第15話 親愛なるものへ-15
風呂から上がると、和枝が美生を呼んだ。美生は濡れた髪にタオルを巻き付けたまま、ちょこんと和枝の前に座った。
「美生ちゃん、学校のことなんだけど」
あ、きた、と思いながらも美生は表情を変えないようにして聞いていた。
「知り合いの長崎っていう人に訊いたんだけど、緑ヶ丘っていう私立なんだけど、そこなら入れてくれそうなんだ」
「はい?」
美生は意外な言葉に驚いた。
「あんたが家に帰りたくないっていうのはあんたの事情があるからだろう。でも、一度は帰らないことには転校の手続きもできないんだよね。でもね、事情があれば、一時的に受け入れてくれるらしいんだよ、あそこの学校は」
「家出でもですか?」
「それはどうか知らないけどね、事情があれば、正式な手続きを後回しにしてとりあえず受け入れてくれるらしいんだ。ただし、編入試験はあるらしいけど」
「そんな都合のいい話があるんですか?」
「学校に行かないでいると学力が低下して、落ちこぼれてしまうこともあるから、ということらしいよ。あたしもよくはわかんないけど」
「変な学校」
「詳しいことは、明日そこの先生が来てくれるらしいから、あんたちゃんといなさいよ。いつもみたいにふらふらとしてないで」
「出掛けてるのは、バイトを探してるからなんです」
「中学生がいつまでもふらふらしていい訳ないでしょ。学校に行きなさい」
「行けるもんなら」
「まぁ、明日あたしの方からも頼んでみるから、ちゃんと受け答えするのよ」
「はぁい」
美生は呆れながら階段を上がって二階の部屋に入った。あの緑ヶ丘学園にそんなに簡単に入れるんだろうか。半信半疑のまま布団に寝ころがって天井を見つめていたが、やがて眠りについた。
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