第11話 親愛なるものへ-11

 「そう」美生は少し声を小さくして奥を伺いながら話した。「あのね、あたし、いま居候してるじゃない。それで、少しは下宿代を払おうと思うんだけど、どうやったら稼げるかな?」

「バイト?」

「ん、バイトでもなんでもいいんだけど」

「中坊でバイト?」

「ごまかすしかないんじゃないの、高校生ってことにして」

「フリーターっていう手もあるけど」

「でも、時給悪ィよ」

「そのくらいは構わないよ。いまでも少しは稼いでるんだけど、三食食わしてもらって、風呂もただで寝るとこもあてがってもらってると、悪いからさ」

「いままでどこで寝てたの?」

「つぶれかけの社員寮」

「もぐり込んで?」

「そう」

「泥棒みたいだな」

「やぁねぇ、人聞きの悪い。浮浪者って言ってヨ」

「ホントに?」

「ホントホント」

呆れたような四人を前に美生はニコニコしていた。

「バイト…ねぇ」

「……ブルセラ、とか」

「和美、何言いだすのよ」

「だけど、JCやJKだったら、手っとり早くお金になるって言うじゃない」

「オマエ、やってるの?」

「あたしがやるわけないじゃない。テレビとかで言ってるでしょ」

「そんな店ってどこにあるの?」

「ミキちゃん、本気?」

「あたしが着てるやつを売る訳じゃないけど、ちょっと拾った服とかあるから」

「狭間東ならあるんじゃないの?」

「よし、取り敢えずそれで行こう」

「マジ?」

「トーゼン。とにかく、吉田さんにお礼しなくちゃ。一宿一飯の義理どころか、もう三宿十飯三風呂くらいの義理があるから」

「義理がたいね」

「プーやってるとね、わかるの。それがどんだけありがたいことか」

 四人は黙り込んでしまった。美生は煎餅をかじって番茶をすすった。

「誰か友達に訊いてみようか。自営業の家もあるしさ、そういうとこなら割と待遇よく雇ってくれるかも」

「お願いね」

「あのぉ…、この店はダメなんですか?」

「あぁ、もう何年もやってないって言ってたけど」

「でも、ここでバイトすれば、一番手っとり早いんじゃないんですか?」

「バイトっていうより、労働奉仕だな」

「んー、そうか、その手があるか。お客つれてきてくれる?」

「もちろん」

「よし、一回相談してみるよ」

元気良く笑顔を見せた美生とは正反対に四人は互いの顔を見合わせて戸惑っていた。

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