3話 俺に友達はいない、ただ知人はいる

 ついに何もすることもなく、放課後が訪れた。一心は午後の授業中、ひたすらに考えた。古典の授業やら数学Ⅱ、生物の授業を終えて、やっといい作戦を思いついた。無論その間、考えていることは彼女にはもちろんわかっている。そのためにその対策を出ようとする。一心はやっと彼女が自分の考えていることを理解していることに気づいた。そのため、一心は無心となった。何も考えず、作戦を遂行しようとする。


 作戦はこうだ!

 ⑴帰り道にて、尾行する。(その間、無心で)

 ⑵ターゲットの足元に、コインを投げ落とす。

 ⑶そのコインを拾った辺りで...


 途中から何も考えない。これは彼女対策である。おそらく心が読めるであろう彼女に対しての。


 ■


 そして、決行の刻。

 雲ひとつない快晴。太陽がギンギンに照り映える。でも、意外と暑くない。(先日雨が一週間続いたため)彼女らが帰るので、後をつける。もちろん無心で。




 その結果、彼女は...

『なぜ、あいつの心が聞こえないのよ!無心で生きる人間なんて、いないはずなのに!』


「雫〜、今日、駅前のカフェ行かない〜?」

「え...いいよ、行こう!」


 美帆は金持ちのボンボンのため、少しおっとりとした性格。そのため、あまり、いや過剰に危機感がない。だから、雫が守る。その構図が生まれた。そして、とあるコインが美帆の足元に転がり込んだ。


「あ、コイン!」


 美帆は拾い上げようとする。雫はそれを止めようとする。しかし、時既に遅しである。一心は今か今かとタイミングを図ってきた。そして、ターゲットが拾い上げる一歩手前で、『今だ!!』と愛銃で素早く撃った。その弾丸はまっすぐ飛び、ターゲットの頭にぶつかるところで、ピンっと弾き飛んだ。


「ん?何〜?」


 ターゲットがこちらを見る。一心はやばいと感じた。そして、あの彼女はドヤ顔を見せつつ、美帆がこちらを向いたことに驚きを示す。


「あ!転校生の一心くんだ〜!」


 そう言って、一心の元へ駆け寄る。近くにはあの彼女が一心を睨む。


「ねえ、一緒に駅前のカフェでも行きましょう〜!あそこの店のソフトツインス、とても美味しいの〜」


 一心はまさかの承諾。もちろん、彼女は怪しむ。というか、怪訝そうな顔である。


「もう、雫ったら〜そんな顔しちゃ、ダメでしょ!」

「いや、美帆!これは」

「せっかくのだもん!一緒に仲良く食べなきゃね〜!」


 一心の文化圏にお友達という言葉は存在しない。むしろ人は殺すべき対象と学んできた。しかし、そんな彼になぜかその言葉が心に響いた。


『まあ、こいつがなんかしてきたら、絶対にを使ってやる...え、泣いている!?』


 なぜか一心の目元に一筋の涙が流れる。


「え〜?どうしたの〜?」

「あ、いや...前の学校で、なんて作れなかったから...」

「え〜!?じゃあ、私たちが一心くんの初めてのお友達ね〜」

「うん、まあ...そだね...」


 一心はその後、最強殺し屋ということを忘れ、ただ何もせず、カフェに入り浸っていたそうだ。




 ●本日の勝敗:雫、一心の敗北。美帆の圧勝。

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