第13話 親愛なるものへ-13
「ダメだった」
高石らを前に美生は呟いた。
「アレ?この店?」
「うん。それどころか説教された、学校へ行けって」
「学校だったら、ここなら上岡ね」
「ま、そうなるのが普通だけど、あたしの場合、前の学校の手続きができないから、入れっこないのにね」
「家出がバレる」
「それより、連れ戻される」
「そうしたら、絶対上岡へはムリね」
「このままこの店でもやりながら生活できたらいいのに」
「どうしてダメなの?」
「ん、古くてあちこち傷んでて、改装も必要なんだって」
「改装って、お金がいるのね」
「もちろん」
「百万とか二百万とか」
「そんなには要らないだろうけど、大金よね」
「そんなに集まらないよ」
「トーゼンでしょ」
「例えば、百人に一万ずつカンパしてもらえば、百万よね」
「そりゃそうだけど」
「千人に千円ずつのカンパでもいいんでしょ」
「まぁね」
「一万人に百円ずつ」
「あんたね、バカ?一万人も知り合いがいるの?それとも千円もカンパしてくれる友達が千人もいるの?バカ、三流の政治家みたいな計算してんじゃないの」
「そんなこと言ったって、他に何か手があるの?」
「宝くじかな」
「未成年は買えないんじゃないの?」
「十八歳未満はダメよね、確か」
「じゃあ、ダメじゃない」
美生は高石と小山のやりとりを聞きながら、いつか拾った宝くじを思い出した。
「そういやぁ、前に落ちてた宝くじを拾ったことがあるな」
「もしかして、当たってるんじゃないの?」
「ん、ちょっと待って、取ってくるわ」
二階へ上がって荷物をかき回して仕舞い込んであった宝くじを見つけた。よれよれになったそれを見せると、すでに当選発表は終わっている。
「随分前のみたいね」
「期限まではまだあるけど…。どこで拾ったの」
「空き地。バッグの中に入ってたの」
「捨てたのかな?」
「じゃあはずれね」
「一応、確認してみるわ」
「でも、中坊にできるバイトなんてないよ」
「んー、この店をうまくやっていく方法なんて、ないかな」
「このままだとダメかな」
「ちょっと、ボロいよね」
「だいぶ掃除したんだけど、ちっともきれいになんないのよ」
「やっぱ、改装か」
「いっその事、この店売り払って、新しい店を買ったら」
「あのぉ、あたし居候なんだけど」
「あ、そうか」
「幸美もボケてるから」
「だって、お金をどうやって稼ぐかってことで頭が一杯で」
「ありがとね。まぁ、もう少し考えるわ。あ、そろそろあたし営業に行かないと」
「営業?」
「ん、商売」
「何やってんの?」
「子供にボールとか玩具売ってるの」
「どこでそんなの仕入れるの?」
「落ちてるじゃない、あっちこっちに。それを磨いて売るの。ゴミ捨て場からも失敬するの」
「すっごいことしてるのね」
「なにしろプーですから」
「ブルセラも?」
「あれも、拾ってきた服を洗濯して、売りにいったの。制服や下着じゃないから高くは売れなかったけどね」
三人は言葉を失っていた。
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