7話 朝ぼらけのおひさま
今日は心地の良い朝。かつて自然たくさんの田舎町で暮らしてた頃よりも一際心地良い朝だ。
そんな朝でも、一心は暗殺計画を企てていた。なぜか朝早くから出かけるターゲット、しかもあの女はいない。これは紛れもないチャンスである。そのため、一心は彼女が学校へ到着するまでの間、トラップをいくつか設置することとした。
⑴ターゲットが十字路を右へ曲がるときに、落とし穴。
失敗!
車が通り、その車が引っかかってしまった。
⑵ターゲットがふとコンビニに寄り、朝っぱらからおでんを購入したので、そのおでんに毒の結晶を投げ入れる。
失敗!
コンビニの店員さんが透明のパックを付けさせたために、投げ入れるのが困難。至難の技。
⑶近くの墓場に行ったので、朝っぱらからの怖い声作戦。
失敗!
そもそもどうやって、お化けの声を出せばいいのかわからない。むしろ一心は幽霊など絶対に信じないため。
⑷とある墓の前に買ってきたおでんを置いたので、そこで手を合わせた瞬間に撃つ。
失敗!
お化けは信じないが、そういった人の道徳規範は守るため。
今日も、暗殺は失敗。一心はそのまま帰ろうとした瞬間に、いきなり黒づくめで長い白髪の男たちに囲まれていた。
「チッ!お前ら、一体誰なんだよ!」
殺し屋集団か、それとも...
「ちょっと、待ちなさい!」
ターゲットに見つかってしまった。
「もう、あんたたちったら、その子は私の友達よ!怖がらせないで!」
「ハッ!!」
黒い男たちがバッと消えた。おそらく忍者の類だろう。いやそれよりも...
「ごめんなさいね...私のボディガードたちに囲まれて」
「いやいや、別に気にしてないよ・・」
「そう、それなら、良かった。・・ねえ、一心くんはなんでここにいるの?」
「え、まあ...ちょっとした散歩で...たまたま殿下さんに出会えたから...」
苦し紛れの言い訳。まあこれで大丈夫だろう。あいつらが何か行って来ない限り。
「あら、いつも朝の散歩、してるの?」
「ま、まあ...」
「良かった〜私も同じなんだ...」
「同じ?」
「私も朝のお散歩、墓参りついでだけどね」
一心は少し前から、少々気になっていた疑問に手をつける。なぜ墓場に来たのか。今までの一心は決してターゲットの素性を知ることはなかったのに、なぜかこの時だけ気になってしまった。
「墓参り?」
「うん...お母さんの墓参り...」
悲しそうな顔になるので、
「あ、ごめん...なんか、悲しませちゃったかな」
「ううん、平気...」
一心の演技ではない、そんな気の利いた人声なんて言わないのに。まして感情が入りまくるなんて、暗殺において御法度なのに。
そのまま、時が流れる。
彼女のお母さんについて聞いてみたかったけど、聞けなかった。殺し屋においてそういった情報はターゲットの弱みになるため、聞かねばならないのに、一心は聞かなかった。彼女の顔を見ると、むしろ聞けなかった。
朝日が雲に隠れ、あたりが少し暗くなる。
そこからは、2人はなんも話すことなく、学校の前まで、ついてしまった。
「...なんだか、今日はごめんね...」
彼女の顔は不覚にも綺麗と感じてしまった。
一心は一体どうしちまったのだろうか。
■
一方、雫はその一部始終を見ていた。脳内で。
「起きてみれば...全くあいつも懲りないね...まあ、今回は殿下家の専属SPがなんとかやってくれたみたいし、まあ良かったけどね...でも、美帆...大丈夫かな?」
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