本の矢。


美帆は命の危機を感じ、怯える。

雫は一心に注目しすぎたと反省し、後悔する。

春はまさか何者かが雫にキューピッドの矢を射抜いたのではと思い、心の中で憤怒する。


また、一心は悟った。俺だけがターゲットを狙っているとばかり思い上がっていた。他の殺し屋は出向いているのだ。だから、早くに始末せねばと思ったのである。


しかし、一心はそう悟ったにも関わらず、変な気持ちに苛まれた。どこか感じたことのない気持ちだ。


そんな事態に陥って、担任はとにかく生徒を外に出させた。生徒に危害を及ぶ事態につき、他の教師陣もぞろぞろとそのクラスに集まってきた。


そんな時、ふと何かが聞こえてきた。周りの生徒たちも、教師陣も、何事だと言わんばかりの形相となる。しかし、一心は分かっていた。


これはモールス信号。


『ネライハ デンカ ミホ アス コロス ブラックヨ オモイシレ』


幸いなのかはわからないが、このモールス信号を分かってそうなのは俺だけのようだ。それに、こんな殺害予告めいたことをするのは、アイツしかいない。我々組織のナンバー3、月夜の殺し屋、NIGHTナイトの他にいない。しかも、あの矢をそのナイトが使ってた記憶しかなかった。


よって、この事態を引き起こした犯人はナイトであろう。


そんな一心の考えは、もちろん彼女には伝わっていた。彼女は理解していた。そんなことを周りに、ましてや美帆に言えば、文化祭なんて中止になるし、むしろ美帆が悲しくなってしまう。


なんて私はさせない!


そう意気込む雫であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る