10話 文化祭でメイドカフェは勇気がいる

案の定、一心のクラスは劇からメイドカフェへ移行された。半ば女の子たちはやる気がないが...


しかし、ここである男が一つの提案を投げ出した。


「まあ、メイドだからってさ、女の子だけじゃないよね!」


その一言が、クラスの女子共に火をつけた。要は男子もやれ、ということ。もちろん、男子共は嫌がるが、まあこの後はわかるよね。


女子共の壮絶な復讐心、熱力によりメイドカフェは男の娘カフェも兼ねることになった。一心は実は嫌がってない。その理由は、以前からも女装はして、様々な任務を果たしていたから。そして、その提案を言い出した男もまた実は嫌がってない。別に女装趣味とかではない。ただそっちの方が面白いと思ったから。


その結果、春と一心が断トツで女子よりも可愛く仕上がった。

また、雫と美帆のメイド姿も女子の中で断トツで可愛くなった。あ、元々可愛いからね。


その4人の可愛さにより、そのほかの生徒はやる気を徐々に落としていっているのに、気づく琴子先生。さあ彼女がすることはただ一つ!!




とりあえず、職務放棄して、4人の写真を撮りまくっている。



一心は、初めて写真を撮られたので、顔を赤らめている。いつものなら、写真を撮られることはご法度だが、この状況は逃げ出せない。


春は、ノリノリ。むしろ有名アイドルと顔が並ぶほどの美少女を演じていた。


美帆は、超絶お高めなオーダーメイド、メイド服をこしらえ(約5000万円)、まるでヨーロッパの淑女のような顔立ちで、担任は天へ召されそうになる。


雫は、どこかラブコメ漫画にいそうなツンデレヒロインのような可愛さ、もう推しとして何かしらグッズ展開される勢いの超絶天然美少女ものだ。


職務放棄をして、写真を撮ってた担任だったが、背後にいる大男に気づかなかった。


「琴子くん、君は一体何をしているんだね?」


半ば怒り気味のおじさん。


「はい、私は今趣味用に...」


ふと後ろを振り向く先生。

背後にいる校長。


「あ、校長先生!いや、これは念の為、宣材用の写真を撮るとしまして...」

「そうかそうか、なんだか趣味用って聞こえた気がしたのだが?」

「え、あ...それは...」


何も言えなくなった。


「それに、こういうメイドカフェはうちでは禁止事項だったよね?」


そう文化祭準備はじめのホームルームで、ある程度の禁止事項があった。その中にメイドカフェと名指しで書かれてあったのである。


「いや、これは...実は、なぜか大道具が急に全て壊れまして...それで、何か別案がないかと生徒のみんなと模索したところ、メイドカフェしかないと...」


校長は黙る。周りは息を飲む。校長は黙る。


「そうか...でも、すぐに一応報告しておいてよ、琴子くん。」

「はい!申し訳ございませんでした!」

「どうしても、劇が不可能であれば、特例で認めておきます。しっかりと次は報告するように!」


そう言って、そのまま教室の外へ出ていった。しっかりとした重みで一歩ずつ歩みを進めて、出ていった。


その緊張感が解けて、クラス一同歓喜の渦が生じた。



雫は知っている。

校長が出ていったあと、とても軽やかなステップをする校長先生。

なぜ、メイドカフェが禁止事項なのか。

それは、現校長先生が週4でAKB秋庭ハラのちょいマイナーなメイドカフェに通っており、高校生が作り出した若きメイドを見てしまうと自我を忘れるほどの興奮をしてしまうためである。


この学校は、とても変わった学校だなとしみじみと思う雫であった。






























そんな文化祭を待ち望んでいる彼らを、狙う赤いフード。

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