第24話 親愛なるものへ-24
朝の教室に行くと理奈が待っていた。どうしたのかと戸惑っていると、理奈は美生を見つけて駆け寄ってきた。
「おはよう。お姉ちゃん」
「おはよう。どうしたの?」
「昨日ごめんね、行けなくて」
「なんだ、そんなこと。いいのよ、別に」
「絶対行きたかったんだけど、最近お母さん神経質で、外に出るのも監視されてるみたいなの」
「ごめんね、あんなのをあんたに押しつけちゃって」
「それで今日、塾もないし、行こうかと思ってるんだけど、放課後一緒に行ってもいい」
「ん、いいわよ。いらっしゃい。ご馳走してあげる」
「大丈夫よ、お小遣い用意してあるから」
「ダメよ、可愛い妹からお金は取れないわ」
美生はそう言いながら理奈を抱きしめた。理奈は顔を赤くして、慌てて離れた。
「じゃあ、放課後ね」
そう言って去っていく理奈を見ながら、美生は理奈の様子が変だと思ったが、理奈の方から話すのを待つことにして、教室に入った。
家に帰る道々、理奈は美生の腕にぶら下がったままだった。いつもより懐っこい理奈に美生は照れてしまったが、そういうことも随分久しぶりで嬉しくて仕方なかった。街中を抜けて大通りを渡り、道を左に折れて上岡駅の方に向かった。
「この辺は初めて?」
「うん、来たことない」
「だろうね。だからあたしもこの辺を根城にしてたんだから」
「お姉ちゃん、ずっとそこにいたの?」
「んん、あっちこっちね。最近かなこの辺りに落ち着いたのは」
「どこで寝てたの?」
「お寺とか神社とか。この辺に居すわってからは、潰れかけの社員寮」
「もぐり込んでたの?」
「そう、まだ少し荷物おいてあるんだけどね」
「どうやって食べてたの?」
「そんな顔しなくってもいいよ。何とかなるんだよ。結構お金って落ちてるんだよ。知ってた?」
「そんなことしてたの」
「ん、まぁね。だから、まだ持ち出したお金も残ってるし、今の吉田さん家に居候してからはほとんどお金使うことないから、もうばっちり」
「…たいへんね」
「だから、大丈夫だって。何聞いてるの?」
「でも、そんな辛い思いしてたなんて」
「そうでもないよ。楽しかった。今も楽しい」
「……そうなの?」
「このまま、職にありつくことができるんなら、何の問題もないじゃない。今度のお店も順調みたいだし」
「まだ、昨日開店したとこでしょ」
「大丈夫。上岡中の子と知り合いになったから、どんどん学生を連れ込んでくれるって」
「お姉ちゃん、元気ね」
「なんだか、理奈元気ないね」
「……そう?」
何か言いたげな理奈の様子が気になったが、もう到着してしまった。
「ほら、そこ。花輪があるでしょ」
「わぁー、ここ?きれいなお店」
「中に入ってよ。なかなかしゃれてるから」
「うん」
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