第25話 親愛なるものへ-25
ただいま、と言いながら店に入ると、数人のお客がいた。和枝もそのお客と談笑しているところだった。
「あぁ、お帰り」
「すぐ手伝うわ。それより、妹つれてきたの」
「妹さん?あら、まぁ、そしたらご馳走しないと」
「ほら、入っておいで。妹の理奈です」
「あ、はじめまして。立花理奈です」
「ああ、そうかい。あたしは吉田っていいます。お姉さんには随分世話になってます」
「おばあちゃん、そんなこと言わないでよ。あたしの方が世話になってるんだから」
「いやいや、こんなにきれいな店にしてもらって、仕事も楽しくって、昔に戻ったみたいだよ」
「おばあちゃんもまだまだ若いから、そんなこと言ってるんじゃないの。理奈、そこ座って、何でも好きなものいいなよ。特注で作ってあげるよ。あたしのオゴリ」
「いいってお姉ちゃん。自分で払うわよ」
理奈は、明るく笑いながらエプロンをつける美生の姿を知らず知らずのうちに目で追っていた。そしていつの間にか納得している自分に気づいた。
「はい、みつ豆」
「ありがとう。わぁ、おいしそう」
「おいしいって。おばあちゃんが長年培った腕が盛り込まれてるからね」
「いただきます。あ、おいしい」
「でしょう?」
「…お姉ちゃん、楽しそうね」
「もち」
「…そう」
「あんたも、元気出しな。少なくともあいつはあんたのことは可愛がってるんだから」
「…ん」
「もう少し、待ってね」
「え?」
「もう少ししたら、店も順調に行き出したら、家に行くから」
「…うん」
理奈が笑顔を見せて美生はほっとした。がらがらと扉が開いて賑やかな声が聞こえた。
「いらっしゃーい」
振り返ると小山が数人の女子をつれて入ってきた。
「やっほー、新しい友達つれてきたよ」
「ありがとう、幸美ちゃん。さぁ、どうぞどうぞ」
細々と動く美生を見て、理奈はまた笑顔を浮かべた。
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